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【連載】がん患者さんへの言葉かけトレーニング

第7回 【がん看護】患者さんとの会話のポイント

  • 公開日: 2012/5/10
  • 更新日: 2020/10/22

がん患者さんとの会話では、時に死や無念さといった深刻な話題になることも少なくありません。そんなときに、どう答えていいかわからないままに、通りいっぺんの返答をしては、患者さんとの言葉のキャッチボールは生まれません。

ここでは、看護師が自分の言葉で率直 な会話をするための基本をレクチャーします。


1 率直な気持ちを言葉にする

看護師は意識・無意識のうちに、「患者さんを安楽にしてあげたい、安心させてあげたい」と思って発言します。しかも、古い看護教育では「自分の気持 ちを言ってはいけない」と教えられるので、感情を抑え、冷静に対処することが専門職としての態度だと考えてしまう傾向があります。

そのため、看護師の話の内容は解釈であったり、説明・教育的指導であったりすることも多いようです。また、共感を伝えるには、患者さんの言葉をオウム返しにするのがよいとされてきていました。

例えば、患者さんが、「私は、もう死ぬんだなと思うんですよ」と言った場合、これまで医療者は、「死にたいと思っているんですね」と、言葉をそのまま繰り返すことが推奨されていました。

しかし、治療的にかかわるための返答の言葉が見つからないため、窮余の策として発せられてきた言葉だと思います。オウム返しでは言葉のキャッチボールにはなりません。大切なことは、投げかけられた言葉に対して、看護師という人として受け止めて、こちらからも言葉を返すということです。

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そのためには、患者さんの言葉を聞いたときに感じた思いを伝えればいいのです。前述のような「もう死ぬんだなと思う」という患者さんの言葉に対して、どうしてそう思うようになったのかが不思議に感じたら、「なぜ、そう思うのですか?」「いつからそう考えているのですか?」と、聞いてみます。

あるいは、ほかの誰かにも話せているのかが気になったなら、「その気持ちをご家族とも話しているのですか?」と、聞いてみてもよいでしょう。

とにかく、自分の思いを飲み込まないで、患者さんの言葉によって生じた自分の考えや気持ちに目を向けて、言葉を返していきます。

2 感情を言葉にして伝えればいい

患者さんに自分の感情をえることは、決して悪いことではありません。もちろん、大げさな態度で騒ぎ立てるべきではありません。しかし、驚くこと自体 は自然な心の動きであり、否定されることではありません。むしろ、自分の感情を率直に患者さんに伝えることは、必要だと思います。

前述のように、患者さんから「もう死ぬんだなと思う」と言われたとき、戸惑ってしまい、返す言葉が見つからない場合には、「そんなふうに言われて、私は今、とても驚いています。どう答えたらいいかわかりません」などと、そのときの気持ちをそのまま言葉にしてよいのです。

もしも、涙が出てしまったとしても、「ごめんなさい。今、びっくりしてしまって」と、気持ちを言葉にして返してもよいでしょう。このような会話に正解はありません。年齢、性別、看護経験、自分の人生経験によって異なった対応があっていいはずです。その上で、看護師として、患者さんを応援したい、支えたいと思っていることを伝えましょう。

また、遠回しな言い方は、患者さんに疑いを抱かせてしまうことになりかねません。言いたいことは、はっきりと伝えることが大事です。

ただ、同じことを伝えるにしても、物事を突き詰めるような話し方をしないなど、相手が傷つかない伝え方、洗練された日本語を話すことが大切になります。そのためにも、コミュニケーションスキルを磨く必要があります。

3 問題解決は、目指さなくてもいい

患者さんの口から迷いや心配ごとが話題に上ったとき、その場で結論を出す必要はありません。会話の目的は、問題解決ではなく、言葉をやり取りすることで、それによって相手の考えを理解すること、自分の思いを伝えることにあるからです。

友人に話を聞いてもらいたいとき、あなた自身も答えを求めてはいないのではないでしょうか。そして、話をして「すっきりした」という体験をしていることも多いはずです。患者さんとの会話もそれと同じなのです。

気を付けたいのは、看護師であるがゆえについ問題を解決したいと考え、説明口調で提案をしてしまうことがあります。

例えば、自立心の強い入院患者さんから、「家に帰っても、家族に迷惑をかけるだけかもしれない」という言葉を聞いたときに、「介護ヘルパーを利用するといいですよ。利用の方法は」と、一方的に話したとします。しかし、患者さんはただ、買い物の代行が必要なだけかもしれません。必要としない情報を多量に与えられた患者さんは、戸惑ってしまいます。

「どうしてそう思うのですか?」「どんなことが迷惑になるのですか?」と、丁寧に会話を続けるなかで、患者さんも自然と気持ちの整理がついてくることもあります。看護師も患者さんのニーズをより具体的にとらえられます。たとえ、話の方向が定まらなかったとしても、患者さんの言葉に反応して、会話を続けることが大切です。

4 ロールプレイで訓練しよう

自然な会話とはいっても、人はそれまで発してきた言葉しか言えないという習性があるようなので、患者さんと言葉のキャッチボールをするためにはちょっとしたトレーニングが必要です。

特に緊張の高い場面、例えば「治療をやめようと思っているんです」と言われた場合などは、看護師もつい反射的に「そんなこと言わないで頑張りましょう」と言ってしまいがちです。そうではない、自分自身の言葉で対応するためには、少しだけ練習が必要なのです。

練習は、頭の中であれこれと考えるのではなく、実際に声に出してみることが大事です。できれば、ロールプレイングでの練習をしてみましょう。

患者さん役を相手に、模擬事例によるシナリオから会話をつなげていきます。自分だったら、どのように会話をするのかを考え、言葉のキャッチボールをしていくのです。

語りかけた相手に、自分の気概が伝わっているか。相手はそれによってどんな気持ちがしているか。どんなメッセージとして伝わっているか。あるいは、全く伝わっていないときもあるでしょう。

その際、自分はどのような気持ちでその言葉を発したのかを説明し、相手から言葉の感想を聞きます。さらに、言葉のやりとりごとに生まれたお互いの気持ちについて考えていきます。

ロールプレイでは、患者さんの視点で感じることもでき、言葉を選ぶための重要な体験となるはずです。

次回では、ケーススタディでトレーニングの仕上げを行います。

(『ナース専科マガジン』2010年9月号より転載)

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