【連載】排尿自立指導料導入で増える!変わる!排尿ケアでできること
第4回 包括的排尿ケアを実践しよう!|病棟看護師に求められる排尿の管理とケア②
- 公開日: 2018/8/19
排尿ケアにおいては、所属する医療機関や病棟によって実践されている内容が異なることが少なくありません。ここからは、排尿自立指導の導入時にも必要とされるアセスメント・評価とケアの実際について、埼玉医科大学国際医療センターの実践をもとに具体的方法を解説します。
環境整備と排泄関連用具の選択
療養環境の整備
自力での歩行が可能な場合や、軽介助でトイレに行けるようであれば、できる限り自立排泄を行えるように援助します。このとき、「間に合わなかった」「我慢できなかった」といった排泄の失敗により、患者さんの尊厳や意欲を奪ってしまうことがないように、療養環境を整備することが大切です。トイレまでの距離が遠い場合には、病室をトイレの近くに変更する、廊下を明るくする、また、便器が使いにくいなら、使いやすい種類のものに変える、トイレに手すりをつけるなどの工夫が考えられます。
個室においては、ベッドの配置を変えて、トイレまでの距離ができるだけ短くなるように環境を整えます(図3-6変更後①)。転倒・転落の可能性がある場合もベッドの配置を変えるなど、調整を行いましょう。ポータブルトイレを置く場合も同様です(図3-6 変更後②)。
Column 姿勢の保持は?
快適に排尿を行うには、安定した座位が必要です。膀胱に対して尿道がストレートになること、骨盤は前後傾中間位になることで自然な腹圧がかかり、無理にいきむことなく排尿することができます。座位姿勢が保てない場合は、排尿時に体幹を伸展位に保つことができるようにします。
尿失禁管理製品の選択と使い方
オムツ
患者さんの体格やADL、排泄の状態をアセスメントしたうえで、オムツの種類やサイズ、尿とりパッドを選択します。歩行ができて、下着の上げ下ろしも可能な患者さんには、通常の下着を着用するようにします。この場合、失禁にはオムツではなく、尿とりパッドのみを使用します。また、座位が取れるようであれば、日中はパンツ型のオムツを選択しますが、夜間は両サイドにも吸収材が入っているオムツのほうがよいということもあります。
オムツや尿とりパッドにはさまざまな吸収量のものがあるため、患者さんの尿量に合わせて選ぶことも大切です。
装着型収尿器
尿失禁を少量ずつ認めている男性で、寝返りができないなど身体の動きに制限のある場合には、介護負担の軽減のために、コンドーム型収尿器やシース型収尿器の使用を検討します(図3-7)。これらは装着がしやすく、比較的激しい動きにも対応が可能です。ただし、24時間以上の連続使用ができず、陰茎のかぶれなどの皮膚トラブルに注意する必要があります。
当院で紹介しているコンドーム型収尿器は、シリコン素材で内側部分に接着剤がついたタイプで、激しい動きにも対応できるのが特徴です。シース型収尿器は、シースを陰茎にかぶせて、巻き上げ紙(フラップ)を引くだけで装着できるものを紹介しています。
骨盤底筋体操の進め方
骨盤底筋群は骨盤の底にあり、恥骨から尾骨までの間をハンモックのように下から支えています(図3-8)。尿道や肛門を締める働きをする筋肉で、加齢や出産により筋肉の機能が低下することで、尿を我慢しにくくなり、尿漏れや頻尿を引き起こします。
また、大腸の手術を行うことでも、筋肉の機能が低下することもあります。そのため、骨盤底筋体操などのトレーニングを継続して行っていく必要があります。
骨盤底筋体操は尿失禁の症状の改善と悪化予防を目指し、速筋・遅筋を鍛える目的で、朝・昼・夕・寝る前に10回ずつ行います(図3-9)。
間歇的自己導尿の進め方
間歇的自己導尿とは、尿道口からカテーテルを挿入し、決まった時間に膀胱に溜まった尿を排泄させる方法です。排尿後、膀胱の中に30mL以上の残尿があると、細菌感染や腎障害を引き起こす可能性があります。そのため、残尿がある場合は最後の1滴まで排尿することが大切です。
