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【連載】フィジカルアセスメント症状別編

【口渇の看護】口渇の原因とメカニズム(脱水・ドライマウス)、アセスメント

  • 公開日: 2011/8/15

口が渇く原因は、脱水症によるものと口の中だけが渇くものに分けられます。 脱水症に起因している場合は、緊急対応が必要なケースもあります。 口渇のメカニズムやアセスメントの仕方を知って、 どちらに起因しているのかを鑑別し、適切な看護につなげましょう。


まずは、これを知っておこう!

“口が渇く”は大きく2つに分けられる

口渇とは文字通り口が渇くことです。しかし、実際には体内の水分不足によって「口(喉)が渇く(水が飲みたい)」という場合と、体内の水分は充分だけれども「口だけが乾燥している」という2つに大別できます。どちらも単純な水分不足であったり、口呼吸をしていたため、口腔内が乾燥してしまったという場合もありますが、何らかの疾患による可能性もあります。

口渇は患者さんの自覚症状

口渇とは患者さんの自覚症状です。まずは、患者さんの訴える口渇がこの2つのどちらなのかを鑑別できる知識をつけることが大切です。 それぞれどういう仕組みで口渇を招くのか、理解しておきましょう。

口渇を訴えるメカニズム

口渇の原因その1・身体の水分量の不足(脱水)

身体の水分量の不足、いわゆる脱水。これが一つ目の口渇を訴える原因です。
なぜ、水分不足に陥るかというと、単純に発汗や排尿で失った水分量より水分摂取量自体が不足している場合と、なんらかの疾患・症状に伴って起こる水不足があります。
脱水として考えられるのは、発熱、発汗、嘔吐、下痢、さらに糖尿病や尿崩症による多尿などに伴う水分排泄量過多です。利尿剤の効き過ぎで水分排泄過多になる場合や、出血などによる循環血流量の不足も体内の水分不足に含まれます。甲状腺機能亢進症も発汗が促されるので脱水に陥りがちです。
このほかに、体液が濃くなりすぎたときにも水分不足に陥ります。なぜなら、私たちの身体は腎臓の働きで体液の濃度が一定に保たれています。そのため、体液濃度のバランスが崩れると、補正するために水分が必要となります。例えば塩辛いものを食べると水が飲みたくなるのはその一例で、血中の塩分が増えるので口渇中枢が刺激されて水を飲みたくなるというわけなのです。
また、胸水、腹水、浮腫、うっ血性心不全などのように血管外に水分が漏出してしまうと、体内のトータルの水分量は変わりませんが、血管内の水分が減少することによって、体が水分不足と判断し、口渇を訴えることがあります。

【関連記事】
* 脱水(高張性・低張性・等張性)の原因と検査・治療・ケアのポイント
* 【浮腫とは?】浮腫のメカニズムと治療・ケア

口渇の原因その2・ドライマウス

身体の水分不足とは関係なく口の中だけが乾燥して感じる口渇がドライマウスです。
鼻炎などの耳鼻科疾患や口呼吸が癖になっている場合には、口を開けているのでどうしても乾燥してしまいます。
また、加齢に伴って口や顎の筋力が衰えて唾液腺に刺激が伝わらなかったり、ある種の薬の副作用や腫瘍などがあって唾液の分泌が妨げられたりすると、口の中が乾いてしまいます。
ただし、高齢者はもともと体内の水分量が少ない傾向にあるので、通常よりも発汗量が増えると脱水になりやすいといえます。そのため高齢者に口渇を訴えられた場合、一概に加齢による唾液の分泌低下と判断するのは危険です。
唾液の分泌を妨げる副作用を生じる薬剤は、降圧剤や感冒薬などに含まれるヒスタミン剤、利尿剤、向精神薬、鎮痛薬、制吐剤、消炎剤などです。 また、全身の分泌腺が冒されるシェーグレン症候群もドライマウスを呈します。
さらにがん治療中の患者さんでは、抗がん剤や放射線療法により口腔内の乾燥を訴えるケースが少なからずみられます。そのほかに、緊張やストレスなどにより口渇を感じる場合もあります。また、歯磨き粉を使用しすぎるなどでも口腔内の乾燥は起こります。

