こうして予防する! スキンテア1
- 公開日: 2015/11/29
- 更新日: 2021/1/6
高齢患者さんの皮膚はさまざまな要因により菲薄化、脆弱化しやすくスキントラブルが起こりやすい状態となっています。
最近取り上げられているスキンテア(以下、テアとする)もその一つです。
そこで、今回は高齢者ケアに携わるエキスパートがテアの原因として考えられているドライスキンとテープトラブルの予防について解説します。
高齢者の脆弱な皮膚に起こるトラブル
高齢者の皮膚の特徴としては、まず新陳代謝の低下が挙げられます。新陳代謝とは古い皮膚から新しい皮膚へ生まれ変わるサイクルのことをいい、この サイクルの正常な周期は28日といわれています。
しかし、新陳代謝が低下した高齢者はこの周期が延長するため、なかなか新しい皮膚へ再生されず傷の回復が遅れるというわけです。
その他、いくつもの要因により高齢者の皮膚は脆弱化しています(表1)。
【表1】高齢者の脆弱な皮膚
そして、最大の特徴といえるのがドライスキンです。表皮の角質層は、皮脂膜によって外界の刺激から身体を守ると同時に、体内からの水分の蒸発、乾 燥を防ぎます。
しかし、加齢とともに角質の水分量が減少、皮脂成分の分泌も低下するため、ドライスキンに傾いてしまいます(図1)。
ドライスキンは掻痒感を伴うことが多く、掻破することで創傷形成や炎症、感染症の誘因となるだけではなく、食欲の低下や意欲低下、睡眠障害、夜間 不穏など生活自体に影響をきたすことがあります。
ドライスキンになると皮膚のバリア機能は破綻していますから、乾燥が助長され、軽微な外力であっても過度な摩擦刺激となり、皮膚が損傷されるリスク が高くなります。
高齢者の場合は、認知機能や運動機能の低下もみられます。そのため、移乗する際には方向転換がうまく行えずふらついてしまったり、ゆっくり腰かけられずドシンと座ってしまい、車いすのフットレストやベッド柵などにぶつかってしまうことが多々見られます。
さらに、介助を受ける機会も多く、その際に生じる人為的な摩擦刺激や機械的刺激によって、創傷を形成してしまうことがあります。高齢者の皮膚は脆弱となっていますので、腕を優しく掴む行為でも、簡単に皮膚を損傷させてしまうことがあるのです。
【図1】皮膚の構造