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体位変換は生命を支えるケアー第15回日本褥瘡学会関東甲信越地方会学術集会ー

  • 公開日: 2018/10/30

 7月29日(金)・28日(土)の2日間にわたり、第15回日本褥瘡学会関東甲信越地方会学術集会(埼玉県・大宮)が開催されました。28日(土)に行われた、徳永惠子先生(セイエイ・エル・サンテ ホールディング株式会社)による特別講演「体位変換は生命を支えるケア」をレポートします。


司会:判澤 恵先生(京都民医連中央病院)
講師:徳永惠子先生(セイエイ・エル・サンテ ホールディング株式会社)

夢を実現する勇気をもとう

 講演は、徳永惠子先生の恩師、故・日野原重明氏の言葉から始まりました。その言葉は「夢を実現する勇気」。この言葉が自身の看護の原点になっていると話し、「ストーマのケアで難渋している患者さんに何かできることはないだろうか」という思いから、約40年前に単身で渡米し、ETナースの資格を取得した経験を紹介しました。そして、「夢をもち、夢を追いかけて実現すること、そして他の人に夢を与えることが大切」とメッセージを送りました。

 徳永先生の現在の夢は宇宙に行くこと。徳永さんが宇宙に関心を寄せる源には、やはり看護があります。まずは、「宇宙では褥瘡はできない」と宇宙は重力の影響を受けない環境であることを印象づけました。しかしその一方で、宇宙に長期間滞在する宇宙飛行士に、筋力の低下、骨量の減少(骨粗鬆症)など、寝たきりの患者さんと同じような健康問題が生じることを紹介しました。また、これらの健康問題を予防するために、宇宙飛行士はハードなトレーニングを行っていること、そして、この健康問題のメカニズムの解明が高齢者の健康問題にも適用できるとして、宇宙医学として研究が進んでいることにも触れました。

重力は健康に生きるために不可欠なストレス

 徳永先生は重力について、「地球で健康に生きるために不可欠なストレスであり、身体の内部は基本的に重力を縦に受けると正常に機能するように進化している」とその重要性を説明します。そのうえで、身体を横にする安静状態が長く続くと、身体の機能は異常な状態で維持されることになり、いわゆる廃用症候群(生活不活発病)が起こることを示しました。

 「だからこそ、患者さんを寝たきりにさせてはならない。そのためにも重力を意識したケアが重要です」と強調します。さらに「看護師自身が普段から重力を意識した生活を心がけることが必要」と加えました。

 また徳永先生は、現在の褥瘡ケアのあり方についても言及しました。「褥瘡さえなければ患者さんは幸せなのかというと、そうではありません。あくまでも褥瘡は、生活不活発病の局所的な諸症候の一つだということ頭に入れておいてほしいと思います。生活不活発病のすべての諸症候を予防することが、褥瘡の予防につながるのです」

 特に現在は、体圧分散器具の進化により、その使用に依存してしまい、体位変換など患者さんを動かすケアが省略される傾向にあると指摘します。そのため、褥瘡は予防できても、関節の動きなどが維持できないばかりか、患者さんの本来の動きを障害してしまうことになりかねないと注意を呼びかけ、「体圧分散器具は患者さんの活動状況に応じて選ぶ必要がある」とアドバイスしました。他にも、転倒のリスクがあることを理由に安易に車椅子に乗せるなど、看護・介護が身体の不活発状態を助長させてしまっているのではないかと問題を提起しました。

 最後に、「『動くこと』はADL(生命・生活維持)の基本であり、『動かすこと』は生命を支える支援そのもの。どうしたら患者さんの活動性を損なわずに支援できるかということを考えるのが看護だと思います」と締めくくり、講演を終えました。

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