口渇を起こす症状とメカニズム

緊急性が高いのは脱水に起因した口渇

前述したように、口渇には身体の水分不足とドライマウスの2タイプがあります。このうち重篤な状態に陥りやすいのが、身体の水分不足すなわち脱水です。私たちの身体の大半は水分です。成人の場合は体重のおよそ6割、小児の場合はおよそ8割が水分といわれています。そのため、体重の2%相当の水分が失われると脱水状態に陥り、「強い喉の渇き、食欲減退」などの症状がみられ、さらに水分が失われると生命危機につながる重篤な状態となり、緊急対応が必要となります。
患者さんに口渇がみられたら、観察や問診でどちらのタイプなのかという鑑別と原因を精査して速やかに対応しましょう。
また、乳幼児や高齢者は脱水を起こしやすく、患者さん自身では口渇を訴えられないケースも少なくありません。
訴えに耳を傾けて迅速に対応するのはもちろんですが、患者さんの様子を細やかに観察して異常をより早く察知するように努めましょう。
なお、口腔内の様子も必ず確認してください。口腔内は常に唾液が分泌しているので湿潤環境になるはずですが、脱水症状がみられないのに口腔内が乾燥している場合にはドライマウスの可能性が考えられます。

問診からアセスメントのヒントを得る

身体の水分不足とドライマウス、それぞれの原因リストを想定しながら、患者さんに問診を行い、精査しましょう。

●発症時期を聞く

『口が渇いている(水が飲みたい)』 と感じることが多くなったのはいつ頃からですか?

■こんな質問で絞り込もう

・どんなときにそう感じますか?
・例えば薬を飲んだときですか? それとも朝、起きたときから感じますか?

■アセスメントのヒント

・例えば糖尿病は多飲多尿がきっかけで受診につながることも多く、口渇の発症時期やきっかけが疾患に起因していることがあります。
・薬の副作用によって生じるドライマウスも、原因疾患の治療に関係しているので、見逃せない情報です。
・薬の影響で黄疸が生じることがあるので服薬にも注意しましょう。
・朝、起きぬけから感じる口渇は身体の水分不足もしくは口を開けて寝ているためのドライマウスの両方が考えられます。別の角度から問診して精査しましょう。

●発症のきっかけを聞く

いつもと変わったことはありませんか?

■こんな質問で絞り込もう

・熱は出ていませんか?
・汗をかくようなことをしていませんか?
・トイレの回数が増えていませんか?
・吐いたり、下痢をしたりしていませんか?
・いつもと違うお薬を飲んだり、薬が変わったりしたことはありませんか?
・いつも通りに水分を摂っていますか?
・鼻が詰まっていたり、鼻炎などはありませんか?

■アセスメントのヒント

・発熱や発汗があると、水分が過剰に失われる可能性があります。
・リハビリなどで身体を動かした後には水分補給をするように患者さんに促します。
・水分摂取量がいつもと変わらないのに尿量が増えている場合や嘔吐、下痢がみられる場合には、水分排泄量過多による脱水が考えられます。
・服薬状況に変化があった場合には、薬の副作用による口渇の可能性があります。
・いつもより水分摂取量が少ない場合にも口渇を感じることがあります。
・鼻が詰まっていたり、鼻炎があると口呼吸になっていることがあります。

緊急度は脱水の重症度から判断

問診で得た情報と合わせて、下記のような点を確認していきましょう。

●バイタルサインのチェック

口渇を訴える原因となる脱水を引き起こす症状がないかを確認します。発熱がないかどうかはもちろん、脱水の重症度を測るためにも血圧などバイタルサインの確認は欠かせません。また、ナトリウム欠乏型脱水の場合、脱水症状が進むと、血圧低下や頻脈など、循環器系症状が発現します。

