体位変換を2時間から4時間にするためのケアとは?
- 公開日: 2014/6/13
褥瘡予防のために、2時間ごとの体位変換の必要性について、さまざまな検証がされています。
体位変換の実施間隔について、Q&A形式で確認していきましょう。
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体位変換とポジショニング
Q1. 体位変換の間隔は、何時間が適切なの?
A1. 4時間を超えないように行います。
体位変換の実施間隔についてのエビデンスには、以下3つがあります。
『褥瘡予防・管理ガイドライン 第3版』
「粘弾性フォームマットレスを使用する場合には、体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい」
論文『体位変換の時間を2時間以上とした症例の検討』
「2層式エアマットレスを使用し、同一体位、4時間までなら発赤なし。5時間後では16人中8人に発赤あり」
『褥瘡発生要因の抽出とその評価』(日本褥瘡学会学術教育委員会)』
「画一的に2時間ごとに体位変換を計画するのではなく、他のリスクの有無により体位変換間隔を短縮するなど個別に看護計画を立案することが推奨される」
つまり、外力をコントロールすることで、体位変換の実施間隔を最大4時間までにすることが可能だとしています。
今後、体位変換は「4時間を超えずに」行っていく傾向になることがうかがえます。まずは目の前の患者さんの体位変換の間隔が、どれくらいなら適切か、「2時間ごと」でよいのか、疑問をもつことからはじめましょう。
Q2. 実施間隔を4時間ごとにするために、必要なケアは?
A2. 体圧によってかかる外力を減らすケアが必要です。
具体的なケア
1. 姿勢・手足の位置を、適切な位置に変える
2. スモールチェンジを行う
3. 予防的スキンケアを行う
4. おむつ(選択と装着の方法)を見直す
スモールチェンジとは
「手や顔の向きを変えること」や「マットレスを手で押し下げること」をスモールチェンジといいます。体位変換のように看護師が2人がかりで行う必要がないので、簡単にできます。スモールチェンジを行うことで、体圧が1ヶ所に集中するのを防ぐので、患者さんは心地よさを感じることができます。
Q3. 2時間ごとの体位変換のエビデンスを教えてください
A3. 現状はエビデンスがありません。
これまで体位変換は2時間ごとというのが、臨床現場では当たり前のことでした。この体位変換の2時間ルールが明文化されたのは、1977年に出版された「褥瘡―病態とケア―」の中でした。
それ以前にも、米国で行われた基礎研究により
1. 2時間加圧でウサギの臀部に微細な変化が現れた
2. ネズミのハムストリング(大腿部裏側の筋肉群)に2~3時間圧を加えると変化が生じた
と体位変換間隔の根拠とされる結果が示されています。しかし、どちらも動物実験であるため、エビデンスとしては説得力に欠けます。
Q4. そもそも体位変換の目的って何?
A4. 外力をコントロールすることです。
褥瘡が発生する原因について、日本褥瘡学会は以下のように言っています。
「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り、褥瘡となる。」
つまり、褥瘡の大きな原因は外力による血流障害であるを示しています。
外力には
1. 静的外力
2. 動的外力
の2種類があります。
静的外力とは
静止した状態(ベッドに横になっている状態・イスに座っている状態)で、骨の周りにかかる力のことです。力は縦方向だけではなく、横・斜め方向へと複合的にかかります。
図 静的外力のメカニズム
動的外力とは
1. 背ずれ時の摩擦とずれ
2. オムツ交換時の摩擦とずれ
3. リハビリ時の摩擦とずれ
動的外力のコントロールは、体圧分散では限界があります。そのため、体位変換を行い、外力をコントロールする必要があります。
図 動的外力のかかり方(背上げ時)
体位変換は寝返りの代用でもある!
睡眠中、人間は1か所に外力が集中しないように、寝返りを打ちます。しかし、なんらかの障害や疾患によって自分で寝返りが打てない人がいます。そのため、看護師や介護者が寝返りの代用として体位変換を行います。
(『ナース専科マガジン』2014年7月号から改変利用)