テープなどの粘着製品による皮膚トラブルの原因とトラブル対策4つのポイント【PR】
- 公開日: 2018/6/4
テープやドレッシング材による皮膚トラブルは、臨床でよくみられる症状です。近年では、スキン-テアや医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)なども注目されています。こういった皮膚トラブルを起こさないよう、皮膚トラブルの原因を知り、適切な対策・ケアを行うことが大切です。
テープなどの粘着製品による皮膚トラブルの原因と対策
テープなどの粘着製品を使用することで起こる皮膚トラブルには下記のようなものが考えられます。
- 継続的な赤み
- 水疱
- かゆみ
- 痛み
皮膚トラブルが起こると、痛みなど、患者さんの苦痛が増加します。それだけではなく、同じ位置にテープが貼付できなくなることでカテーテルやドレーン・チューブの固定ができなくなり、時には予定している治療を中断せざるを得なくなる場合もあります。そのため、皮膚トラブルを防ぐことは重要です。
皮膚トラブルの症状を引き起こす原因は、機械的刺激、化学的刺激、アレルギー反応の3つに大きく分けられます。
機械的刺激 | |
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原因 | 皮膚緊張による赤みや剥がすときに起こる皮膚の損傷、繰り返しテープ等を貼ったり剥がしたりすることによる損傷などが原因で起こる |
対策 | ・しっかりと貼付する必要があっても皮膚に貼る部分はできるだけ伸ばさずに貼るようにし、皮膚にムリな緊張をかけない ・関節などの曲げ伸ばしする部分に貼付する場合は、伸縮性のあるテープを使用する |
化学的刺激 | |
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原因 | テープ等を貼った部分に限定して起こる炎症反応で、皮膚に接触した消毒剤や粘着剤の刺激で起こる |
対策 | ・消毒剤を乾燥させてから、テープ等を貼付する ・皮膚に貼ることに対する安全性が確認されているテープを使用する |
アレルギー反応 | |
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原因 | テープの粘着剤等の材料に対するアレルギー反応。テープを貼った範囲を超えるような大きな範囲に反応が出る |
対策 | ・使用前に小さなテープ片を目立たない場所にしばらく貼って試す ・以前にアレルギー反応が発生したテープと同じ成分の粘着剤を使用したテープを避ける |
このほかにも一時的な皮膚トラブルとして、ふやけや赤みがあります。ふやけは、テープなどを貼っている際に、角質層の水分が過剰になることで起こります。一時的な赤みは、剥がしたときの刺激によって皮下の毛細血管が拡張することで起こります。
いずれも短時間で症状は回復しますが、患者にとって苦痛となることがあります。症状を軽減するためには、剥離刺激の弱いテープを選択すること、皮膚に優しい剥がし方を行うとよいでしょう。
また、近年注目されているスキン-テアは、テープ剥離時に最も多く発生しています1)。スキン-テアは、入院基本料の褥瘡対策に関する危険因子の評価項目にも新たに追加されました。
これらの様々な皮膚トラブルを対策するためには、①患者のリスクアセスメントを行うこと、②適切な貼り方・剥がし方を実施すること、③手技を院内で統一すること、④テープの特徴を理解し適切なテープを選択することが大切です。
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・皮膚トラブルの原因とは
トラブル対策4つのポイント
トラブル対策①:患者のリスクアセスメントを適切に行おう
皮膚トラブルを起こしやすい要因としては、高齢者(75歳以上)、抗がん剤や分子標的薬治療を行っている、長期ステロイド薬を使用しているなどといった全身状態の要因と、乾燥、浮腫などの皮膚状態といったものが考えられます。
リスクアセスメントを適切に行うためには、『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』に掲載されている「個体要因のリスクアセスメント表」などが参考になります。
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・患者のリスクアセスメントを行う
トラブル対策②:適切な貼り方・剥がし方
