【図解】洗髪の手順とコツ|ケリーパッド、洗髪車、洗髪台、頭部清拭〜根拠がわかる看護技術
- 公開日: 2025/5/28
看護師が洗髪を行う意義
清潔ケアの1つである洗髪は、看護師だけが行える技術ではありませんが、このケアを看護師がやる意義は2つあると思います。1つは、その部位の観察ができること。観察するためには、医学的知識が必要で、看護師ならではの視点も求められます。
もう1つは、看護師が洗髪を行うことで、患者さんは看護師が自分の身体に関心をもってかかわってくれていると実感できることです。清潔にすることで患者さんに安心・安楽を提供することもできます。
洗髪の目的と根拠
1,清潔を保つ
頭皮には皮脂腺が多く、そこから分泌される皮脂や汗で汚れやほこりがつきやすくなっています。また、皮脂によりかゆみや、不快を感じることもあります。
皮脂成分のトリグリセリドは、分解され遊離脂肪酸となりますが、遊離脂肪酸には起炎性があり炎症の原因になるとされています1)。 洗髪により頭皮や頭髪を清潔に保つことで感染を予防します。
2,頭皮の血行促進
頭皮には毛髪に栄養を行き渡らせるための血管が多く存在していますが、疾患や治療による行動制限がある(ベッド上安静など)患者さんは、頭皮の血流が滞りがちです。洗髪時に頭皮をマッサージすることで、頭皮の血流が改善することで栄養を行き渡らせ、頭髪も健やかな状態に保つことができます。
3,精神的な安定
洗髪により清潔な頭髪を保つことは、患者さんの快適さと精神的な支えになります。洗髪後に頭髪の手入れを行い身だしなみが整うことで、気分や自己評価を向上させ活力や意欲の向上にもつながります。また、洗髪時の頭皮のマッサージにはリラクゼーション効果もあり、ストレスや疲労感の軽減にも役立ちます。
洗髪には、清潔の保持だけでなく精神的な安楽をもたらす効果もあります。特に臥床時間の長い患者さんにとって、洗髪時のコミュニケーションや頭皮マッサージ等によるストレス軽減は、療養生活に対する意欲や自尊心の維持にもつながる大切な役割を担うのです。
洗髪の頻度
頭皮から分泌される皮脂であるトリグリセリドは洗髪後72時間を過ぎると遊離脂肪酸のほうが多くなり、かゆみや不快感が増すという報告があります2)。適切な洗髪の頻度は患者さんの状態や環境によって異なりますが、臨床の場面では通常は週に1〜2回程度が一般的です。
洗髪の援助の適応
洗髪の援助は、洗髪習慣がある方が疾患や外傷など何らかの理由で入浴が制限されている、もしくは自身で洗髪が困難な場合などに実施します。洗髪を行う際は、患者さんの全身状態などの情報をもとにアセスメントを行い、適した洗髪方法を選択する必要があります。
<確認項目>
・バイタルサイン
・頭部の皮膚や頭髪の状態
・基礎疾患
・安静度
・可能な体位
・洗髪習慣 など
表 洗髪方法の適応例
床上 | 洗髪台(座位) | 頭部清拭 |
・頭皮に創傷がない ・前屈や後屈が難しい ・頭部の安静が必要 ・座位保持が困難 |
・頭皮に創傷がない ・前傾姿勢あるいは後屈が可能 ・座位姿勢がとれる ・温水や水流の刺激に耐えられる |
・創傷がある ・温水を用いた洗髪が困難 ・衰弱が激しい |
洗髪の手順
Ⅰ.床上でケリーパッドを用いて洗髪を行う場合の手順
必要物品
・ケリーパッド
・温水入りバケツ(42℃前後)
・差し湯(60℃ほどの湯をピッチャーなどに用意)
・温度計
・バスタオル
・タオル
・ガーゼ
・肩枕・膝枕
・防水シーツ
・ケープ
・ヘアブラシ
・汚水用バケツ
・新聞紙
・ピッチャー(シャワーボトル)
・シャンプー・リンス・トリートメント
・ドライヤー
・鏡
・ゴミ袋
必要に応じて:耳栓、手袋、エプロン、マスク
準備
1.必要物品をワゴンに揃える。
2.42℃の湯と60℃前後の差し湯を、それぞれバケツやピッチャーに用意する。
3.看護師は、名札や時計など援助の際に患者さんと接触することで事故につながる物品は外す。必要に応じてマスク・手袋・エプロンなどを着用する。
実施
1.患者さんの準備を行う
・患者さんに洗髪の実施を伝え、了承を得る
・全身状態の観察を行い、床上での洗髪が可能な状態かをアセスメントする
・排泄の意思があれば先に済ませていただく
2.環境を調整する
・プライバシーが保たれるよう、ブラインドやカーテンで仕切る
・洗髪がスムーズに行えるようベッドや床頭台の位置を整える
3.患者さんの体位を調整する
・洗髪介助がしやすいよう、患者さんの頭部をベッドサイドに寄せる

