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基礎から臨床まで・病診連携への役割|第56回日本臨床生理学会総会レポート

  • 公開日: 2019/12/2

 日本臨床生理学会の第56回総会が、「最新臨床生理学:基礎から臨床まで・病診連携への役割」をテーマに、2019年10月26日(土)〜27日(日)大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)で行われました。
 今回は、26日(土)に行われた「看護領域」のシンポジウムの様子をご紹介します。


生理検査の基礎や研究、臨床での活用を学び病診連携への役割を考える

 領域や職種を問わず、さまざまな分野の専門家が参加する日本臨床生理学会。臨床生理や病態などを中心に、専門的な観点から掘り下げるだけでなく、いくつかの分野にわたる研究・考察を行っており、その総会は、普段交流することの少ない異なる領域の専門家たちが、発表や意見交換を行う貴重な機会となっています。

 このたび行われた第56回のテーマは「最新臨床生理学:基礎から臨床まで・病診連携への役割」。病診連携を支えるうえで伝送心電図などの生理検査にも役割の変化がみられるいま、あらためて生理検査の基礎から理解を深め、有効活用することによる病診連携を考えていこうというものです。

 看護領域のシンポジウムでは、座長に村山のぞみ先生(防衛医科大学看護師長・救急看護認定看護師)と鞆総淳子先生(獨協医科大学埼玉医療センター師長)を迎え、教育講演と多様な視点から考察した4つの演題が発表されました。


シンポジウム:看護領域

座長:
村山のぞみ先生(防衛医科大学看護師長・救急看護認定看護師)
鞆総淳子先生(獨協医科大学埼玉医療センター師長)

教育講演:看護師として資格制度をどう活用するか
浅香えみ子先生(獨協医科大学埼玉医療センター看護部)

腹部手術を受けた患者における術後せん妄と血清BDNFとの関連
高畠孝児先生(北部地区医師会北部看護学校)

心臓リハビリテーションを施行した─患者のセルフケア能力と入院期間の関係─
獨協医科大学埼玉医療センター看護部 齋藤恭子先生

心不全患者の抑うつ・不安が心理・社会的要因に及ぼす影響の検討
森川みゆき先生(獨協医科大学埼玉医療センター看護部)

心不全患者における急性期病院看護師と地域診療所看護師および訪問看護師の生活支援状況
岩尾雅子先生(獨協医科大学埼玉医療センター看護部)


ここでは教育講演と2つの演題についてご紹介します。

教育講演:看護師として資格制度をどう活用するか

演者:浅香えみ子先生(獨協医科大学埼玉医療センター看護部)

 講師の浅香えみ子先生は、看護師がさまざまな資格制度をどのように捉え、活用していけばよいかについて話をしました。

 看護師には、現在多くの団体・学会によって多様な資格制度が整えられています。そしてそれに対し「国家資格に基づいて専門的能力が認められているのだから、さらに特定の看護実践能力を示す資格が必要なのか」と疑問をもつ人は少なくないといえます。

 このような人に向け、浅香先生は「まずは看護師としてのこれからのライフサイクルやキャリアビジョンに目を向けることが大切だ」と述べています。健康であれば、いまや75歳まで現役で働き続ける時代です。看護師も例外ではなく、そのためにはどのように働き続けるかを計画的に考えることが重要になるといいます。

 「看護師としての自らの人生設計のなか、ステップアップを求めるとき資格は学ぶための有効なツールになります。さらに、一歩前に出なければならない場面では何よりの強みなります。そのとき自分が何をもてばよいのかを考え、もつべきもの(資格)をもつという姿勢が、前向きに頑張るサイクルへと結びついていくと思います」と浅香先生。資格を取得することが、同じ分野に関心をもつ仲間を引き寄せ、ネットワークを強めてくれると話し、さらに、看護師として自分のやりたいことをやり続けられる人生を送るためには、資格の活用がキーワードとなるとしました。

腹部手術を受けた患者における術後せん妄と血清BDNFとの関連

演者:高畠孝児先生(北部地区医師会北部看護学校)

 BDNF(脳由来神経栄養因子)は、神経細胞の発生や成長などにかかわるタンパク質で、さまざまな生理作用が報告されており、近年ではうつ病や認知機能障害にも関連しているとされています。講師の高畠孝児先生は、これに着目し、術後せん妄との関連を調べることにしました。

 調査は、同意の得られた31名の腹部手術を受ける患者さんに対して行われました。高畠先生らは、血液生化学データとICU看護師によるせん妄の評価結果を収集し、同時に術後8時間ごとにせん妄の評価と症状の観察を続けました。

 その結果、31名のうちの4名にせん妄の症状がみられました。過活動型せん妄が3名、低活動型せん妄が1名で、いずれの症例でも血清中のproBDNFの濃度が増加していました。特に、低活動型1名の増加は著しいものでした。proBDNFとはBDNFの前駆体(成熟する手前の段階)のこと。成熟型BDNFとは反対の作用を引き起こすことがわかっています。

 高畠先生は「今回の調査は症例数も少なく、結論に結びつけることはできませんが、症例数を増やし、BDNFにせん妄のバイオマーカーとしての可能性を探っていきたいと思います」と述べました。

心臓リハビリテーションを施行した─患者のセルフケア能力と入院期間の関係─

演者:齋藤恭子先生(獨協医科大学埼玉医療センター看護部)

 講師の齋藤恭子先生は、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)を行っている患者さんのセルフケア能力と入院期間の関係を調査・分析しました。調査で得た結果から患者教育の方向性を見出すことを目的としています。

 セルフケア能力を査定する質問紙(SCAQ)を使用し、心リハ導入時と退院時の患者さんのセルフケア能力の実態を調査しました。SCAQは、「健康に関心を向ける能力」「選択する能力」「体調を整える能力」「生活の中で続ける能力」「支援してくれる人をもつ能力」という5つの構成能力からなる全30項目の質問紙です。

 調査に対する同意が得られ、調査用紙のすべてに回答があったのは23名。SCAQの5つの構成能力すべてで退院時の点数が高くなっており、特に7項目で有意差がみられました。また、入院1カ月以上群が入院1カ月以下群よりも3つの構成能力で有意差がありました。これらのことから、心リハによる介入がセルフケア能力に影響を与えていることがうかがえました。

 齋藤先生は「入院期間が1カ月以下よりも1カ月以上のほうに有意差があったことから、継続することが必要だと考えられます。入院期間が短縮化する現状のなか、継続して心リハを行うためには、外来でいかに介入できるかが課題になると思います」と結びました。

日本臨床生理学会(JSCP)

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