患者さんには、必ず清潔な手指で導尿を行うこと、指導された時刻に確実に導尿すること、排尿日誌(飲水量、自力の排尿量、導尿した尿量)を必ずつけること、自己判断で中断しないようにすることを伝えます。いつまで導尿を続けるかは、排尿日誌で排尿状態を確認したうえで、主治医と相談しながら決定します。当院では、男性用と女性用のパンフレットを作成し、それをもとに指導を行っています(図3-10)。
排尿誘導の進め方
排尿誘導は、排尿行為の回復や排尿習慣の再獲得などを目的に行います。「排泄」は基本的欲求の一つであり、自分で排泄することは、どのような状況になってもすべての人が望むことです。その希望を実現するためには、PT・OTといった他職種の介入が必要です。介入後、看護師より具体的なリハビリテーションの内容について提案します(図3-11)。
排尿誘導を行う場合は、排尿日誌で患者さんの排尿パターンを把握し、時間ごとがよいのか、朝・昼・晩でよいのかなど、間隔や回数を決め、パターンに沿った誘導を行います。頻回に尿意を訴えながら1回の排尿量が少ない患者さんでは、泌尿器疾患が原因で頻尿になっている可能性もあります。その場合には、泌尿器に問題がないかどうかも併せて確認しましょう。また、尿意のサインとなる行動は見逃さないようにしましょう。
尿意が全くない患者さんに対しては、初めに固定した規則的な間隔で排尿誘導をしてパターンを見極めるという方法があります。排尿日誌をつけ、そのときに排尿量がどの程度あるかによって誘導時間を決めます。基本的に1回の排尿量は500mLを超えないようにし、500mL以上の排尿があった場合には一定間隔より早く誘導します。反対に100mLほどであれば、もう少し間隔をあけて誘導するといったように、排尿日誌をもとに考えることも必要です。
当院では、尿意がない患者さんには、日常生活リズムに合わせて、起床時、食事の前後、就寝前、夜間1回程度のトイレ誘導を組み込んでいます。トイレ誘導は転倒・転落が一番起きやすい場面なので、患者さん・医療者ともに注意する必要があります。
埼玉医科大学国際医療センターでの実践
1.適切な尿失禁ケアを行うために共通認識をもとう!
当院でのオムツ管理は、入院の際に、自宅から持参するか、院内採用のオムツを使用するかを患者さんや家族の意向で決めます。当院のオムツは、テープ式(M・L)、フラットオムツ(1000mL吸収用)、尿とりパッド(500mL)を採用しています。
適切なオムツの使用方法については、褥瘡対策委員会において病棟褥瘡専任看護師を対象に勉強会を月1回開催し、併せて演習を行っています。また、専門・認定看護師管理センターより、隔月で全スタッフに向けて発行している「かんごなはなし」にもケアに関する記事を取り上げて啓発しています。
2.病棟で培った排尿管理を在宅へつなげる!
当院では退院後の排尿自立支援として、「総合相談センター・がん相談支援センター」に常駐する医療ソーシャルワーカーや退院調整看護師と連携し、排尿関連福祉用具を患者さんや家族に紹介しています。同センターは地域連携を中心とした診療支援の窓口で、患者さんが安心して在宅での生活に帰ることができるよう、福祉用具の相談も行っています。
3.ケアバンドルによるバルーン留置の取り組み
当院では、感染管理認定看護師よりバルーン留置のためのケアバンドルが提示され、院内でのバルーン留置はこの基準に沿って行っています。ケアバンドルはスタッフの目につきやすい手洗い場や電子カルテの横などに提示し、さらにネームプレートの中に「膀胱留置カテーテルの適応」を入れて常に確認しています。抜去適応の患者さんについては、主治医とカンファレンスを行い、早期抜去を目指します。
参考文献
●鈴木康之,編:排尿自立指導料の実際.WOC Nursing 2017;5(1):p.22-30.
●谷口珠美,他:下部尿路機能障害の治療とケア,病態理解と実践に役立つ.泌尿器Care & Cure Uro-Lo 別冊 2017.
●日本創傷・オストミー・失禁管理学会,編:排泄ケアガイドブック-コンチネンスケアの充実をめざして.照林社,2017.
この記事はナース専科2017年6月号より転載しています。