水溶性食物繊維グアーガム分解物粉末摂取による医療従事者の排便状況調査【PR】
- 公開日: 2019/5/7
はじめに
グアーガムは、インド・パキスタン地方で栽培されているグアー豆からとれる水溶性食物繊維です。これを酵素で分解し、粘度を低下させて食品加工性を高めたものをグアーガム分解物(PHGG)と呼んでいます。PHGGの作用については先行研究1)があり、便秘傾向にある健常者がPHGG5.2g/日を摂取したところ、排便回数・量が摂取前より有意に増加しています。
今回は、医療従事者を対象に、PHGGの摂取が排便状況にどのような影響を及ぼすか調査を行いました。医療従事者は、夜勤をはじめ多様な勤務形態をとるため、生活リズムを整えるのが難しい環境にあります。そのような中で、PHGG摂取が排便にもたらす変化を解析しました。本調査は倫理的配慮として匿名性を保障し、協力者の同意を得て実施しました。
調査のあらまし
看護師向けの情報サイト「ナース専科PLUS」内で、医療現場で用いられている食物繊維グアーガム分解物粉末食品を、実際に摂取する体験モニターを募集しました。参加者は、医療機関に勤務する20 ~ 60歳代の健常者408人(女性384人、男性24人)、職種は看護師294人、薬剤師1人、栄養士26人、介護士3人、その他84人でした。
調査時期は2018年3月で、食物繊維PHGG粉末食品(PHGG5.2g含有)を1日1回2週間摂取し、摂取前の1週間と合わせて3週間の排便状況を自己記録しました。記録方式は、排便記録アプリ「ウンログアプリ」(ウンログ株式会社)または紙の排便日誌のいずれかを用いました。アプリで記録した群は、摂取後1週間の排便記録とWEBアンケートを実施しました。
主要評価項目は便性状で、排便1回ごとにブリストルスケール(BS)を用いて7段階で評価しました。副次評価項目には1日あたりの排便回数のほか、排便1回ごとに排便量、便の色、便のにおい、残便感を数値化して評価しました。さらに毎日の下剤使用の有無を記録し、排便に関する自覚症状を100点満点で毎日自己採点しました(表1)。
表1 評価項目
便性状の変化―ブリストルスケール(BS)
期間中の排便回数は、PHGG摂取前1週間が延べ2469回、摂取中2週間が延べ5162回でした。摂取前1週間と摂取中2週間におけるBSによる便性状ごとの全排便回数に対する割合は、かたい便(BS1-2)は減少、正常便(BS3-5)は増加、ゆるい便(BS6-7)は減少傾向が見受けられました(図1)。さらなる解析として、被験者の1日ごとのBS平均値を1以上2未満、3以上4未満のように7群に分け、群ごとにBS平均値を算出。摂取前1週間と摂取中2週間で比較したところBS3-5の範囲に収束していく傾向がみられました(図2)。
図1 便性状ごとの全排便回数に対する割合
図2 摂取前後のブリストルスケール(BS)
排便回数・排便量・その他の変化
1日あたりの平均排便回数は、PHGG摂取前0.86回/日、摂取中0.90回/日で、摂取中は有意に排便回数が増加しました(p<0.05)。
1日平均排便量は、複数回排便の場合は2+1=3のように合計値を用いて平均化しましたが、PHGG摂取前1.67から摂取中1.73と有意に増加しました(p<0.05)。
便の色は、1日に複数回排便した場合は(3+4)÷2=3.5のように平均値を用いて数値化しました。便の色の平均値は、PHGG摂取前3.97から摂取中3.90へ、つまり淡い色へと有意に変化していました(p<0.05)。
便のにおい、残便感については、PHGG摂取による有意差はみられませんでした。
腸内環境の主観評価として、毎日の排便について、0 ~ 100点で自己評価した点数は、PHGG摂取前の平均46点から、摂取中は62点へと有意に上昇し、主観評価が向上していました(p<0.05)(図3)。
図3 排便に関する自己点数評価
下剤服用者は49人いました。このうち期間中に記録漏れがみられなかった18人を対象に、毎日の下剤使用1、未使用0で数値化した数値を、PHGG摂取前1週間と摂取中2週間の平均値で比較しました。18人のうち、摂取中にこの平均値が下がり、下剤の使用回数が減ったのは9人、増えたのは4人、変化なしは5人でした(図4)。
図4 摂取前と摂取後の下剤使用量の変化
おわりに
調査前の段階で、医療従事者は、交代勤務などの不規則な勤務形態により腸内環境が乱れ、便秘ぎみで下剤の使用者も多いのではないかとの仮説がありました。実際にはPHGG摂取前の時点で、すべての排便のうちBS3- 5の正常便は68.69%にのぼり、排便に問題のない層が多くを占めていました。下剤使用者は408人中49人でしたが、当初はもっと多いと予測されました。今回の被験者は、看護師の業務や学術情報サイトの読者会員であったため、日頃から排便に対する意識の高い層が集まったことが推測されます。
今回の調査では、PHGG摂取により、摂取前と比べ1日あたりの排便回数、排便量が増加し、便の色も淡い色味に変化していきました。排便に関する自己評価の点数も高くなり、客観評価にとどまらず、主観評価にも好影響を与えました。
アプリ記録群の摂取後WEBアンケートでも、PHGG粉末5.2gが1スティックになっている簡便さや、溶けやすく、味にくせがなく利用しやすいことが評価されました。
最後に調査に参加してくださった方々に、ご協力を深く御礼申しあげます。
COLUMN 食物繊維の可能性と臨床での活用ーNPO法人 日本コンチネンス協会 会長 西村かおる先生ー
便秘には客観症状と主観症状にずれ
排便、特に便秘においては客観症状と主観症状にずれがあります。便秘とは診断されていないのに、すっきりとしないと感じている人は少なくないようです。このような場合、医療従事者はどのように対応しているでしょうか。「気のせいだ」「排便があるなら大丈夫」などと、そのままにしてはいないでしょうか。今回の調査では、食物繊維摂取により排便の自己評価が有意に上昇し、気持ちのよい排泄が実現したともいえます。快適な排便の実現のためには、便秘(あるいは下痢)か否かだけをみるのではなく、その人が感じている不快感やつらさを和らげるためのケアにも目を向けることが大切です。
食物繊維も排便コントロールの選択肢に
臨床現場では、患者さんが便秘傾向にあるときは往々にして下剤での対応になりがちです。しかし、近年では食物繊維の種類を選ぶこと、摂取量を増やすことによる便秘改善の可能性が注目されています。
医療従事者の皆さんは、病院食に食物繊維がどれだけ含まれているか、管理栄養士が1日の食物繊維量を何gに設定しているか意識しているでしょうか。患者さんから排便についての訴えがあったときは、食物繊維の摂取量が十分であるかもアセスメント項目の一つに加えてみてください。便秘=下剤ではなく、食物繊維摂取量にも着目し、排便コントロールの方法を探っていくことが重要です。
引用文献
1)中川致之ほか:健康・栄養食品研究.2008;11(2):1-14