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【連載】脳神経外科看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!

脳腫瘍の患者さんが術後に痙攣発作起こした! どう対応したらよい?

  • 公開日: 2025/10/25

Q.脳腫瘍の患者さんが、術後に痙攣発作を起こしてしまったときの対応について教えてください。
A.患者さんの安全を最優先で確保し、直ちに医師に報告するのと同時に、初期対応を行います。また、発作の開始・終了時間、発作の様式などを観察し、記録します。

脳腫瘍で痙攣発作が起こる理由

 痙攣発作は、意識消失を伴う発作と伴わない発作に大別されますが、意識消失を伴わない発作でも、異常な神経細胞の興奮が他の部位に伝播すると、意識消失を生じる場合があります。

 脳腫瘍による痙攣発作は、基本的に、腫瘍あるいは周囲の浮腫などにより過剰な電気的興奮が脳の特定の領域で発生し、それが他の部位に広がっていくことで引き起こされます。

 痙攣発作を発見したら、直ちに医師に報告すべきなのはもちろん、報告してから医師が到着するまでに、看護師で行う初期対応と発作の観察が重要です。

患者さんの安全確保

 脳腫瘍患者さんの痙攣発作は、術前術後に限らず、比較的よくみられる合併症の1つです。病室以外にも、検査室、外来、移動中など、あらゆる場面で起こる可能性があります。

 痙攣発作が起きたときは、患者さんの安全確保を最優先に行動することが重要です。周囲の環境を確認し、二次性の外傷などを生じさせないように配慮します。例えば、ベッド上で痙攣発作が起こった場合は、転落や周囲の環境物に当たらないように注意するとともに、布団を取り除いて全身を観察できるようにしましょう。車椅子上で起こった場合は、ずり落ちによる頭部損傷を防ぐため、安全な場所へと移動します。

初期対応と発作の観察

 まず、発作の開始時間(確認できた時間)を確認しましょう。そのうえで、呼びかける、もしくは身体を叩いて意識状態を確認し、同時に呼吸の有無も確認します。眼球偏位などの神経所見や麻痺の有無についても、大まかでよいので観察しましょう。発作様式は医師の診断材料になり得るため、意識状態、呼吸状態、神経所見などは、看護師が観察・記録するうえで重要な項目となります。

 発作の観察と並行して、応援を呼んで人員を確保し、医師への報告を行います。医師への報告は、「脳腫瘍術後◎日目のAさんが、意識消失を伴う痙攣発作を起こしています。舌根沈下があり、呼吸微弱ですので来てください」といったように、簡潔に行いましょう。応援のスタッフがいる場合は、救急カートの準備やモニター装着を開始します。

 痙攣時は、体内の酸素消費の増大、呼吸抑制や舌根沈下などを来して、低酸素脳症になることがあります。そのため、気道を確保し、SpO2が保たれていたとしても積極的に酸素の投与を行います。看護師は、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)を測定し、記録します。また、痙攣発作が続く場合は薬剤を投与する必要があるため、状況に応じて、静脈路の確保を行います。

 もし発作がおさまれば、終了時間とその後の意識レベルを確認します。

医師到着後の対応

 痙攣発作が続いているようであれば、詳しく診断することよりも、発作を止めることが優先されます。発作の状況を医師に簡単に説明し、ジアゼパム(セルシン)の静脈内投与を行うことが第一選択です。

 ジアゼパムを投与すると呼吸が弱くなり、呼吸停止することもあります。看護師は、バイタルサインを頻回に測定するのとあわせて呼吸状態を観察し、場合によっては、バッグバルブマスク換気ができるように準備をします。

 ジアゼパム投与後、バイタルサインや呼吸状態に問題がないことを確認したうえで、発作の抑制効果を高めるために、レベチラセタムもしくはホスフェニトインナトリウムなどの投与を行います。

【重積状態への対応】

 ジアゼパムを反復投与しても発作がおさまらない場合には、重積状態として対応する必要がでてきます。ミダゾラムやプロポフォールを用いて、鎮静挿管管理を行う場合もあります。

原因検索に伴う対応

 痙攣発作を起こしたことがない患者さんが新規に発作を起こした場合には、脳内に新たな変化が起こっている可能性があるほか、低血糖や電解質異常などを来している可能性が考えられます。そのため、血液検査などを行うとともに、頭部CTやMRIなどにより、脳に新たな異常がないかどうかを確認する必要があります。看護師としては、検査についてわからないことがないか患者さんに確認し、場合によっては改めて医師に説明してもらうなど、患者さんが安心・安全に検査が受けられるように努めます。

 また、以前に発作を起こしたことのある患者さんであれば、抗てんかん薬を内服している可能性があるため、内服歴や発作歴に関しても確認が必要です。

参考文献

●日本神経学会,監:てんかん診療ガイドライン2018.医学書院,2018.
●Ingrid E Scheffer,et al:ILAE classification of the epilepsies: Position paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology.Epilepsia 2017;58(4):512-21.
●日本てんかん学会分類・用語委員会,編:ILAE てんかん分類:ILAE 分類・用語委員会の公式声明.(2025年9月24日閲覧) https://www.ilae.org/files/ilaeGuideline/Schefer-Epilepsia-2017.pdf

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