・安楽な体位で洗髪が行えるよう、膝の下に膝枕を入れて腹部の緊張を緩和させる
4.防水シーツを敷く
・ベッドの上部に防水シーツを敷き、その上にバスタオルを重ね、ベッドマットの汚染を防ぐ

5.患者さんの首にタオルとケープを巻く
・寝衣汚染を防ぐため、タオルを患者さんの首に巻く

・ケープは下に巻いたタオルが出ないように巻く

・患者さんに苦しくないか確認する
6.ケリーパッドを敷く
・頭部や頸部の位置、苦痛の有無を確認しながらケリーパッドの空気圧を調整する
・必要に応じて肩枕や折りたたんだタオルなどで肩の高さを調整する

7.排水路をつくる
・ケリーパッドの先端を汚水用バケツに入れ込む
・汚水がスムーズに流れ込むようにケリーパッドにくぼみをつける
・汚水用バケツの下に新聞紙を敷き床の汚染を防ぐ

8.ブラッシングする
・ブラッシングしながら頭皮や毛髪の状態を確認する
※毛髪についた汚れを落としたり毛髪の絡まりをほぐしたりすることで、シャンプーの使用量を抑えることができます。
9.ピッチャー(シャワーボトル)で湯をかけ頭髪を濡らす
・まず、患者さんに湯の温度確認を行う
・その際、湯が直接頭皮にかからないように手を添えながら少量かける
・温度に問題がなければ髪全体に回しかける
・かける湯量が調整しやすいよう、ピッチャーの持ち手に手をとおして、ピッチャーの本体を手のひらで抱えるようにして持つ
10.髪を洗う
・シャンプーを適量手に取り、指の腹を使って洗う

・汚れが強い場合は、一度洗い流し再度シャンプーを行う
・洗う強さ、洗い足りない部位、かゆみや痛みの有無などを患者さんに確認する
※後頭部を洗う際は頭部を左右どちらか一方に傾けるようにします。ケリーパッドから頭部を浮かせ保持する場合に比べ、患者さんや看護師にかかる負担が抑えられます。
11.泡を取り除く
・手のひらやタオルで髪全体を包み、泡を取り除く
・取り除いた泡は汚水用バケツに入れる
※泡を取り除くことで、すすぎにかかる時間や湯量を抑えられます。
12.すすぐ
・湯温が低い場合は適宜差し湯で調整する
・排水路の反対側からすすぐ
・湯をかける際は生え際や首に手を添え、顔や肩に湯がかからないように配慮する
・洗い残しがないか確認し、手で髪を絞って水分を取り除く
・患者さんの希望に応じてリンスやトリートメントを行う
※排水路側→反対側の順に洗うとすでに洗い流した部位に再度シャンプー剤がかかってしまいます。このような再汚染を防ぐため、排水路と反対側からすすぎを行います。
※耳介周辺や後頸部はすすぎ残しが多い部分です。ふけ・かゆみ・湿疹の原因となるため注意しましょう。
13.タオルで髪をくるみケリーパッドを除去する
・ケープを外し、ケリーパッドをずらして縁に頭部をのせる

・首に巻いていたタオルで髪を包み込む

・ケリーパッドを取り外し、汚水用バケツにまとめる
※ベッドに敷いたバスタオルができる限り濡れないように、ケリーパッドを除去する前に髪をタオルで包みます。これは、バスタオルが濡れていることで患者さんが不快感を抱かないようにするためです。

