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【連載】アセスメント力を身につけよう

胸痛のアセスメント

  • 公開日: 2014/1/7

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急変時の対応


患者さんの異変を前に、「迷う」「わからない」「判断ができない」……。ここでは、そんな体験をした読者から寄せられた「アセスメントに迷いやすい症状」を5つピックアップしました。症状ごとに、どのような患者情報を集めたらいいのか、判断するときのポイント、アセスメント手技などについて、ステップを追って解説していきます。


Q.胸の痛みを訴える患者さんをアセスメントする場合には、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか?(東京都 循環器病棟)

A.関節痛か、重篤化につながる放散痛かを見極めましょう。

死に至る「三大胸痛」に、要注意

 痛みは、患者さんにしかわからない情報なので、まずは、問診で患者さんの訴えの中身を精査することが、アセスメントの第一歩です。問診の「7つの原則」に従って、情報収集と整理を進めるようにしましょう。

 胸焼けのような鈍い痛みを訴え、咳が出るなどの随伴症状がある場合は、逆流性食道炎が疑われますし、みぞおちがムカムカするような重苦しい痛みなら、虫垂炎の初期とも考えられます。痛みが呼吸に伴って増強するような場合は、緊張性気胸の疑いがあります。特に横たわると悪くなるという場合は、横たわると胃液の逆流が起こるために胸の重苦しさが増強するとも考えられるので、消化器系の問題の可能性があります(表1)。

 まず注目してほしいのは、その痛みが生命の危機につながるサインなのかどうか、ということです。とりわけ痛みを訴える患者さんが中高年の場合、「死に至る恐れのある胸痛」かどうかを迅速に見極めることが大切です。心筋梗塞、解離性大動脈瘤、肺梗塞。これらが恐怖の三大胸痛の原因疾患です。中高年の患者さんが胸の痛みを訴える場合には、問診で原因を推測し、緊急度を見抜くことがアセスメントの重要なポイントになります。

 突然発症、焼けるような痛み、キリキリするような痛み、激しい痛み、胸全体に広がる痛み。こんなキーワードが患者さんの訴えに出てきたら、三大胸痛の原因となる疾患を疑うべきでしょう。

胸痛から考えられる疾患表1 胸痛から考えられる疾患

関節に負荷をかけてみて関節痛かどうかを判別する

 三大胸痛は、ともに胸痛を危険信号にしていますが、関節の痛みなのか、疾患由来の放散痛なのか、判断に悩むことが少なくありません。放散痛とは、痛みなどの強い刺激を受けたときに、刺激を受けた場所だけでなく、病気の原因の部位から離れたところにも痛みなどの刺激が広がっていく症状です。

 例えば、心筋梗塞の発作について、「焼け火箸を突き刺されたような痛み」という表現が使われることがありますが、一方で「肩が痛い」「背中が痛い」、あるいは「歯が痛い」というように、心臓とは離れたところの痛みを訴える例も少なくありません。

 そこで、こうした疾患の既往があったり、リスクの高い中高年世代の患者さんには特に、放散痛と関節痛の判別が必要になります。四十肩や五十肩などの関節痛なのか、放散痛なのか、紛らわしいこともあるので注意しましょう。

 関節痛は、関節に負荷がかかると生じる痛みです。痛みを増強する負荷をあえてかけてみて、痛みが変わるかどうかをみるのも、見極め方の一つです。問診で「どうすると痛いか」を聞いて、関節を動かしてみましょう。痛みが強くなるなら関節痛と判断できます。強くならないなら、別の原因を探ります。ちなみに関節痛の場合、関節を動かすと痛みが起きるため、患者さんはじっとしていることが多いといえます。パッとみただけで関節痛などと断言するのは乱暴ですが、絞り込む目安にはなります。

痛みの境界を特定できない放散痛ならすぐに心疾患への緊急対応を

 さて、肩関節を動かして痛みが変化しない場合は、放散痛の疑いが残ります。ここで痛みが発生する場所と程度を再確認しましょう。

 まずは、「どこが痛いですか?」と聞いて、こちらからは手を出さず、患者さん自身に手で痛みのある場所を示してもらいます。患者さんが「ここです」と胸のどこかを指先で示すようなら、肋間神経痛や腹膜炎などといった、胸の表面近くで起こった痛みと考えてよいでしょう。三大胸痛の痛みは、そうした限定できるような局所に生じにくいからです。

 しかし、「この辺かなあ」と患者さん自身も漠然としているような場合は、胸の奥の痛みと考えられます。そこで、「ここはどうですか」と場所を変えて痛みの有無を確認します。境界がはっきりしている場合は、生死の心配は消えます。

 境界が不明瞭で、痛みが全体に広がっているような場合には、すぐに主治医に連絡を取り、心電図を取るなど、次の具体的な看護行動に移りましょう。

※ 次回は、「異常呼吸音のアセスメント」について解説します。

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