【連載】臨床の知識をおさらい!|看護師国家試験を元に基礎知識を解説
酸素を投与するときはどう考える?〜酸素療法の適応基準〜
- 公開日: 2025/2/7
看護師国家試験第112回-午前-必修23
室内空気下での呼吸で、成人の一般的な酸素療法の適応の基準はどれか。
1.動脈血酸素分圧〈PaO2〉 60Torr以上
2.動脈血酸素分圧〈PaO2〉 60Torr未満
3.動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉 60Torr以上
4.動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉 60Torr未満
2回答
問題の解説
酸素療法は低酸素血症のときに使用されると理解している人であれば、この選択肢の中で低酸素血症に該当しそうな選択肢は2と考えられるでしょう。もしくは、PaO2 60Torr未満はSpO2 90%以下となることを知っていれば選択肢2と回答することもできるでしょう。
そのほかの考え方として、選択肢の中で異常な数値と推測できるものは選択肢2あるいは選択肢3となります。この問題は、酸素療法について問われており、PaO2 60Torr未満とPaCO2 60Torr以上のどちらが酸素化に関する異常が生じていることを示しているのかと考えられれば、選択肢の2を選ぶことができるでしょう。
酸素療法の適応を考えるときは酸素に関する情報で判断します。臨床に照らし合わせて考えてみると、SpO2値を見て、医師の指示に基づいた酸素投与を始めるかどうかを判断していると思います。選択肢の中にSpO2はありませんが、酸素に関する項目のPaO2がありますので、答えの選択肢は1または2が残ります。次に、酸素療法は酸素を患者さんに投与することと考えると患者さんは酸素が必要な状態であり、PaO2が低下している状態の選択肢2となります。
酸素療法の知識のおさらい
人は呼吸をすることで酸素を吸って二酸化炭素を吐いています。その呼吸を分解してみると吸気と呼気に分けられます。吸気は酸素を吸うことであり、脳にある呼吸中枢から指令が出て、脊髄や末梢神経を通ってその指令が呼吸筋に伝わり、呼吸筋が収縮して胸郭が動くことで肺が広げられて酸素を肺胞へ取り込むことができます。呼気は二酸化炭素を吐くことであり、吸気で広げられた呼吸筋が弛緩することで胸郭が元の大きさに戻り、広げられていた肺が元に戻ることで二酸化炭素が身体の外に排出されます。
以上より、呼吸を考えるときは吸気、酸素を取り込む酸素化と、呼気、二酸化炭素を吐く換気にそれぞれ分けて考えます。酸素療法を開始するかどうか、患者さんに酸素投与を始めるかどうかは酸素に関する指標であるPaO2やSpO2を中心に考えます。 SpO2は動脈血酸素飽和度を経皮的に測定したもので血液の中のヘモグロビンと結合している酸素の割合を表しています。
日本呼吸器学会が作成した酸素療法ガイドラインでも「一般的に室内気にてPaO2が60Torr未満あるいは、SaO2が90%以下の急性呼吸不全が酸素投与の適応となる」1)とされています。