14.髪の水分を拭き取りドライヤーで乾かす
・ドライヤーをかける前にタオルである程度の水分を拭き取る
・耳介に残った水分も拭き取り、耳栓を使用している場合は外す
・ドライヤーをかける際は熱傷予防のため頭皮から10cm以上離す
15.身辺を整える
・バスタオル・防水シーツを外す
・寝衣や寝具が濡れていないかを確認し、必要に応じて更衣や寝具交換を行う
・患者さんをベッド中央に戻す
・肩下や膝下に入れていたタオルや枕をとり、体位を調整する
・ケリーパッドや汚水用バケツを片付け、床が汚れている場合は清掃する
16.記録と物品の片付け
・患者さんに洗髪が終了したことを伝える
・疲労度・気分不良などの有無を確認する
・必要に応じてバイタルサインを確認する
・ケリーパッド、ケープ、ピッチャー、バケツ類を洗う
・看護記録を行う
Ⅱ.洗髪車を用いて床上で洗髪を行う場合の手順
必要物品が洗髪車にまとまっているため、準備や片付けにかかる負担が軽くなります。床上で行う場合、基本的にはケリーパッドの洗髪手順と同様です。座位で実施する場合は、次の「Ⅲ.洗髪台を使用し洗髪を行う場合の手順」を参照してください。
必要物品
・洗髪車(清水槽に温水を入れておく)
・タオル
・バスタオル
・ガーゼ
・肩枕・膝枕
・防水シーツ
・ヘアブラシ
・ケープ
・シャンプー・リンス・トリートメント
・ドライヤー
・鏡
・ゴミ袋
必要に応じて:耳栓、手袋、エプロン、マスク
準備
1.必要物品を揃える
2.洗髪車は、汚水槽が空の状態になっていることを確認する
3.清水槽に42℃の湯を貯める
4.看護師は、名札や時計など援助の際に患者さんと接触することで事故につながる物品は外す。必要に応じてマスク・手袋・エプロンなどを着用する
実施
1.患者さんの準備を行う
・患者さんに洗髪の実施を伝え、了承を得る
・全身状態の観察を行い、床上での洗髪が可能な状態かをアセスメントする
・排泄の意思があれば先に済ませていただく
2.環境を調整する
・プライバシーが保たれるよう、ブラインドやカーテンで仕切る
・洗髪がスムーズに行えるようベッドや床頭台の位置を整える
3.患者さんの体位を調整する
・患者さんが洗髪中に苦痛を感じないよう体位を整える
4.防水シーツを敷く
・ベッドの上部に防水シーツを敷き、その上にバスタオルを重ね、ベッドマットの汚染を防ぐ

5.患者さんの首にタオルとケープを巻く
・寝衣汚染を防ぐため、タオルを患者さんの首に巻く

・ケープは下に巻いたタオルが出ないように巻く

・患者さんに苦しくないか確認する
6.洗髪車を設置する
・看護師の腰の高さにベッドの高さを調整する
・洗髪車の受水器(シャンプーボール)と患者さんの頭部の高さを合わせる
※ベッドの高さを看護師の腰の高さに合わせるのは、過度な前傾姿勢による腰への負担ができるだけかからないようにするためです。
7.患者さんの頭を洗髪車にのせ、体位を調整する
・受水器(シャンプーボール)と頸部の間に頭部支持タオルを入れる
・安楽な体位で洗髪が行えるよう、膝の下に膝枕を入れて腹部の緊張を緩和させる
・頭部や頸部の位置に違和感がないか、苦痛でないかを確認する

※受水器(シャンプーボール)と頸部の間にタオルを入れるのは、高さの調整を行うとともに受水器(シャンプーボール)が直接頚部にあたることによって生じる負担を軽減させる目的があります。
※受水器(シャンプーボール)が取り外し可能なタイプの洗髪車の場合も同様に、患者さんの頸部にかかる負担を考慮した体位調整を行います。
8.ブラッシングする
・ブラッシングしながら頭皮や毛髪の状態を確認する
※毛髪についた汚れを落としたり毛髪の絡まりをほぐしたりすることで、シャンプーの使用量を抑えることができます。
9.シャワーで湯をかけ頭髪を濡らす
・まず、患者さんに湯の温度確認を行う
・その際、湯が直接頭皮にかからないように手を添えながら少量かける
・温度に問題がなければ髪全体を濡らす
10.髪を洗う
・シャンプーを適量手にとり、指の腹を使って洗う

