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【連載】急がば学べ! 呼吸のしくみ

SpO2低下時の症状とアセスメント

  • 公開日: 2014/4/13

▼サチュレーション(SpO2)について、まとめて読むならコチラ
サチュレーション(SpO2)とは?基準値・意味は?低下の原因と対応


アセスメントの流れをチャートでマスターしよう

 SpO2の低下に気づいたら、まず患者さんの様子を観察します(図)。意識レベルが低下している、あるいは呼吸停止といった状態の場合は、緊急の対応が必要です。すぐにBLSやACLSによる蘇生を行い、そうでないケースでも、直ちに挿管し、人工呼吸器管理となることが多いでしょう。

 それ以外の場合には、患者さんが苦しそうにしているかどうかから見ていきます。

SpO2低下時のアセスメントの流れ説明図
(図)SpO2低下時のアセスメントの流れ

1. 患者さんが苦しそうにしている場合

 呼吸苦のある場合のアセスメントでは、まず酸素投与をしているかどうかを確認し、酸素を使っている場合にはその投与経路の確認から始めます。

酸素投与を受けている患者さん

 まず、患者さんが設定した通りの酸素を吸入できているかどうかを確認します。

 患者さんの口元からチューブをたどって器具の根元までつながっているかを見ていきます。きちんと酸素が流れているかどうか、自分の耳や口で確かめましょう。

 また、チューブが患者さんの体の下になり屈曲や閉塞が起こってないかも確認します。器具の異常を発見したら速やかに改善して、患者さんに説明し、SpO2が回復することを確認します。

 器具に異常がない場合には、患者さんの状態が悪化して酸素投与量が不足していることが考えられます。そこで、取りあえずの処置として、酸素の流量を現在の投与量の1.5倍まで増やし、患者さんを観察します。2~3分ほど観察してSpO2値がどのぐらい上がるかを見て、目標値の範囲にならなければ、さらに流量を増やします。

 そして、患者さんの状況とSpO2が上昇した流量の値を主治医に伝えます。SpO2が低下したことを伝えるだけよりも、より具体的な指示を受けることができます。

 ただし、酸素投与量を変える場合には、その患者さんに決められているSpO2の目標値を把握しておかなければなりません。例えば「90%<SpO2<96%」などです。そのためには、あらかじめ「酸素投与中の患者さんのSpO2が低下したら、まずは流量を1.5倍から上げる。目標値は○○くらいにして医師に報告する」というような指示を、主治医から出しておいてもらうことが前提です。

 酸素療法の管理に慣れていない人の場合、流量を増やすことが恐いと感じることもあるかもしれません。しかし、SpO2が低いまま放置して、時間を要するバイタルサイン測定をしたり、あわてて主治医に報告をしても、患者さんにとっては苦しさが続くだけです。

 まずは、低酸素状態を改善する方法を考えます。SpO2が改善してきたら、痰を取る、姿勢を直すなどのケアを行いましょう。

酸素投与をしていない患者さん

 痰がからんで息ができない、分泌物で肺胞がつぶれている、気道の狭窄、気胸の発症など急性の呼吸障害のほかにも、痛みや発熱など、息苦しいという症状を増強させる要因はいくつもあります。

 まず、フィジカルアセスメントとバイタルサイン確認を、さらに、パルスオキシメーターの外れがないかも確認します。呼吸回数、脈拍、血圧、体温、チアノーゼの有無などをアセスメントして、その結果を医師に報告します。あらかじめ低酸素症に対する酸素投与が指示されている患者さんであれば、速やかに酸素吸入を開始して、その反応も含めて医師に報告します。

2. 患者さんが苦しそうにしていない場合

 SpO2が異常値であっても、患者さんにいつもと変わった様子がなければ、緊急を要する状況ではないことが多いので、時間的には余裕があります。まずは、パルスオキシメーターが正常に作動しているかどうかを確認します。パルスオキシメーターは、脈を拾えないと正しく計測されません。

 SpO2値が患者さんの症状と一致しない場合には、橈骨動脈などで患者さんの脈拍を測定し、表示されている数値と合っているかどうかを見ます。合っていなければ、パルスオキシメーターが正確にSpO2を測定できていない可能性が高いと考えます。

 また、パルスオキシメーターは強い光、特に直射日光の下では正しい値が出ません。ほかにも、患者さんが動いていると、その振動を脈拍と見分けられず正しい値が出ないこともあります。光が当たらないようにしたり、患者さんに静かにしてもらい、測定し直します。それでもだめな場合は、別の機器で再測定します。

 いずれの場合も低いのであれば、患者さんが平気そうにしていても、低酸素症である可能性があると考えられます。ほかのバイタルサインを測定し、フィジカルアセスメントをして医師に報告してください。

 次回は「低酸素血症と高二酸化炭素血症を見極めよう」について解説します。

(『ナース専科マガジン2012年12月増刊号 一冊まるごと呼吸ケア』より転載)

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