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脳卒中を予防する抗凝固療法 医療者⇔患者に大きなコミュニケーションギャップが

  • 公開日: 2015/5/28

日本人の死亡原因の第4位(厚生労働省「平成25年人口動態統計」より)にある脳卒中。その中でも心原性脳塞栓症の予防の中心にあるのが抗凝固療法です。

ところが、健康日本21推進フォーラムが行った調査では、1年間に約33,000人もの患者が服薬を中断しており、服薬アドヒアランスの低下は大きな問題となっています。

株式会社QLifeでは、心臓血管研究所付属病院所長の山下武志先生をはじめ、国内の心房細動治療のトップドクターが在籍するNVAF(非弁膜症性心房細動)アドヒアランス向上委員会監修のもと、医師、薬剤師、看護師、介護士など脳卒中予防に携わる医療者と、抗凝固療法を行っている患者ならびにその家族、さらには抗凝固療法を中断した患者を対象に、心房細動治療(抗凝固療法)における意識・実態調査を実施しました。その調査結果を紹介します。


看護師の半数以上が抗凝固療法について医療者・患者間に意識のギャップがあると感じている

死に直結する脳卒中を予防する主要な方法の1つであるのにも関わらず、多くの患者が服薬を中断してしまう抗凝固療法。

服薬を継続してもらうことについて、医療者と患者の間に意識のギャップがあるかどうかを聞いたところ、看護師の半数以上が「ギャップがある」という結果になりました。一方、患者さん側は約4人に1人しかギャップを感じておらず、医療者と患者の間に意識の差があることがわかりました。

抗凝固療法の継続について、医療者(医師、看護師、薬剤師)と患者に意識のギャップはあると思いますか?

看護師の回答割合グラフ

看護師の回答

患者の回答割合グラフ

患者の回答

看護師が感じるギャップ

  1. ● 検査説明時に抗凝固薬を内服していることを伝えないままの患者はそれなりにいる。内視鏡などで出血が止まらない恐れがあるなどの意識に欠けていると思われる。
  2. ● 患者は自分の体験が主であり、予測事項に関してはイメージしがたく、重要性や必要性などにおいて隔たりがある。その反面、恐れすぎるケースもある。
  3. ● 処方されているから服薬しているだけで、なんの薬かわからないと答える高齢の方が多い。
  4. ● アブレーションを施行されても心房細動が完治せず服薬を続行することになった場合に、患者の期待度からの落差が大きいのでフォローが大変。
  5. ● 看護師は服薬継続が困難であることを患者の声として聴いているが、患者は服薬できていないことを他の職種へ直接的に言いづらいと感じている。また、医師や薬剤師は、患者は処方された薬剤を指示通り服薬しているものと思い込んでいる。

患者が感じるギャップ

  1. ● 一生のみ続けなければならないのか、という質問に答えがなかった、医師同士の判断が統一されていない。
  2. ● 簡単な出血時の処置。鼻血が出やすいので(強くかむと)恐怖心がある。車に乗るため、事故の場合や意識がない場合など、薬の服用をどのように伝えるのかについて考慮すべき点がある。
  3. ● 医者側には完治しない認識があるが、患者側には完治するかもという思いがある。
  4. ● 少々服用期間が長すぎて、うんざりしている。

看護師の4人に1人が治療計画、処方薬剤の変更を医師に進言した経験あり

抗凝固療法に関する患者からの質問・要望について、看護師の2人に1人が「受けたことがある」と回答。

また、「食事の制約が多いので他の薬剤の情報がほしい、そのうえで薬剤選択をしたい」「納豆が食べたいので、ワーファリンはやめたい」「青汁が飲みたいので、ワーファリンはやめたい」など看護師の4人に1人が治療計画や処方薬剤の変更を医師に進言した経験がありました。

抗凝固療法の情報源 看護師は「病院での講演会・勉強会」が最も多い

抗凝固療法の情報源について、看護師では「病院内での勉強会・講演会」が最も多く、次いで「同僚・友人・先輩後輩」となりました。

医師では「MR」が最も多く、次いで「メーカー主催の講演会・勉強会」、「医学総合情報誌」となりました。

薬剤師では「MR」が最も多く、次いで「メーカー主催の講演会・勉強会」「医学総合情報誌」となりました。

介護士では「同僚・友人・先輩後輩」が最も多く、他の情報源の割合を2倍以上上回りました。

グラフ

今回の調査結果について、監修者の1人である山下先生は「抗凝固療法は、その意義や目的はもちろん、日常生活や他科受診時の注意など、治療開始時に伝えるべきことが多くあります。ところが、その情報があまりにも多岐に、そして短い時間に一度に提供されるため、患者さんにとって、情報過多になってしまっていると思われます。“総論”は伝えていても、実践につながる“各論”が詳細に伝えきれていないことが、アドヒアランス低下の要因の1つになっているのではないでしょうか。そして、“既に1回説明を受けている”ということが患者さんにとって“質問を聞きにくい”雰囲気を醸成してしまい、身近な看護師に質問や要望をしてしまう要因になってしまっているのでは」とコメント。

すべての情報を一度に伝えるのではなく、患者さんの理解度や納得度、状況に合わせて情報の優先順位を考慮することや、医師は情報提供に専念し、薬剤師は服薬チェックなどのモニタリングに専念するなど、医療者間の役割分担を明確にする必要があることを提言しました。

詳細な調査結果は、http://www.qlife.co.jp/news/150529qlife_research.pdfからもダウンロードできます。 

(取材協力:バイエル薬品株式会社)

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