【第17回日本褥瘡学会Close UP! 】⑥デブリが必要な褥瘡/浸出液が多い褥瘡
- 公開日: 2015/11/30
- 更新日: 2021/1/6
平成27年 8月28日(金)・29日(土)に仙台国際センターにて第17回日本褥瘡学会学術集会が開催されました。本大会では館 正弘先生(東北大学大学院医学系研究科形成外科教授)が大会長を務め、『先進的褥瘡研究の推進』をテーマに、初学者向けのスキルアップセミナーから褥瘡栄養学のような先進的・学術的なシンポジウム、教育講演など様々なプログラムで行なわれ、全国から約6,000人もの参加者があり、大盛況のまま幕を閉じました。
皮膚・排泄ケア認定看護師(wocナース)をはじめ、医師(内科医・外科医・歯科医ほか)・看護師・薬剤師・栄養士・PT・OT・ケアマネ・福祉用具専門相談員など、褥瘡に関わる専門家が一堂に会し、まさにチーム医療の最先端を体現する日本褥瘡学会学術集会から、そのプログラムの一部を紹介します!
適切な局所治療によって治癒に至った褥瘡の1例(袋 秀平先生/ふくろ皮膚科クリニック 院長)
デブリが必要な褥瘡に対してのアプローチは?
【症例】脳梗塞後遺症により寝たきりとなった80歳男性。自力での寝返りは困難であり、肺炎のために全身状態が悪化して入院、右大転子部に直径約10センチの褥瘡が発生し往診依頼となった。褥瘡には悪臭はないが、周囲に発赤あり。
袋先生は、このような褥瘡の局所治療については、まず壊死組織の除去を最優先すべきと説明し、皮膚組織が堅くなってハサミの刃が立たない場合は、メスでさいの目上に切れ目を入れた箇所にゲーベンクリームを塗布すると自己融解させることができると解説しました。
浸出液が多い褥瘡に対してのアプローチは?
【症例】滲出液が多量の褥瘡を持つ60歳代男性。悪臭・エスカー(乾燥した硬い壊死組織;eschar)やスラフ(水分を含んだ軟らかい黄色調の壊死組織;slough)もあり、糖尿病も合併している。DESIGN-Rスケールは33点。
創の状態を改善するための手段に迷う時は、“創傷治癒を阻害する要因を取り除き、創傷が治癒するための環境をつくること”=創傷環境調整(wound bed preparaetion;WBP)を考えると対策が見えてきます。その方法として袋先生はTIMEコンセプトを紹介しました。
- T:Tissue non viable or deficient 壊死組織→デブリドマン
- I:Infection or inflammation 感染と炎症→その治療
- M:Moisture imbalance 湿潤状態→正常化
- E:Edge of wound-nonadvancing or undermined 上皮化・ポケット→原因の再評価
この患者さんには、TとIとMについて対処する必要があるので、デブリをしつつカデキソマー・ヨウ素を用いることによって吸水しながら感染を制御し、創傷を収縮させることができました。
次回は、佐藤 智也先生による「脊髄損傷患者の褥瘡」についてです。