【連載】やさしく学ぶ 大腸がん経口抗がん剤の副作用マネジメント
第9回 「間質性肺疾患」をマスターしよう
- 公開日: 2014/7/9
- 更新日: 2021/1/5
間質性肺疾患は、抗がん剤をはじめとする広範な医薬品で起こり得る副作用です。スチバーガ®でも頻度は高くありませんが起こることがあり、重篤化すると生命を脅かす可能性もあるため注意が必要です。第9回では間質性肺疾患の症状や対応について学びましょう。
間質性肺疾患とは、肺胞、肺胞の壁、血管と細い気道の周辺が損傷する疾患の総称です
間質性肺疾患とは、肺胞(肺にある空気の袋)、肺胞の壁、血管と細い気道の周辺など、肺組織の間質間隙が損傷する疾患の総称でスチバーガ®投与時の副作用の1つとして報告されています。
なかでも間質性肺炎は、肺胞の壁や周辺に炎症が起こり血液への酸素の取り込みが悪くなって呼吸が苦しくなる疾患で、症状が一時的な場合もありますが、進行すると肺が線維化して硬くなり、肺線維症になることもあるので注意が必要です(図)。
図 間質性肺炎の進行
間質性肺炎の主な症状は、呼吸困難、空咳、発熱です
間質性肺炎の主な症状は、息切れ(呼吸困難)、空咳(痰のない咳)、発熱などです。患者さんに症状を説明する場合や、症状が出ていないか確認する場合には、表のように具体的でわかりやすい言葉を用いることがポイントです。
表 間質性肺炎の症状の伝え方
間質性肺疾患は、早期発見と早期対応が重要です
スチバーガ®の投与中は臨床症状の十分な観察を行って、間質性肺炎などの間質性肺疾患の早期発見に努め、疑われる症状があらわれた場合には速やかに適切な対応を行うことが重要です。
患者さんの身体症状(呼吸困難、空咳、発熱)や胸部聴診(捻髪音)、SpO2を定期的に確認することが間質性肺疾患の早期発見の手掛かりとなります。
患者さんが呼吸困難、空咳、発熱などの症状を訴えた場合には、早急に胸部X線、胸部CTなどの画像検査、SpO2の測定(必要に応じて動脈血ガス分析)、血液検査(CRP、LDH、KL-6、SP-D)などを実施します。そして、間質性肺疾患と診断された場合には、スチバーガ®の投与を中止し、パルス療法を含めたステロイド剤などによる治療を行います。
患者さんへの説明のポイント
スチバーガ®の副作用として間質性肺疾患があらわれる頻度は高くありませんが、早期発見、早期治療が重要であるため、スチバーガ®の治療中は間質性肺疾患の発現の可能性があることや、患者さんによる副作用の自己申告が重要であることを、前もって説明しておくことが必要です。
間質性肺疾患は発症すると急速に症状が悪化することがあるため、息切れ・呼吸困難、空咳、発熱がみられた場合は、スチバーガ®の服用をやめ、緊急連絡するよう指導します。これらの症状は風邪の症状と似ていて区別がつきにくいので、判断に迷う場合は医師に連絡するよう患者さんに指導しておきましょう。
(提供:バイエル薬品株式会社)