以下のような、適切な貼り方や剥がし方を心がけるだけでなく、場合によっては、剥離剤や皮膜剤を使用するとよいでしょう。
●適切なテープの貼り方のポイント
1 テープはあらかじめ適切な長さに切っておく
2 中央部から外側に向けて、引っ張らないように貼付する。その際、しわが入らないように注意する
3 テープ貼付後は、指の腹でテープの上から優しく圧着し、なじませるようにする
* テープをあらかじめ切らずに端から引っ張って貼付すると皮膚に不要なひずみや緊張を与えてしまい皮膚トラブルの原因となるため、行わないようにする。
●適切なテープの剥がし方のポイント
1 テープは180°に折り返して剥がす。こうすることで皮膚にかかる加重を小さくする
2 剥がす際は、ゆっくりと剥がす。剥がす速度が速いと皮膚により加重がかかるため、注意する
3 皮膚が持ち上がると折り返す角度が浅くなってしまうため、持ち上がった皮膚を軽く押さえながら剥がすようにする
4 体毛の流れに沿って剥がすと、痛みを抑えることができる
剥離剤、皮膜剤を適切に使おう
【剥離剤】
剥離剤はテープなどの粘着製品を剥がす際に使用し剥離しやすくするだけでなく、剥離時の痛みの軽減にもつながります。剥離剤はその成分から大きく2種類に分けられます。それぞれの特徴と使用時の注意点を知っておきましょう。
●特徴
・オイル系の剥離剤
粘着剤に溶け込んで、柔らかくし、粘着力を弱めることで剥がしやすくします。粘着剤に吸収される時間が必要なため、ゆっくり作用します。剥がした後、オイルが皮膚に残るため、もう一度同じ部分にテープを貼付する際には、石鹸などでオイルをしっかりと除去することが必要です。
・シリコーン系の剥離剤
薄く広がりやすい特性があるため、粘着剤と皮膚のわずかな隙間にしみこんで、粘着製品を浮き上がらせることで、剥がしやすくします。オイル系と比較して、すぐに効果が得られます。皮膚を清拭するだけで、もう一度同じ部位にテープを貼ることができます。
●注意点
* 剥離剤を使用する際には、テープの端を少しめくってから皮膚と粘着製品の間にしみこませるように使用する
* 薄く広がるため、一度に大量に使用する必要はない
* 剥離剤は布や織布基剤などテープの正面からはしみこませない
* 可燃性のため、火器類の近くでの使用は避ける
【皮膜剤】
非アルコール性の皮膜剤は、低刺激の揮発性成分を使用しており、皮膚の上に薄い撥水性の皮膜を形成します。この皮膜の上にテープなどの粘着製品を貼ることができます。剥離時には、皮膜が優しく剥がれ、角質層の剥離などを減らすことができます。
また、皮膜剤を使用することで皮膚の浸軟対策にもなります。
注意点
* 皮膜剤を塗布したら、十分に乾燥させてからテープなどを貼付する
* 清潔操作が必要なカテーテル刺入部周囲などには、個包装の滅菌タイプを使用する
* 粘着製品を剥離した際には、皮膜も一緒に剥がれるため、再度、テープを貼付する場合は、皮膜剤も塗布し直す
* 可燃性のため、火器類の近くでの使用は避ける
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・使い方のコツ動画(テープ・剥離剤・皮膜剤)
トラブル対策③:院内で手技を統一する
院内のスタッフ全員が適切なテープの貼り方・剥がし方を行うことで、より患者さんの安全が守られます。そのためには、手技の標準化が必要です。継続的に院内のスタッフに対する研修や勉強会等を行い、適切な手技を伝えていくことが求められます。
【院内研修・勉強会で使用できる】
・院内教育動画
トラブル対策④:テープの特徴を理解し適切なテープ選択を行う
テープを貼る前に、患者のリスクアセスメントを行い、皮膚へのやさしさと固定性のどちらを優先するかを考えて、固定の目的に合ったテープ選択を行うことが大切です。
テープに使用されている粘着剤は、アクリル系・ゴム系・シリコーン系・ウレタン系の4つに分けられます。これらの特徴を知っておくと、患者の状況に合わせたテープ選択を行う助けになります。
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・粘着製品の特徴を理解して、用途に応じた製品を使用する
・他施設での製品使用事例
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【引用・参考文献】
日本創傷・オストミー・失禁管理学会,編:II.本邦におけるスキン-テアの実態.ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理.照林社,2015,p.12.