水分のIN(代謝水など)とOUT(発汗など)のキホンを押さえよう!
- 公開日: 2014/7/12
患者さんの状態把握を的確に行うためには、水分のIN/OUTを理解しているかどうかがカギになります。まずは、IN/OUTの基本となる「水・電解質」についてみていきましょう。
水分代謝とIN/OUTの基本量
人体における水分のINは、一般的に食事や飲水、代謝水です。OUTは、尿、不感蒸泄(呼気や皮膚呼吸によって排泄される水分)、便、発汗です。
ほかには、輸液や術後ドレーンからの排液などがIN/OUTに加わります。
INとOUTは原則同量ですので、飲水や輸液を増量させても、それに見合った尿などのOUTが見られない場合、どこかで何かが起きています。
予期せぬ出血が起きていないか、サードスペースへの水分の移動があるのか、腎臓、心臓の状態はどうかなど、原因を検索する必要があります。
看護師として、なぜOUTが十分でないかについて考えてほしいところです。
水分IN/OUTの基本量
水・電解質を調整する腎臓の働き
ここで、IN/OUTを理解するための重要な臓器である腎臓の役割を復習しておきましょう。腎臓は生命の維持に必要な水分、電解質、血液のバランスを一定に調整しています。
腎臓の働き
●老廃物を尿として体外に排出●水分や電解質を調節し、体内環境を一定に保つ
●体内のpHを調節し中性に保つ
●血圧を調節する
●造血ホルモンエリスロポエチンを分泌し赤血球生成を促す
●ビタミンDを活性化しカルシウムの吸収と骨代謝を調節する
IN/OUTを管理する目的
INとOUTを観察し、記録していくことで、体液のバランスが保たれているか、また、その経時的な変化を把握することができます。IN/OUTバランスの記録にはバランスシートを用います。
IN/OUTバランスを把握する2つのメリット
メリット1 重症時の異変を素早く見つけられる
IN/OUTチェックの対象となるのは、まずは重症患者さんです。救急やICUに来る患者さんにはすべてバランスシートをつけるべきでしょう。なかでも、心不全、腎不全、ショックやオペ後には必須です。
このような患者さんは、短時間で病態が変化することが多く、モニタリングが必要です。
1日単位で治療を考える患者さんもいれば、数時間おきに治療内容を変える必要のある人もいます。1日1回しかIN/OUTバランスをチェックしないでいると、どんどん治療が遅れてしまいます。
このような場合、1時間単位でバランスシートをつけて、細かく観察し、異変などを素早く見つけることが大切です。
メリット2 体内の出血を見つけられる
観察において、特に注意すべきなのは予期せぬ出血です。例えば、術後止血をしたのに、実は再出血をしているため、IN/OUTバランスが崩れ、そのためバイタルサインが安定しないという例はよくあります。
心筋梗塞や肺塞栓には、血栓を防ぐために抗凝固療法を行いますが、高齢者の場合、出血性合併症を起こすことが多いため、気をつける必要があります。
出血などで循環血液量が低下した患者さんの場合は、バイタルサインの測定で血圧低下を認めます。しかし、血圧低下は病態が進行してから出現する徴候なので、発見されたときにはすでに遅いのです。
その前に観察される徴候は、心拍数や脈拍数の増加です。輸液を行っていても、心電図モニターで頻脈を認めた場合は出血の除外が必要です。
また、体内で出血していると末梢血管抵抗が高まるので、体血管抵抗係数(SVRI)も1つの指標になります。
(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)