・汚れが強い場合は、一度洗い流し再度シャンプーを行う
・洗う強さ、洗い足りない部位、かゆみや痛みの有無などを患者さんに確認する
※後頭部を洗う際は頭部を左右どちらか一方に傾けるようにします。頭部を浮かせ保持する場合に比べ、患者さんや看護師にかかる負担が抑えられます。
11.すすぐ
・湯温が低い場合は適宜差し湯で調整する
・湯をかける際は生え際や首に手を添え、顔や肩に湯がかからないように配慮する
・洗い残しがないか確認し、手で髪を絞って水分を取り除く
・患者さんの希望に応じてリンスやトリートメントを行う
※耳介周辺や後頸部はすすぎ残しが多い部分です。ふけ・かゆみ・湿疹の原因となるため注意しましょう。
12.タオルで髪の水分を拭き取る
・ケープを外し、首に巻いているタオルで水分を拭き取る
13.患者さんの頭部を洗髪車からベッドの上に移す
・患者さんの頭部をベッド上に移す
・ベッド上に敷いたタオルで髪を包む
14.髪の水分を拭き取りドライヤーで乾かす
・ドライヤーをかける前にタオルである程度の水分を拭き取る
・耳介に残った水分もふき取り、耳栓を使用している場合は外す
・ドライヤーをかける際は熱傷予防のため頭皮から10cm以上離す
15.身辺を整える
・防水シーツを外す
・寝衣や寝具が濡れていないかを確認し、必要に応じて更衣や寝具交換を行う
・患者さんをベッド中央に戻す
・肩下や膝下に入れていたタオルや枕をとり、体位を調整する
・洗髪車を片付け、床が汚れている場合は清掃する
16.記録と物品の片付け
・患者さんに洗髪が終了したことを伝える
・疲労度・気分不良などの有無を確認する
・必要に応じてバイタルサインを確認する
・洗髪車の後片付けを行う
・看護記録を行う
Ⅲ.洗髪台を使用し座位で洗髪を行う場合の手順
洗髪動作が自立していたり座位保持が可能であったりする場合、洗髪台を使って洗髪が行えます。
必要物品
・タオル数枚
・ガーゼ(必要時)
・ヘアブラシ
・ケープ
・シャンプー・リンス・トリートメント
・ドライヤー
・鏡
・ゴミ袋
・車椅子 または、リクライニング車椅子
必要に応じて:耳栓、手袋、エプロン、マスク
準備
1.必要物品を揃える
2.洗髪台が清潔に使用できる状態かを確認する
3.看護師は、名札や時計など援助の際に患者さんと接触することで事故につながる物品は外す。必要に応じてマスク・手袋・エプロンなどを着用する
実施
1.患者さんの準備を行う
・患者さんに洗髪の実施を伝え、了承を得る
・全身状態の観察を行い、洗髪台での洗髪が可能な状態かをアセスメントする
・排泄の意思があれば先に済ませていただく
2.環境を調整する
・プライバシーが保たれるよう、ブラインドやカーテンで仕切る
3.患者さんを洗髪台に誘導する
・前屈位の場合、両足が車椅子のフットレストにしっかりと乗っているか、床にしっかりと着いていることを確認する
・後屈位の場合は頸部と洗髪台の高さが合うように、可能であれば、車椅子の背中のシートを洗髪台側に傾ける
4.患者さんの首にタオルとケープを巻く
・寝衣汚染を防ぐため、扇子折りにしたフェイスタオルを患者さんの首に巻く
・ケープは下に巻いたタオルが出ないように巻く
・患者さんに苦しくないか確認する
・ケープは洗髪台の中に敷き込み、湯が床に流れ落ちないようにする
5.ブラッシングする
・ブラッシングしながら頭皮や毛髪の状態を確認する
・絡まりが強い場合は、根元を抑え毛先から順にブラシを通すようにする
・患者さんが自立している場合は自分で行っていただく
6.洗髪を行う体位をとる
・後屈位:洗髪台と頸部のあいだにタオルを敷く
・リクライニング車椅子の場合、車椅子の背もたれを洗髪台に合わせてリクライニングする

