【連載】臨床の知識をおさらい!|看護師国家試験を元に基礎知識を解説
頻呼吸の後に倒れた!? 頻呼吸で起こることをおさらいしておこう
- 公開日: 2025/7/19
看護師国家試験第112回-午前-一般27
健常な女子(15歳)が野外のコンサートで興奮し、頻呼吸を起こして倒れた。このときの女子の体内の状態で正しいのはどれか。
1.アルカローシスである。
2.ヘマトクリットは基準値よりも高い。
3.動脈血酸素飽和度(SaO2)は100%を超えている。
4.動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は基準値よりも高い。
1回答
問題の解説
問題文を見ると「頻呼吸」や「倒れた」とあることから、呼吸や意識に関する知識が求められていると考えられます。選択肢を踏まえると今回は呼吸に関連する問題であり、回答は選択肢1、3、4のいずれかになると推察できます。
その中で動脈血酸素飽和度(SaO2)は動脈血中で酸素と結合したヘモグロビンの割合なので100%以上にならないため、選択肢3は除外できます。ちなみに動脈血酸素分圧(PaO2)は動脈血に含まれている酸素を分圧という単位を用いて表しているので、こちらは数値が100以上になります。
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は動脈血に含まれる二酸化炭素を分圧という単位を用いて表しています。問題文にある頻呼吸という状態は何度も早く呼吸を繰り返している状態なので通常の呼吸よりも酸素を取り込む回数や二酸化炭素を排出する回数が増えており、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は基準値よりも低くなると考えられるため選択肢4も除外できます。
身体の状態を見ると二酸化炭素という酸が減っている状態ですので、酸塩基平衡はアルカローシスに傾くことも考えられるため選択肢1が回答になります。
ちなみに、ヘマトクリットは血球成分が血液全体に占める体積の割合のことであり、血液やヘモグロビンに関する問題文がないことから選択肢2は除外できるでしょう。
アルカローシスについておさらい
なぜ頻呼吸になると動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は基準値よりも低くなり、酸塩基平衡はアルカローシスになるのでしょうか。吸気として肺胞へたどり着いた酸素は、ガス交換によって肺胞から血中へ移動して、心臓の収縮力や拡張力によって血液を循環させることで全身の臓器や細胞に届けられます。臓器や細胞が酸素を消費すると二酸化炭素が生まれ、その二酸化炭素は血液に乗って肺胞に移動し、肺胞でのガス交換で呼気として血中から体外へ排出されます。頻呼吸によって何度も素早く吸って、吐いて、と繰り返えすことで過剰に二酸化炭素は呼気として身体から出ていくため、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は基準値よりも低くなります。
酸塩基平衡は身体の中の酸と塩基のバランスであり、酸は揮発性酸と不揮発性酸に分けられます。揮発性酸は二酸化炭素で、それ以外を不揮発性酸といい、二酸化炭素は肺から、それ以外は腎臓から排出されます。頻呼吸で二酸化炭素の排出が進むと身体の中から酸が減るため酸塩基平衡がアルカリ性に傾きます。この場合、呼吸によりアルカローシスに傾いているため、呼吸性アルカローシスといいます。