第1回 末梢静脈カテーテル固定の統一で、安全安心な看護を実現する~課題共有から製品決定まで~【PR】
- 公開日: 2015/5/24
多くの入院患者さんに対して行われる輸液療法。体液バランス、電解質補正や薬剤投与など医療現場では欠かせない治療です。
しかし、その反面、医療事故の原因となったり、感染リスクとなったりすることがあります。そこで今回は、より安全安心な看護を目指して、3人の看護師が協力し合い、末梢静脈カテーテルの固定方法の統一を実現した事例を紹介します。
「救急患者を断らない」現場で困っていたこととは?
宮城県沿岸部石巻市に位置する石巻赤十字病院は、「東北一活気ある病院」という目標を掲げ、救急患者さんを断らない医療を実践しています。
診療科は全部で27科。452床をスタッフ1059人で支えています。患者さんの6割が緊急入院であるため、入院から退院までの転棟回数が多く、点滴セットや固定材料をはじめ、患者さんとともに移動する物品は院内で統一する必要性がありました。この必要性について阿部師長は、こう説明します。
「救急病棟から一般病棟に患者さんが転棟して来たときに救急病棟だけが使っている物品があったり、使用方法が異なったりすると、一般病棟の看護師は戸惑ってしまうことがあります。看護の安全性を向上させるには、看護師が日常的に扱う物品とその使用方法を院内で統一することが必要だと考えています。しかし以前は、末梢静脈カテーテルの固定方法が統一されてなく、それを統一するにあたって感染対策・接続部による皮膚への圧迫の軽減・だれでも簡単にできる方法などの条件を満たす固定方法が見つからず、困っていました」
このような状況から3人の看護師が協力し合い、末梢静脈カテーテルの固定方法の統一を実現した事例を紹介します。
皮膚・排泄ケア認定看護師 褥瘡対策チーム 阿部晶子さん
――末梢静脈カテーテルの固定方法が統一されて、2015年3月現在で約1年が経ちましたが、最初に話し合うきっかけとなった出来事があれば教えてください。
板橋さん:感染対策チーム(以下、ICT)では感染対策のためのマニュアルを日々改訂しており、そのマニュアルの順守状況を確認するラウンドを2013年度から始めました。まずは末梢静脈カテーテルや中心静脈カテーテル、膀胱留置カテーテルの管理がマニュアル通りできているのかを確認しました。すると、現場では実にさまざまな方法で固定が行われていることがわかりました。さらに、接続部による皮膚への圧迫を軽減するために、未滅菌のクッション性のあるフォームテープを使用していたことは、血流感染のリスクになると以前から考えていました。
未滅菌のクッション性のあるフォームテープで圧迫を軽減していた
阿部さん:当時の点滴静脈注射看護手順には、「(以前使用していた)フィルムドレッシングで固定する」とだけ記載されていたため、現場スタッフ個人の判断で、いろいろな方法で固定してしまっていたのが実状でした。
私と板橋さんはロッカー室などでざっくばらんに話す機会が多いため、以前から未滅菌のフォームテープの代わりになるものはないかと相談をしていました。
長い間2人で考えたり迷ったりして、話し合いを繰り返していましたが、「やっぱり私たちだけでは解決できない・・・」とくじけかけたときに、佐々木さんを中心とした静脈注射班※が動き出してくれたのです。
(※静脈注射班は、現任教育委員会に所属し、静脈注射に特化した新人研修やインストラクター育成を行っている。)
佐々木さん:静脈注射班では、感染対策マニュアルの改訂をきっかけに、固定方法が統一されていないことを改めて認識しました。そこで患者さんの安全を守るために新人ナースをはじめ、だれにでもわかりやすい点滴静脈注射看護手順に改訂し、ローカルルールを廃止して、固定方法を統一することを目標に掲げました。
看護師 静脈注射班 佐々木武志さん
――目標を実現するために行ったことを教えてください。
佐々木さん:まず統一化のための活動時間を確保したいと考え、現任教育委員会の副看護部長に相談したところ、すぐに許可をいただくことができ、さっそく板橋さんと阿部さんに相談をもちかけました。
阿部さん: 佐々木さんから相談を受けて、静脈注射班の会議で話し合いをすれば、すべての関係者とスムーズに意見交換ができると思ったので、すぐに翌月の会議に板橋さんと出席する手配をしました。会議の前には、フィルムドレッシングのカタログの束を開いて、皮膚への圧迫を軽減でき、現場で使いやすい形状という2つの条件にあてはまり、さらに皮膚の研究と、それを活かした製品開発に長けているメーカーである3社の製品を選びました。そのうちの1つがアルケアさんのフィックスキット・PVだったのです。
板橋さん:院内では「皮膚への貼りものといえば阿部さんに相談しよう!」という雰囲気があるくらい、阿部さんはドレッシング材やテープに詳しいんです。
阿部さん:会議ではそれぞれの製品の特徴を説明しました。フィックスキット・PVについては、末梢静脈カテーテルを安全に固定するために必要なフィルムドレッシングだけでなくラインを固定するテープまでの一式が滅菌されワンセットに収められていることを説明したところ、すべての参加者が関心を示してくれました。
板橋さん:阿部さんには「ICTの観点から見ても、これ以外は目に入りません」と伝えました。 実際に使っていくのは、ICTではなく現場ですから、スタッフが混乱することを絶対に避けたかったため、使い方がわかりやすいことは選択する上での重要なポイントになります。フィックスキット・PVであれば、現場が混乱することはないと思いました。
感染管理認定看護師 感染対策チーム 板橋美絵さん
佐々木さん:会議で賛同を得られたことから、翌月の会議までに、フィックスキット・PVを使った40症例の結果を報告することになりました。 症例を集めていくと皮膚トラブルもなく、はがれやすくもなく、使いやすさも問題がないという結果が出ました。1例だけ、はがれやすいという報告があったのですが、それは以前使用していたフィルムドレッシングでも同じ状態になってしまう患者さんだったので、ほぼ問題なく使用できると判断しました。
阿部さん:現場の悩みであった接続部による皮膚への圧迫に対しては、セット内のテープを下に1枚敷き、さらにフィルムドレッシングで包み込むように固定し皮膚から浮かすことで、高齢患者さんの乾燥した脆弱な皮膚も十分保護ができることを説明しました。 またインフェクションコントロールドクターが「フィックスキット・PVの吸収パッド内には、抗菌作用をもつ亜鉛が配合されており、刺入部周囲の清潔度を高く維持することができるので、血流感染リスクの減少も期待したい」と発言したことも導入への後押しとなりました。
次回、現場スタッフが安全に安心して使用できるよう行った取り組みについてご紹介します。