●皮膚や口唇の状態を確認する

皮膚や口唇の乾燥、皮膚の弾力性低下がみられたら、脱水の可能性が高いといえるでしょう。特に、水分が抜けて手の甲がしわしわになっていたら要注意です。

●口腔内や腋窩の乾燥をみる

口腔内が渇いていないか、腋窩が乾燥していないかを確認します。口腔内の場合は、体内の水分不足の原因だけではなく、唾液腺の異常でも乾燥することが考えられます。腋窩が乾燥している場合は、脱水の可能性があります。

●意識レベルを確認する

意識レベルの確認も行います。重篤な脱水症状の場合には、昏睡状態に陥ることがあります。

●その他

胸水や腹水が考えられる場合は聴診を行います。さらに、その日のうちに血液検査を行っていれば、血糖値やナトリウムの値を確認します。可能なら体重を量ります。脱水の場合は体重が著しく減少するため、重症度の判定にも役立ちます。
※(次ページでは、アセスメントした結果をどのように看護に活かしていくかを解説します)

アセスメントを看護につなごう

患者さんが口渇症状を訴えた場合には、身体の水分不足なのかドライマウスなのか、しっかり見極めることが適切な看護につなげるポイントといえます。
ただし、高齢者の場合には、この二つが混在していることも少なくありません。
いずれにしろ患者さんに口渇の訴えやその徴候があれば、まず明らかな脱水症状の有無を確認します。そして、脱水症状があれば速やかに対応しましょう。
また、ドライマウスの場合には、嚥下障害などを伴っている可能性があります。見逃さないように注意が必要です。

重度の脱水が見られる場合には緊急対応を

観察事項やバイタルサインのチェック、問診などから、脱水症状と考えられる場合には、重症度を判定し、ケアを開始します。
経口摂取可能で軽症の場合には、経口補液が基本になります。しかし、経口摂取不能な患者さんや中等以上のレベルの場合には、経静脈性輸液が必要となります。
重度の脱水と認めたら、ただちに医師に連絡し、輸液を開始していきます。さらにショックを起こす場合もあるので、急変の徴候を見逃さないよう、経過観察を怠らないようにしましょう。

緊急性がない場合は症状に合わせて対応を

水分摂取不足による脱水と考えられる場合には、患者さんに水分摂取を促します。特に高齢の患者さんなどで夜間のトイレを我慢するために飲水を控えている場合には、脱水症にならないように水分補給に配慮した上で、ポータブルトイレをベッドサイドに設置する、あるいはタイミングを見計らってトイレに誘導するなどの工夫をしましょう。
また、室内の温度が高かったり、厚着をしていたりすると不感蒸泄が増え、軽度の脱水を引き起こすことがあります。患者さんの身の回りが適切な環境になるよう整えます。
薬剤の副作用が原因と考えられる場合には、主治医に連絡してその薬を継続するかほかの薬に変更するか、相談しましょう。
ドライマウスで放射線治療によって唾液分泌の障害が起こっている場合にも、主治医に患者さんの状態を報告し、放射線治療の継続に関して相談する必要があります。
またドライマウスの場合、唾液の分泌量が減少すると、嚥下障害をきたしやすいので食事の際は水分の摂取が必要です。さらに口腔内が不潔になりやすいので歯磨きやうがいなどの口腔ケアが欠かせません。
口呼吸が原因のドライマウスであれば、鼻疾患の治療や口呼吸の癖を改善するように患者さんに促しましょう。
このほかに、シェーグレン症侯群は膠原病を合併していることがあるので主治医に連絡して精査する必要があります。

まとめ

口渇という言葉は一つでも、そこにはいろいろな意味があります。視診、問診、聴診、バイタルサインのチェックなど、さまざまな方法で情報を収集しましょう。その情報を元にアセスメントし、患者さんの身体に起こっていることが何なのか、導き出してください。
(ナース専科「マガジン」2010年8月号より転載)

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