乳がん患者さんの療養生活のQOLを高めるために―皮膚障害とケア―03
- 公開日: 2016/3/22
- 更新日: 2021/1/13
乳がんでは、手術・化学・放射線療法などに対する有害事象として、さまざまな皮膚障害が現れやすいことがわかっています。今回は、症状や後遺症を抱えた患者さんの長期ケアに焦点を当て、皮膚障害にどのようなケアを行っていけばよいかお話しいただきます。
左から、座談会出席者の金井 久子さん、佐野 加奈さん、根本 弘美さん
03 症状や後遺症を抱えた患者さんの長期ケア
――乳がん患者さんは、いったん治療を終了したあとも、再発の不安を抱えて長期にわたり経過観察や定期診断・治療を続けるケースがほとんどです。また再発や転移を繰り返し、治療を行いながら、生活を続ける患者さんも現れています。この環境のなかで、皆さんが感じておられることはどんなことでしょうか。
金井: 長期わたり、残り続ける有害事象を抱えて、QOLが低下していることを患者さん自身や医療スタッフが感じるようになってきたのは、ここ数年ではないかと思います。
症状がひどく悪化することこそありませんが、頭髪を例にとると治療開始当初、化学療法が終われば生えてくるとお伝えしていたにもかかわらず、3年経ってもかつらを手放せない患者さんもおられました。
爪もすでに生え変わってはいても巻き爪が治らないとか、末梢神経障害が年単位で残っている患者さんもいます。投与方法も点滴、飲み薬、注射と増え、患者さんの悩みも多岐にわたりはじめています。抗がん剤を10年以上使い続けている患者さんも出はじめており、今後どうなっていくのでしょうか。
こんななか、当院では昨年から看護外来を開設しました。がん看護専門看護師、がん化学療法看護認定看護師、乳がん看護認定看護師、リエゾンナースなどが、患者さんの相談を受ける体制を整えました。
佐野: 私は病棟に所属しているため、退院後の患者さんと直接かかわることはあまりありませんが、外来からの依頼があればいつでもWOCとして介入できます。
当院には、皮膚排泄ケア外来があり、ストーマや褥瘡だけでなく、がん放射線療法や化学療法による有害事象の皮膚障害へも対応しています。洗剤が残りにくい低刺激性の肌着※や無縫製のシームレスな肌着※などの紹介もしています。外来は院内の多職種チームと連携しており、患者さんを囲むように多職種でフォローしています。
先日も乳がんの患者さんで、抗がん剤による皮膚障害が悪化し、潰瘍形成と爪のトラブルを抱えて在宅に移る方がいました。そこで皮膚潰瘍に対してはWOCが、爪囲炎に対してがん専門看護師が、心理面には乳がん看護認定看護師が介入し、互いに情報共有してサポートしたケースがありました。
――次のページでは、社会復帰する患者さんへの継続的な支援についてです。