・必要時、顔にガーゼをかける
・前屈位:洗髪台の上に頭部がくるように前傾姿勢をとる
首に巻いたタオルは濡れないようにする
※前屈位は腹部の緊張が和らぐ反面、胸腔内圧が高まります。そのため心疾患を抱えている患者さんにとっては、心負荷を避けるため後屈位での洗髪援助が望ましいといえます。
7.シャワーで湯をかけ頭髪を濡らす
・まず、患者さんに湯の温度確認を行う
・その際、湯が直接頭皮にかからないように手を添えながら少量かける
・温度に問題がなければ髪全体を濡らす
8.髪を洗う
・シャンプーを適量手にとり、指の腹を使って洗う

・洗う強さ、洗い足りない部位、かゆみや痛みの有無などを患者さんに確認する
※後頭部を洗う際は頭部を左右どちらか一方に傾けるようにします。ケリーパッドから頭部を浮かせ保持する場合に比べ、患者さんや看護師にかかる負担が抑えられます。
9.すすぐ
・湯温が低い場合は適宜差し湯で調整する
・湯をかける際は生え際や首に手を添え、顔や肩に湯がかからないように配慮する
・洗い残しがないか確認し、手で髪を絞って水分を取り除く
・患者さんの希望に応じてリンスやトリートメントを行う
※耳介周辺や後頸部はすすぎ残しが多い部分です。ふけ・かゆみ・湿疹の原因となるため注意しましょう。
10.髪の水分を拭き取り、タオルで髪をくるむ
・ケープを外す
・首に巻いていたタオルで髪を包み込む
11.髪の水分を拭き取りドライヤーで乾かす
・ドライヤーをかける前にタオルである程度の水分を拭き取る
・耳介に残った水分も拭き取り、耳栓を使用している場合は外す
・ドライヤーをかける際は熱傷予防のため頭皮から10cm以上離す
16.身辺を整える
・寝衣が濡れていないかを確認し、必要に応じて更衣を行う
・患者さんをベッドに戻す
17.記録と物品の片付け
・患者さんに洗髪が終了したことを伝える
・疲労度・気分不良などの有無を確認する
・必要に応じてバイタルサインを確認する
・洗髪台の後片付けを行う
・看護記録を行う
Ⅳ.頭部清拭を行う場合の手順
必要物品
・ドライシャンプー剤
・蒸しタオル2、3枚
・タオル
・バスタオル
・ガーゼ
・ビニールキャップ
・防水シーツ
・ヘアブラシ
・ドライヤー
・肩枕・膝枕
・鏡
・ゴミ袋
必要に応じて:手袋、エプロン、マスク
準備
1.必要物品をワゴンに揃える
2.蒸しタオルを作成し、ビニール袋に入れる
3.看護師は名札や時計など援助の際に患者さんに接触する可能性のあるものは外しておく。必要に応じてマスク・手袋・エプロンなどを装着する
実施
1.患者さんの準備を行う
・患者さんに洗髪の実施を伝え、了承を得る
・全身状態の観察を行い、頭部清拭が可能な状態かをアセスメントする
・排泄の意思があれば先に済ませていただく
2.環境を調整する
・プライバシーが保たれるよう、ブラインドやカーテンで仕切る
・頭部清拭がスムーズに行えるようベッドサイドの環境を整える
・座位の場合は、椅子や車椅子などに移動してもらったあと膝かけなどで保温を行う
3.患者さんの体位を調整する
・洗髪がしやすく、かつ、患者さんが苦痛に感じないよう体位を調整する
・臥位の場合、安楽な体位で頭部清拭が行えるよう、膝の下に膝枕を入れて腹部の緊張を緩和させる
・頸部が安定するように肩枕を入れる
4.防水シーツを敷く
・防水シーツにバスタオルを重ねたものをベッドの上部に敷き、ベッドマットの汚染を防ぐ
5.ブラッシングする
・ブラッシングしながら頭皮や毛髪の状態を確認する
・絡まりが強い場合は、根元を抑え毛先から順にブラシを通すようにする
6.頭部を蒸しタオルで覆う
・蒸しタオルを広げて熱さを和らげる
・患者さんにタオルの温度を確認する
・タオルを頭部に巻き、ビニールキャップで覆う
7.ガーゼで清拭する
・タオルの温度が下がりきる前にタオルを除去する
・ドライシャンプー剤に応じた方法で清拭を行う
・患者さんにかゆみや痛みの有無、拭き取り時の力加減などを確認する
8.汚れを拭き取る
・蒸しタオルを用い、清拭で浮き上がった汚れを拭き取る
9.ドライヤーで乾かす
