【連載】排尿自立指導料導入で増える!変わる!排尿ケアでできること
第5回 介入事例から排尿管理を考えよう!|病棟看護師に求められる排尿の管理とケア③
- 公開日: 2018/8/26
「排泄」は患者さんにとって羞恥心を伴うものであり、それを他人に委ねる「排泄ケア」は看護技術の基本であるとともに、患者さんの尊厳を守るとても重要なケアに位置づけられます。よりよい排尿ケアを実現するためには、他職種や家族と連携をとりながら排尿ケアの「質の向上」が実現できるように取り組んでいくことが大切です。
さまざまな困難例もありますが、皮膚・排泄ケア認定看護師(以下、WOC)を中心とした排尿管理の症例から、どのように介入していけばよいのかを考えてみることにしましょう。
症例1 家族への導尿指導
患者さんの背景:30歳代男性・Aさん 腹腔鏡下高位前方切除術施行後、膀胱留置カテーテル抜去後に尿閉となり介入。
Aさんには知的障害がありますが、排尿管理は自立していました。術後、尿閉となり、看護師による導尿を行いました。その後も自尿はあるものの残尿量が多く、導尿が必須な状態で、入院中は、起床時、昼前、夕食前、寝る前、午前0時に導尿を実施。退院後は、自己導尿が困難であるため、キーパーソンである父親に導尿指導を行うことにしました。
場面1
看護師:これまで導尿で排尿管理を行ってきましたが、残尿量が多いので引き続き導尿が必要です。退院後もご自宅で導尿を行うことになります。
父親:そんなはずはない! 今も出ているし、絶対出るから! 2時間ごとでもトイレに誘導します。
WOCによるアセスメント&介入プラン
病棟スタッフから父親の導尿に関する受け入れができないという相談があり、WOCによるコンサルテーションとなりました。病棟スタッフとの会話から、父親は自尿がある中での導尿の必要性に疑問があるようです。入院中のケアとしては、Aさんが自力排尿後、病棟スタッフが導尿して残尿量を確認し、排尿日誌をもとに導尿回数を設定しています。
場面2
WOC:息子さんには導尿が必要なようですね。
父親:これまでも失禁することなくできていたし、大丈夫だと思います。管を入れるなんて信じられません!
WOC:そうですね。でも、残尿があると生命にかかわることもあるんですよ。
(パンフレットを用いて説明)
父親:……そうですか。管を入れるときに痛そうな顔をするのでそれを見るのがつらいんです。知的障害がありますが、せめて排泄だけは他人の世話にはならないようにと思い、子どものころからトレーニングをしてきたんです。わかりました。やってみます。
WOC:お父さんのお気持ちはとてもよくわかります。導尿はどんな方でもできる手技です。難しいことはありませんから、お父様も頑張ってみてくださいね。それでは、今日から排尿日誌をつけていただいて、外来時にそれをご持参ください。主治医より導尿終了の指示があるまで排尿日誌は継続してくださいね。
WOCによるアセスメント&介入プラン
一過性の尿閉のため、まずは家族に間歇的自己導尿の必要性を理解してもらうことが重要です。排尿ができなくなると膀胱が尿でいっぱいになり、その結果、膀胱内の圧力が高まって腎臓に逆流し、腎機能に障害を与えることになります。30mL以上の残尿があると細菌感染を起こす可能性があります。
キーパーソンとなる父親には排尿日誌のつけ方と間歇的自己導尿の手技を指導します。併せて医師の指示があるまで導尿を続ける意義を必ず伝えるようにします。
場面3
父親:残尿がだんだん少なくなって、今では0mLです。自尿もあります。
WOC:頑張りましたね。記録上も残尿がなくなりましたね。
(主治医からも導尿の終了が伝えられる)
WOCによるアセスメント&介入プラン
残尿がなくなったため、間歇的自己導尿は終了となり、介入も終了とします。
症例2 ADLの状況に合わせたオムツの選択
患者さんの背景:60歳代女性・Bさん 脳梗塞を発症後、寝たきり状態となりADLに介助を要する状態。
意識レベルはクリアであり、PT・OT介入後、歩行可能となりました。終日、テープ式オムツの上に尿とりパッドの重ねづけをしており、病棟スタッフより陰部のスキントラブルに関するコンサルテーションを受け、介入となりました。
場面1
WOC:尿意はありますか?
