【膵疾患】メカニズムと検査値編
- 公開日: 2014/4/12
臨床の現場で検査値を活用していくためには、疾患のメカニズムとのかかわりを念頭に置きながら読み取っていくことが大切です。
臓器の働きや疾患がどのようにして起こるかを確認し、検査値の動きと読み取るためのポイントを解説します。
膵疾患のメカニズム
膵臓は、蛋白質分解酵素のトリプシンや脂肪分解酵素のリパーゼ、糖質分解酵素のアミラーゼといった消化酵素を産生する外分泌機能と、インスリンやグルカゴンといったホルモンを産生する内分泌機能を持っています。
消化酵素は、膵臓内では働かず、食物が十二指腸を通過するときに分泌され、消化管内で初めて酵素活性を発揮して消化・分解に寄与します。
ところが、何らかの原因によって消化管への分泌が阻害されると、防御機構が破綻して膵臓内で消化酵素が活性化し、膵組織や周辺組織の自己消化を始めます。
こうして起きた炎症が膵炎です。膵炎では、血中・尿中膵酵素値の上昇のほか、大量の消化酵素が血液中に入ることで血管内皮が損傷されるため、凝固系の障害を示す検査値の変化にも注意が必要です。
急性膵炎の原因の大半は、アルコールと総胆管結石です。発症頻度の性差が大きく、男性:女性=3:1と言われています。男性の急性膵炎はアルコールに起因する割合が女性に比して著しく高くなります。重症例になると多臓器不全に陥ることがあります。
慢性膵炎は、炎症が6カ月以上持続し、膵臓が線維化した状態です。膵機能が保たれている「代償期」、膵機能低下をきたした「非代償期」に分類され、非代償期には消化酵素の減少による脂肪性の下痢、体重低下などがみられます。また、内分泌機能も低下するためインスリン分泌が減少し、血糖値の上昇を引き起こします。
(図)3つの消化酵素の役割
続いて「“膵疾患・胆道系疾患”で行う臨床検査」と「膵疾患を示す検査値」について解説します。