1. トップ
  2. 看護記事
  3. 症状から探す
  4. 摂食・嚥下障害
  5. 摂食・嚥下障害患者の食事
  6. 第22回 摂食嚥下障害の臨床Q&A「義歯を急に使わなくなったとき、どうしたらいい?」

【連載】野原幹司先生のこんな時どうする!?摂食嚥下ケア

第22回 摂食嚥下障害の臨床Q&A「義歯を急に使わなくなったとき、どうしたらいい?」

  • 公開日: 2016/8/9

認知症の82歳女性。いままで使っていた義歯を食事中に外すようになりました。何度か装着を試みましたが拒否されました。食事形態は一口大のままですが、食べることはできています。しかし窒息も心配です。もう一度義歯を使うようにしたら良いでしょうか。それともこのままで良いのでしょうか。


義歯は良好な食塊形成に必要で、できる限り装着した方が良いでしょう。さらに義歯は咀嚼だけではなく、顔貌の維持、構音にも影響があります。そのため日ごろからの装着が望ましいということです。では、認知症患者さんが義歯を外してしまうのはどのようなときでしょう。認知症の患者さんは具体的な理由を伝えることが苦手になっているため対応が困難です。再び装着を試みても不隠状態になることもあります。
今回は義歯を拒否してしまう認知症患者さんについて考えてみます。


義歯を外すようになった理由を考える

まず、患者さんが今まで使っていた義歯を外すようになる理由についてです。義歯を外してしまう一般的な原因と対処方法を挙げてみましょう。

(1)口腔内に原因がある

 認知症の患者さんは症状を上手く伝えられないことがあります。疼痛や違和感があっても訴えられないまま、義歯を外しているのかもしれません。義歯を外す行為があったら、疼痛の原因や違和感の有無を確認してみてください。

 疼痛の原因として考えられるのは口内炎、義歯が擦れたことによる潰瘍、う蝕の進行、歯周病(歯肉腫脹)です。また、義歯が壊れている、欠けている、適合が悪いなど義歯の違和感が原因で外すこともあります。義歯装着時は義歯を軽く押さえて口腔内で安定させますが、この時に義歯が不安定ではないか、部分義歯の場合はバネが緩いもしくは硬くないか確認してみましょう。

 口腔内の問題(痛みや義歯の違和感など)が解決できれば再び義歯を使える可能性がありますので、歯科の受診を勧めてください。また、口腔内の確認がむずかしいときも歯科受診をすすめましょう。

(2)義歯の使い方が分からなくなった

 認知症のなかでもアルツハイマー型認知症は中核症状に「失認」があります。その影響から食具(箸、スプーン、フォークなど)が認識できず、手づかみで食べる患者さんもいます。これと同じように、「義歯は口腔内に入れて使うもの」が分からないことがあります。

 これは拒否というよりもわからなくなってしまったという症状です。認知症患者さん本人が義歯を着脱していた場合にみうけられますので、看護師さんが本人に代わって装着することで使えることもあります。

(3)義歯を異物と感じる

認知症患者さんのなかには義歯を突然に異物として認識してしまう患者さんがいます。最初は義歯を装着して食事しますが、義歯を異物と思い始めると食事中に外すようになります。義歯を装着できる時間はさらに短くなり、ついには義歯を装着してもすぐに外してしまいます。このような場合は義歯をもう一度使うことはむずかしくなります(写真)。

(4)義歯の安定が悪い

 まず義歯はどのように安定するのかをお伝えします。総義歯は粘膜と義歯の間に唾液が入ることで安定します(吸盤と同じ原理)。部分義歯はこれに加えて義歯についているバネ(クラスプ)が残っている歯に引っかかることで安定します。さらに不安定になった義歯を抑えるときは、舌・頬・口唇が適度に緊張し義歯を安定させるため、口腔機能も義歯安定に影響します。このような義歯安定の条件が不足していると,咀嚼とともに動いてしまい食塊形成がしにくくなります。このような状況では義歯が無い方が食べやすいため、患者さんは義歯を外してしまいます。

(5)違う人の義歯が入っている

 施設の場合は同じような形の義歯が多く、誤って違う方の義歯を使っていたということもあります。この場合は入れ違ってしまった双方の義歯をきれいに消毒してそれぞれ持ち主に戻せば問題ありません。本人の義歯か分からないのであれば、歯科受診して本人のものかどうか診てもらいましょう。

今回の患者さんの場合

では、今回の患者さんを考えてみましょう。(2)は今回の患者さんには当てはまらなく、(1)(5)は義歯を外す原因が解決できれば義歯を使うことができるので食事形態も一口大で大丈夫です。(4)は歯科受診で解決できるかもしれません。むずかしいのは(3)です。義歯の再開は困難なため、食事形態の変更を検討します。

看護師さんの見守りが可能であれば一口大で様子をみても良いかもしれません。見守りがむずかしいのであれば窒息予防のため、食事形態は刻むあるいは食塊形成の必要がない形態に変更したほうが良いでしょう。この提案に対してご本人やご家族が食事形態の変更をどうしても拒否する場合、食事形態は一口大のまま様子をみることになります。この時は窒息リスク(時として生命の危機になること)を十分に説明してご本人・ご家族にご理解いただいてください。

患者さんが義歯を使わなくなってしまう原因はこのようにいろいろあり、対処方法もいくつかあります。患者さんが食生活を安全に楽しく保つには、看護師さんの日頃の観察がとても重要です。

認知症患者さんの食事の写真

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

【無料サンプル進呈】スーパー食物繊維配合とろみ調整食品ですっきりしませんか?【PR】

業界初!※スーパー食物繊維PHGG配合のとろみ調整食品ですっきりをサポート ※とろみ調整食品原材料調査 ネスレ日本株式会社調べ(2018年2月現在)  飲み込む力が気になる人は、食事の摂取量が落ち、栄養低下、おなかへのケアが必要となることが多々あります。なかで

2018/11/20

アクセスランキング

1位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
2位

簡単! 楽ちん! 点滴の滴下数計算 2つの方法

皆さんご存知の通り、点滴指示書には様々な書き方があります。 よくあるパターン ●流速が書かれている (例)「○○輸液500ml 60ml/h」 ●1日の総量が書かれている (例)...

251296
3位

看護問題リスト・看護計画の書き方|看護記録書き方のポイン

ここでは一般的な看護記録を解説しています。また、看護診断名にNANDA-I看護診断を使用しています。実際の記録は院内の記録規定に従いましょう。 【関連記事】 *看護計画の「観察項目...

249544
4位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
5位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・...

250751
6位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
7位

転倒転落リスクに対する看護計画|高齢で転倒の恐れがある患

高齢の転倒転落リスクに関する看護計画 加齢に伴い筋力や平衡感覚などの身体機能が低下することに加えて、疾患やそれに対する治療、使用する薬剤の副作用、入院環境などさまざまな要因で転倒や転落しやすくな...

313501
8位

心不全の看護|原因、種類、診断、治療

*2020年4月30日改訂 心不全とは  生活習慣病やさまざまな基礎疾患、加齢などが原因となり、心機能、特に多いのは左心室のポンプ機能が低下することで起こります。心臓のポンプ機能の代償...

249812
9位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
10位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開の看護 吸引とは...

250001