人工呼吸器の用語「PEEP」とは? 意味は?
- 公開日: 2014/1/2
今回は、現場でよく耳にする人工呼吸器に関する用語を解説します。難しい言葉が多い人工呼吸器ですが、正しく理解することで安全なケアにつなげましょう。
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PEEP(呼気終末陽圧)とは
風船を膨らますとき、初めは膨らみにくく、かなりの力を必要とするが、膨らんでくると空気を入れやすくなる。肺もこれと同じで呼気時に肺胞がつぶれると、空気を入れても膨らみにくくなってしまう。そこで、呼気時に肺がつぶれないように、呼気の終わりに陽圧をかけておくのがPEEPである。
また、つぶれてしまった肺胞に空気を送ると、完全につぶれた風船を膨らますときに、ばりばりと摩擦を起こすのと同じような現象が起こり、炎症を生じる可能性がある。こうした肺への損傷を防ぐのにもPEEPは重要な役割を果たす。そのため、現在の人工呼吸器管理では、どの換気モードにおいてもPEEPをかけることが一般的になっている。
[目的]
・PaO2の上昇
・高いFIO2の低下(高濃度酸素による肺障害の防止)
・肺胞の虚脱の防止
[効果]
・機能的残気量(FRC)の増加
・平均気道内圧の上昇
・肺内シャント、換気血流比、肺水腫の改善
[副作用]
・心拍出量、血圧、尿量の低下
・気胸、部分的肺過膨張など
[設定圧]
・通常3~5cmH2O
・ARDSのときは10cmH2O以上かけることもある
ファイティングについて
例えば、患者さんが呼出するタイミングで人工呼吸器から送気されるなど、患者さんの呼吸と人工呼吸器の換気のリズムが合わないことをファイティングという。SIMVやCMVのモードでは、自発呼吸が出てくるとファイティングを起こしやすい。
自発呼吸と同調するモードでは、自発呼吸を検知する感度である「トリガー感度」を設定する。この感度の設定が適切でないと、自発呼吸を検知できず強制換気となってしまい、ファイティングを起こすことがある。
肺胞リクルートメント手技とは
虚脱した肺胞に高い圧をかけて含気を取り戻させ、再膨張させる手法。Open Lungともいう。ARDSなどの重症呼吸不全の症例に使われることが多い。
次回は、「グラフィックモニターの読み方のキホン」について解説します。
(ナース専科マガジン2012年12月増刊号「一冊まるごと呼吸ケア」より転載)
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