第3回 緩衝と代償のメカニズム
- 公開日: 2014/5/25
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血液ガス分析とは?基準値や読み方について
緩衝とは
血液pHの急激な変動を弱酸と弱塩基のペアで抑える
血液のpHは常に一定になるように、7.40±0.05ととても狭い範囲に調節されています。これを「酸塩基平衡」と言います。
でも、どうしてpHの基準値は、こんなに狭い範囲なのでしょうか。それは、血液の内部環境が中性から弱アルカリ性に保たれていないと、細胞が働けないからです。
通常pHは、強酸が加わればすぐに大幅に低下します。例えば、pH7.0の溶液に、塩酸を滴下したとすると、pHは一気に5.0くらいまで下がってもおかしくないはずです。
ところが、人間は血液pHが7.20未満になると重症で死に至ることもあるので、そこまでの変動は起こりません。細胞機能を守るために、体内にある弱酸や弱塩基が新たに加わった強酸(あるいは塩基)のpH変化を弱めて、元の状態を維持しようと働くからです。これを「緩衝」と言います。
前述したように、H+が産生されてもHCO3-と結合してH+が増加しないようにしています。このときのHCO3-の働きが緩衝作用です。
H+を緩衝する血液中の物質とは
このように、血液pHの動きを和らげる働きをする物質のことを緩衝系と呼びます。
緩衝系には、
1. 重炭酸緩衝系:HCO3–
2. リン酸緩衝系:HPO42-
3. ヘモグロビン緩衝系
4. 血漿蛋白緩衝系
があります。
どれも反応性の高いH+を血液中から取り除いていますが、主に緩衝作用をするのはHCO3–で、最も重要な物質と言えます。
というのも、ほかの緩衝系が一度は結合したH+を再びH+として放出するのに対して、HCO3–はH+と結合してH2CO3になった後、H2OとCO2に分解され、呼気によってCO2を排泄することができるからです。
また、HCO3-は腎臓での産生、再吸収が可能です。そのためこの緩衝系の働きには、腎機能が正常であることが重要になります。
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