Bさん:ありますよ。最近はトイレに行くようにしています。でも、お漏らしして看護師さんに迷惑をかけるのでパッドをお願いしています。
WOC:パッドは1枚にできませんか?
Bさん:漏らすのが心配なの。
WOC:パッドの重ねづけはおしりのただれの原因にもなるので、1枚にしてはどうですか?尿とりパッドの種類は尿量によっていろいろあるんですよ。夜用と昼用を分けて使用してはどうでしょう?昼間だけでもパンツ式に変えてリハビリの一環にするのもよいと思いますよ。
Bさん:そうね。リハビリになるのなら変えてみようかしら。
WOCによるアセスメント&介入プラン
スキントラブルの原因は、失禁への不安による尿とりパッドの重ねづけの使用による浸軟と考え、治療的スキンケアの指導を行うことが必要です。またADL拡大に向けて排尿自立の一環として日中のリハビリパンツの使用を提案。PT・OTにトイレ動作のリハビリ訓練強化を依頼し、連携してケア介入を行います。
場面2
(介入後)
WOC:その後、トイレには行けていますか?
Bさん:トイレが1人でできるようになったのよ。トイレだけでも1人でできるってうれしいわ。
WOCによるアセスメント&介入プラン
排尿自立となったことで、Bさんの失禁に対する不安がさらに軽減されれば、一般的な下着への変更も可能になります。今後は、退院後の自宅での排尿管理に関する相談についても、他職種と連携して継続的に受けていくようにします。
症例3 尿失禁管理製品による介護負担の軽減
患者さんの背景:50代男性・Cさん 脳出血・脳梗塞を発症後、水頭症を認め、VPシャントを造設。
現在は訪問看護にて在宅療養中。妻より、夜間の排尿管理が大変なので、何かよい方法はないかと相談を受けました。
場面1
看護師:介護が大変そうですね。
妻:自営業をしながら介護をしています。夫は夜間の排尿が多いので、2~3時間おきにオムツ交換をしています。昼夜問わない仕事なのでオムツ交換だけで大変です。
WOCによるアセスメント&介入プラン
妻一人にかかっている夜間の排尿管理の負担を早急に軽減する必要があります。ここではWOCからオムツの変更ではなく、失禁した尿をウロガードでキャッチできるシース型収尿器を紹介し、使用方法を指導しました。尿失禁管理製品の適応は、このほかにもオムツの使用時に起こるごわつき感の軽減、オムツのコスト削減があります。ただし、収尿器は直接陰茎につけて使用するものなので、理解を得られないと使用が難しくなります。
場面2
WOC:夜間は少し楽になりましたか?
妻:今は夜だけ収尿器を使用しています。おかげで自分の睡眠が確保できるようになりました。
WOCによるアセスメント&介入プラン
尿失禁管理製品を使用したことで妻の介護負担が軽減できました。収尿器の使用時では、尿により陰部の浸軟を生じるため、スキントラブルの原因となります。継続使用を考え、今後はスキントラブルの確認をしていく必要があります。1日1回の陰部洗浄を行い、収尿器は1日1回の使い捨てが基本です。使用時の留意点についても家族に説明し、理解を得る必要があります。
参考文献
●鈴木康之,編:排尿自立指導料の実際.WOC Nursing 2017;5(1):p.22-30.
●谷口珠美,他:下部尿路機能障害の治療とケア,病態理解と実践に役立つ.泌尿器Care & Cure Uro-Lo 別冊 2017.
●日本創傷・オストミー・失禁管理学会,編:排泄ケアガイドブック-コンチネンスケアの充実をめざして.照林社,2017.
この記事はナース専科2017年6月号より転載しています。