第4回 退院後のご家族から問い合わせがあったらどうする?
- 公開日: 2013/10/2
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エンゼルケア(逝去時ケア)とは?目的・手順など
家族の意向に寄り添って最期のお別れの場面を創出する「エンゼルケア」が、多くの病院や施設で実践されるようになってきています。よりよい死後ケアにつなげるにはどうすればよいのか、よくある疑問・悩みについて、エンゼルメイク研究会代表:小林光恵さんに話を伺いました。
――退院後、ご家族から問い合わせの電話が入ることもあるそうですね。
小林光恵さん(以下、敬称略) 今の時代、ご遺体が変化するという実感がもちにくいのと、身内を失った直後で平静ではいられないことなどもあって、ご遺体になにか変化が起きると、驚いて電話をかけてこられることがあるようです。
――どんな内容の問い合わせが多いのでしょうか。
小林 退院するときは口が閉じていたのに開いてきた、皮膚に水泡ができた、鼻から漏液があった、黄疸のあった方で肌の色が大きく変わった、口紅がはげてきたけれど上から塗ってもいいか、など、いろいろな問い合わせがあります。死後硬直に驚いて電話をかけてくるケースもあります。
――びっくりしてしまわれるんですね。
小林 そうですね。喪失という辛い事態に加えて医療に対してもともと複雑な思いがあり「さっきまで病院にいたんだから、病院がなにか変なことをしたのではないか?」、あるいは「対処を間違えたのではないか?」などと、思われる方もなかにはいらっしゃるようです。 急性心筋梗塞で亡くなられた方などの場合、数時間後に、顔にかなり強い鬱血が出ることがあるので、それを知らないご家族が「病院で殴られたのではないか?」と思ってしまったこともあるようです。
――そういう思いのある方に、どのように対応するのがいいんでしょうか。
小林 まず大事なのは、安心していただくこと。「大丈夫、心配ないですよ」ということを伝え、「ご遺体は、いろいろに変化するのが自然で、異常ではありません」ということ、そして「きちんと適切な処置は行われています」と、冷静に伝えましょう。
――心を落ち着かせるわけですね。
小林 変化のうちには、当然、腐敗もあります。直接的に“腐敗”という言葉を使うことは避けたほうがいいかもしれませんが、「個人差や病状によっても、出方は異なりますが、そういう変化は、みんなある」と話し、安心していただきましょう。安心していただいたあとに、どういう対応をいしたらいいかについて、お話しするといいでしょう。クレームとして受けないように。
――でも、ご家族からの問い合わせには、動揺しそうですね。
小林 実際、“訴える”などという言葉が出やすい場面でもあるので、受けるほうも、注意が必要です。喪失の直後のつらい感情の表出なんだと理解し、「あぁ、そうですか」などと受け止めてしまったり、気の毒だと思い絶句してしまったりすると、「やっぱりそうなんだ。間違ったんだ」と思わせてしまうことになりかねません。
――受けたほうで、クレームと思ってしまうこともありそうです。
小林 ご遺体に関する知識が薄かったり、ご家族の勢いに押されてびくびくした対応になったり、何も言わない、他の人にまわすなど、クレームを扱うような接し方は、絶対避けたいですね。
――誤解を生んでしまうわけですね。
小林 家族には、身内を亡くしたつらさがありますし、それをぶつける先がないから、攻撃という形の表現になってしまうことがあります。ですからそこは、敵対した感じにならないように、先ほども話したように、状況を冷静に説明したうえで、その後の対応についてアドバイスするようにしましょう。
――そのためには、ご遺体の変化や、その後の対応についてきちんと勉強しておく必要がありますね。
小林 ご遺体の変化や基本的対応を把握しておけば、エンゼルケアのさまざまな場面で、自信を持って判断することにもつながると思います。
※本記事は、株式会社医学書院のWEBマガジン「かんかん!」の連載記事をもとに再構成したものです。
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