【連載】ICU・HCU看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!
IABPの自己圧と先端圧はそれぞれ何を表している?
- 公開日: 2026/8/11
IABPとは
IABPとは、Intra-Aortic Balloon Pumpingの略称で、「大動脈内バルーンパンピング」のことを指します。大腿動脈から経皮的にバルーンカテーテルを挿入して下行大動脈付近に留置し、心臓の動きに同期してバルーンを拡張・収縮させることで心臓をサポートする補助循環装置です。
IABPを理解するには、心臓の動きと冠動脈の関係を知っておく必要があります。心臓は自ら収縮して全身へ血液を送り出しますが、心臓自身を栄養する冠動脈への血流は、収縮期ではなく拡張期に流れる仕組みになっています。IABPはこのメカニズムを利用したもので、拡張期にバルーンが膨らむことで、大動脈の血液が心臓側へ押し戻され、冠動脈を流れる血液量が増加します。反対に、収縮期にバルーンがしぼむことで大動脈内が陰圧となり、左心室が血液を送り出すときの抵抗(後負荷)が軽減されます。
この「拡張期の冠血流増加」と「収縮期の後負荷軽減」という2つの作用によって、心筋への酸素供給を増やしつつ酸素消費を減らすことが、IABPの最大の特徴です。
自己圧と先端圧が表すこと
上記を踏まえて、IABPのモニターに表示される「自己圧」と「先端圧」が何を表しているかみていきましょう。
自己圧
自己圧は文字どおり、患者さん自身の心臓が生み出す圧力、つまり「IABPの補助が発生していないときの動脈圧」のことです。例えば、IABPが1:2(2拍に1回補助する設定)で動いている場合、1拍は補助が入り、次の1拍は補助が入らないという動きを交互に繰り返します。この補助が入っていない拍の圧が、患者さん自身の血圧である自己圧としてモニターに表示されます。
臨床において自己圧は、「IABPの力を借りずに、患者さん自身の力でどれくらい血圧を保てているか」を評価する指標となります。補助が入ったときの圧だけを見て、「血圧が保たれているから安心」と考えてしまうと、実は自己の収縮期血圧が70mmHg台しかないというような危険な状況を見落とすおそれがあります。自己圧が低いままであれば、たとえ補助中の圧が高く見えても、IABPからの離脱は難しいと判断されます。
先端圧
先端圧は、IABPカテーテルの先端付近で測定している大動脈内の圧のことです。橈骨動脈などの末梢で測定する動脈圧とは異なり、より心臓に近い中枢(大動脈内)の圧波形を見ています。
臨床において、IABPの駆動タイミングの調整は、この先端圧の波形を見ながら行います。IABPモニターに表示される圧波形のなかには、収縮期のあとに「ディクロティックノッチ」と呼ばれる小さな切れ込みが見られます(図)。これは大動脈弁が閉まった瞬間を示しており、バルーンを膨らませるのは、この切れ込みが見られた直後のタイミングが理想とされています。
図 ディクロティックノッチ
IABP管理における看護のポイント
看護師として大切なのは、自己圧や先端圧の数値を単独で見るのではなく、平均動脈圧、尿量、意識レベル、皮膚の冷感、乳酸値、さらには使用している強心薬や昇圧薬の量などと合わせて、患者さんの状態を総合的に評価することです。
IABPのモニターを見るときも、「冠動脈への血流が保たれているか」「左室の負荷が軽減されているか」「自己の心機能(患者さん自身の循環力)が回復しているか」という視点を常に意識しましょう。数字の大小だけに目を向けるのではなく、波形の形や駆動のタイミング、自己圧・先端圧、全身の灌流の状態をリンクさせて評価することが、IABP管理における実践的な看護のポイントになります。