・ドライヤーをかける前に乾いたタオルである程度の水分を拭き取る
・耳介や頸部に拭き取り残しがないか確認する
・ドライヤーをかける際は熱傷予防のため頭皮から10cm以上離す
10.身辺を整える
・バスタオル・防水シーツを外す
・寝衣や寝具が濡れていないかを確認し、必要に応じて更衣や寝具交換を行う
・膝下や肩下に入れていたタオルや枕をとり、体位を調整する
・床が汚れている場合は清掃する
11.記録と物品の片付け
・患者さんに洗髪が終了したことを伝える
・疲労度・気分不良などの有無を確認する
・必要に応じてバイタルサインを確認する
・使用した物品を片付ける
・看護記録を行う
観察項目と注意点
バイタルサインの変動、体位などによる全身状態の変化、呼吸状態や苦痛や不快などを感じていないかなど、洗髪を実施することによる影響がないかを確認するほか、精神的なリフレッシュが得られたかといった点も評価する必要があります。シャンプーの香りや頭皮の爽快感等による精神的な安楽についても評価し、次回の実施に活かすようにします。洗髪による精神的な効果は、治療に対する意欲にもつながります。
洗髪前の観察ポイント | バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、意識状態)、安静度、体位の制限、患者さんの意思、頭皮の状態、頭髪や皮膚の状態 |
洗髪中〜後の観察ポイント | バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、意識状態)、苦痛や不快感の有無、精神的な安楽が得られたか、頭皮や皮膚の状態 |
看護計画を作成するなら
床上生活を送る患者さんにとって、洗髪は保清の1つというだけでなく心身のリラックスや頭部のマッサージによる安楽への効果があると考えられます。急変のリスクが少ない患者さんであれば計画的に、たとえターミナル期や看取り期の方であってもバイタルサインなどに注意しながら洗髪を施行することは可能です。ただし、安静度や洗髪時の体位の制限などについては確認しながら患者さんに負担のないよう配慮してケアを提供しなければなりません。
「洗髪」を看護計画に取り入れる際には、患者さんの意向・体力、治療による制限、従来の保清行動、意欲など個別性を捉えることが大切です。チームとして看護計画に則ったケアを提供する際には、かかわる看護師によってケアの質にばらつきが出ないよう、具体的に記載することが望ましいでしょう。
看護計画(例)※寝たきりの患者さんに対する洗髪を行う場合
看護問題:セルフケアの変調(洗髪)
看護目標:洗髪により頭皮の清潔を保ち、精神的な安楽を感じることができる
観察計画 O-P
バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、意識状態)
患者の表情、行動
頭皮の状態
ADL
安静度
援助計画 T-P
バイタルサイン測定
安楽な体位の保持
物品の選定、準備(お湯、シャンプー、タオル、ケリーパッドなど)
教育計画 E-P
洗髪施行の説明
洗髪中の気分不快などの表出を指導
清潔ケアの必要性について説明
引用・参考文献
1)小谷明:ヒト皮膚における遊離脂肪酸の動態に及ぼす皮膚常在菌ならびに化粧品の影響に関する研究(2024年1月12日閲覧)https://www.kose-cosmetology.or.jp/research_report/archives/2003/overview/11-8.pdf.
2)加藤圭子,ほか:頭部の細菌と洗髪―洗髪による頭皮の変化.臨床看護 2000;26(4):537-82.
●医療情報科学研究所編:看護がみえるvol.1 基礎看護技術.メディックメディア,2018.
●任和子他:基礎看護学3 基礎看護技術Ⅱ.医学書院,2019.
●志自岐康子他編:ナーシンググラフィカ 基礎看護学3 基礎看護技術.メディカ出版,2017.
●竹尾恵子監:看護技術プラクティス[第3版動画付き].学研メディカル秀潤社,2015.