訪問看護師に必要なこととは?
- 公開日: 2017/1/12
今、在宅の現場に続々と20~30代の若手看護師が就職・転職しています。その最前線とも言うべき事業所が、都内西部14拠点を中心に活動するLife On Vital Element 株式会社(以下:LE)です。自らも29歳で訪問看護ステーションを起業したというLE代表取締役・多江和晃さんに、自らのご経験と病棟・在宅で求められるスキルの違いについてお話を聞きました。
自分がいないときを想定してどれだけ看護・リハビリができるかが大切
LE代表取締役・多江和晃さん
福井赤十字専門学校を同校初の男性看護師として卒業後、福井赤十字病院、順天堂大学付属順天堂医院を経て、在宅医療の会社に入社しました。女性社会の看護の世界で、一時は看護師を辞めようと思ったこともありますが、苦労して看護師になったのだから辞めるわけにはいかないと、病院看護から訪問看護の世界に飛び込みました。
在宅医療に携わってみると、ご活用者様のことを考えて一所懸命に看護・リハビリするほどにご活用者様の状態が改善されたり手応えがストレートに返ってくるのがとてもおもしろく、強い個性でとんがっている自分にはぴったり合っていると直感しました。そして29歳で独立し、現在の会社を興し、10年が過ぎました。
「病院と在宅の看護・リハビリの違い」をよく聞かれますが、一番は「自分がいない時を想定してどれだけ看護・リハビリできるか」だと考えています。訪問看護・リハビリでご活用者様宅を訪れるのは週に1、2回程度。私たちがいない6日と23時間の間に、体調が悪くなったり、転倒してしまうかもしれません。「この方は次に来るまで元気かな」「いないときに転んだりしないだろうか」「3時間後に脱水状態になっているかもしれない」と想像を巡らせ、そうならないためにしっかりと看護・リハビリをしてくることこそ、訪問看護・リハビリなのだと考えています。ちなみに先を読む看護・リハビリを実践しているので、夜間や深夜の要請コールは年間3、4件しかないことをつけ加えておきましょう。
また「訪問看護・リハビリで必要な技術は何か」というのも、よく聞かれることの一つですが、基礎看護・リハビリ技術があれば十分です。そのうえで、在宅に限ることではありませんが、看護・リハビリの専門性は「アセスメント」に尽きると考えています。「こんにちは」とご活用者様宅のドアを入ったときから、アセスメントは始まっています。1時間の訪問中に「私たちがいないときにご活用者様はどうするのだろう」と考えてアセスメントし、それを各自が持っている基礎看護・リハビリ技術を駆使して行動に移せばよいのです。
しかし、訪問看護・リハビリに興味はあっても、ご活用者様宅で1人で対処しなければならず、それが不安だと考えて躊躇する人は少なくありません。今は携帯電話やメールなどさまざまなITツールを使ってその都度事業所と連絡を取るので、たった1人でアセスメントすることはありません。LEでは管理者への報告を義務付けており、これが看護・リハビリの質を担保するものと考えています。
今後は日本の医療は急性期の大きな病院しか残らなくなり、在宅医療が主流となっていくことでしょう。このような時代の変化の中で、道路が廊下で家が病室のような、町そのものが病院のような役割になっていくと予測できます。「自分の親をこの町に住まわせたい」と思えるように、そのときに充実した質の高い在宅医療を提供するLEであり続けたいと考えています。
LEの渋谷本部にて