【第17回日本褥瘡学会Close UP! 】②退院時関係者カンファレンスと4者共同指導加算
- 公開日: 2015/11/16
平成27年 8月28日(金)・29日(土)に仙台国際センターにて第17回日本褥瘡学会学術集会が開催されました。本大会では館 正弘先生(東北大学大学院医学系研究科形成外科教授)が大会長を務め、『先進的褥瘡研究の推進』をテーマに、初学者向けのスキルアップセミナーから褥瘡栄養学のような先進的・学術的なシンポジウム、教育講演など様々なプログラムで行なわれ、全国から約6,000人もの参加者があり、大盛況のまま幕を閉じました。
皮膚・排泄ケア認定看護師(wocナース)をはじめ、医師(内科医・外科医・歯科医ほか)・看護師・薬剤師・栄養士・PT・OT・ケアマネ・福祉用具専門相談員など、褥瘡に関わる専門家が一堂に会し、まさにチーム医療の最先端を体現する日本褥瘡学会学術集会から、そのプログラムの一部を紹介します!
褥瘡対策 在宅への連携(近藤 龍雄 先生/飯田市立病院訪問看護ステーション)
退院時関係者カンファレンスとは?
【症例】左右脳梗塞による完全四肢麻痺・屈曲拘縮のある92歳男性。寝たきり・全介助の状態で、仙骨部の深さが判定不能の褥瘡が発生した。発熱があり敗血症のため緊急入院となったが、感染管理が奏功し、肉芽形成もみられ在宅療養可能となった。主な介護者は高齢息子夫婦の嫁だが、疲労があり介護継続は困難で、経済的に施設利用は難しいことから在宅療養を希望している状況である(生活環境は未整備)。
近藤先生は、患者が病院から在宅医療へ安心して移行するためには、シームレスな医療提供が必要だと説明します。このケースでは、
<病院側からの参加>
- 形成外科主治医
- 病棟担当看護師
- 皮膚・排泄ケア認定看護師
- 院内担当理学療法士
- 医療ソーシャルワーカー(MSW)
- 退院支援看護師
<在宅側からの参加>
- 家族(夫婦)
- ケアマネ
- かかりつけ医看護師
- 訪問看護看護師
- 訪問リハビリ理学療法士
- デイサービス
が参加して、褥瘡の現状・今後の予測や家族指導内容の共有、家族の特定にあわせた支援体制の確認などを行ないました。
この退院時カンファレンスでは病院側が『退院時共同指導料2』として300点が算定できますが、同カンファレンスでは指定職種による4者と共同指導を行なった場合、『4者共同指導加算』としてさらに2,000点が算定できます(合計2,300点。このケースでの該当職種は太字)。
【4者共同指導加算の参加職種】
- 入院中の医療機関の医師(必須)
- 当該患者の退院後の在宅療養を担う医療機関の医師もしくは看護師
- 歯科医師もしくはその指示を受けた歯科衛生士
- 保険薬局薬剤師
- 訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)
- 居宅介護支援事業所の介護支援専門員
褥瘡患者への仙骨と踵の除圧ポジショニングとは?
この寝たきりで全介助の患者さんが自宅でエアマットを使用した際に、下肢屈曲拘縮のため、仙骨と踵に60mmHgという圧が出た場合、適切な除圧ポジショニングとして、下肢の下にクッションを敷き“下肢全体を支えること”を解説しました。
その理由として、仰向けで膝が屈曲してくると大腿・ふくらはぎの重さが仙骨や踵にかかり、圧を高めます。膝関節の所だけクッションを入れた姿勢は下肢屈曲拘縮を強めてしまいます。また、踵の除圧のためにふくらはぎにクッションをいれると、大腿とふくらはぎの重さがそのまま仙骨にかかって、褥瘡を発生させます。
そのような場合、大腿後面やふくらはぎの下にクッションを敷くことで、大腿・ふくらはぎの重さがクッションにかかるために、仙骨部や踵の除圧ができます。
次回は松井 佐知子先生による「褥瘡評価スケールの違い」「褥瘡治癒遷延の要因」についてです。