【第17回日本褥瘡学会Close UP! 】③褥瘡評価スケールの違い/褥瘡治癒遷延の要因
- 公開日: 2015/11/18
平成27年 8月28日(金)・29日(土)に仙台国際センターにて第17回日本褥瘡学会学術集会が開催されました。本大会では館 正弘先生(東北大学大学院医学系研究科形成外科教授)が大会長を務め、『先進的褥瘡研究の推進』をテーマに、初学者向けのスキルアップセミナーから褥瘡栄養学のような先進的・学術的なシンポジウム、教育講演など様々なプログラムで行なわれ、全国から約6,000人もの参加者があり、大盛況のまま幕を閉じました。
皮膚・排泄ケア認定看護師(wocナース)をはじめ、医師(内科医・外科医・歯科医ほか)・看護師・薬剤師・栄養士・PT・OT・ケアマネ・福祉用具専門相談員など、褥瘡に関わる専門家が一堂に会し、まさにチーム医療の最先端を体現する日本褥瘡学会学術集会から、そのプログラムの一部を紹介します!
褥瘡予防のケアと実際(松井 佐知子先生/群馬大学医学部附属病院看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師)
【症例】肺炎で入院し、脳血管障害のため右半身麻痺で寝たきりで、関節拘縮ありの80歳代の女性。
患者さんの褥瘡を評価するにあたり、松井先生は関節拘縮についてのリスク評価項目のあるアセスメントスケールとして『OHスケール』を紹介しました。このほかの褥瘡評価スケールとして、『ブレーデンスケール』『K式スケール』があります。
自力体位変換できない患者に第一選択しない体圧分散マットレスは?
松井先生は『在宅褥瘡予防・治療ガイドブック(第2版)』を紐解きながら、体圧分散寝具の選択基準については、患者さんが自力体位変換能力・骨突出・頭側挙上(45度以上)があるかどうかから判断し、『上敷フォームマットレス』は自力体位変換能力がある患者さんに用い、自力体位変換できない患者さんには『圧切替型エアマットレス』『交換フォームマットレス』が第一選択となることを解説しました。
また、他の症例も提示しながら、褥瘡治癒遅延の理由として、ハイドロコロイドが創の状態に適さない場合があること、ポケットがあることなどを解説しました。
褥瘡治癒遷延の要因とは?
【症例】左大腿骨骨折にて入院し、前病院から転院してきた左臀部褥瘡をもつ60歳代女性患者。ハイドロコロイドを投与するも2ヶ月経過後もあまり褥瘡に変化がない状況である。
この患者さんのように治癒が遷延している理由として、松井先生はハイドロコロイドが創の状態に適していないことを挙げました。
明らかな感染徴候がないにもかかわらず創治癒が停滞している状況を『クリティカルコロナイゼーション(臨界的定着)※』といい、抗菌薬を投与すると治癒速度が改善します。
このように肉芽形成が不十分でクリティカルコロナイゼーションが疑われる患者には、『褥瘡予防・管理ガイドライン(3版)』によれば、外用剤として“抗菌作用を有するカデキソマー・ヨウ素、ポピドンヨード・シュガー、ヨウ素軟膏もしくはスルファアジン銀を用いてもよい(推奨度C1)” 、また、ドレッシング材としては“銀含有ハイドロファイバー、アルギン酸Agを用いてもよい(推奨度C1)” とされます。
なお、保存的治療を行なっても改善しない褥瘡に対しては、ポケットを外科的にデブリしてもよいとされていることも紹介しました。
※クリティカルコロナイゼーション(臨界的定着):創部に生着した細菌が創治癒に悪影響を与え始めていても、肉眼的に感染徴候である発赤・腫脹・熱感・疼痛がみられない状況。「臨界的」とは菌の定着と感染の中間の状態をいう。
次回は堀川 香奈先生による「パーキンソン病患者の褥瘡」についてです。