第3回 糖尿病看護に大事なこと|足病変の早期発見、早期介入、患者さんへのケアQ&A【PR】
- 公開日: 2026/1/21
左から末丸大悟 医師、松本夏希 医師、石川恵 看護師糖尿病患者さんに起こる足病変について前橋日赤糖友会で療養指導に携わる医師および看護師に、ナース専科の読者のみなさんから寄せられた質問に回答していただきました。
糖尿病看護に大事なこと
糖尿病患者さんの看護において、大事にしていることが2つあります。1つは、患者さんの捉え方と看護です。足病変のケアにあたるとき、足だけをみるのではなく、「糖尿病をもちながら生活する人」と捉えるようにしています。糖尿病という疾患も、足病変も、患者さんにとってはほんの一部でしかなく、生きている上で大事にしていることがほかにあると思います。そして患者さんが“自分らしく”生きることが阻害されてしまうと、糖尿病や足のセルフケアを続けるのは難しくなってしまうと思います。患者さんが大事にしていることを医療者も共有し、最終的に患者さん自身が糖尿病や足のケアに関して何ができそうかを自己決定してもらうという過程を踏むことが重要だと思っています。糖尿病看護は、糖尿病をもちながらその人らしく生きることを支えることだと考えています。
もう1つは、家族などのサポートパーソンへの看護のあり方です。糖尿病の領域では、患者さん本人が実施できないことを家族などのサポートパーソンにお願いすることがよくあります。家族に、患者さんとって必要なケアを具体的に伝えることは医療者の役割ですが、同時に、それが家族の負担になっていないかを確認する必要があります。家族にも、ほかに大きな役割や生きる上で大事にしていることがあるのです。それが患者さんのケアを代替することで阻害されてしまうと、患者さんとの関係も悪化してしまう可能性が生じます。患者さんが「いつもありがとう」と言えるような良好な関係性を保てるよう支援していくことも大切だと思います。
Q1 早期発見、早期治療の介入のポイント、看護師はどのようなことに気をつけるとよいか、観察や日常ケアについても教えてください。また、患者さんへの指導のポイントがありましたら、知りたいです。
早期発見のためには、足の観察が何より重要です。足の皮膚の色(蒼白、発赤など)、皮膚の温度、腫脹の有無、爪や角質の状態などを観察し、特に発赤や腫脹、疼痛、傷の治りが悪いといった炎症のサインを見逃さないことが大切です。靴や装具の利用状況やフィット感も確認します。
また、早期介入を可能にするためにも、どんな小さなトラブルでもすぐに医師に報告するよう、患者さんに伝えておきます。
<看護師の役割>
足病変の早期発見の必要性を理解してもらうため、足病変の写真を使って視覚的に訴えかけるのも有効です。また足切断に至ったら生活がどのように変化するかを想起してもらい、予防への意識を高めてもらうこともあります。そして、患者さんにどんな足病変のリスク(11項目、第2回解説参照)があるかを、一緒にチェックしていきます。
音叉やモノフィラメントによる検査で感覚鈍麻の部位や程度を調べ、それを患者さんにも理解してもらいます。足で感じなかった音叉を、手などに当てて感じてもらうと、足の感覚がどれだけ鈍いのかを実感してもらうことができます。そのうえで、後述するセルフケアの方法を指導します。日常生活の中で何ができそうかを相談しながら、患者さんの自己決定を促すことが大切です。そして、次の来院時にも足を見せてもらい、ケアの効果が表れていたら、実践できたことを患者さんと一緒に喜び、継続できるよう意識を強化します。
<患者さんが日常生活の中でできること>
洗顔など毎日必ず行う生活行動と結びつけて、毎日のフットチェックを習慣化します。足趾の変形や傷つきやすい部位など、特に注意して観察する必要がある部分も伝えておきます。見にくいところは鏡や拡大鏡を使ったり、写真を撮ったり、家族や訪問看護師に見てもらったりするとよいでしょう。さらに足を触り、感覚鈍麻の有無や皮膚温などを確認します。
出血したらわかるように白い靴下を履きます。靴は、きつすぎず、足に合っていて、靴ずれを起こさず、足趾の先や変形部が圧迫されないものを選びます。
家の中で足に怪我をしないように、できるだけ床に物を置かないよう整理整頓し、家具の角などにはクッション材を貼りつけます。
熱傷を予防するため、足浴や入浴の際の温度は、必ず温度計や手で確認します。カイロは原則として使わないこととし、どうしても使う場合は、直接皮膚に当たらないようにして、頻回に皮膚の状態を確認する必要があります。また、こたつは長時間使わないようにします。
入浴時は、ナイロンタオルなどでなく、柔らかなタオルやスポンジを使います。入浴後は、足の趾間はしっかり乾かします。糖尿病患者さんは、自律神経障害による皮脂の分泌の低下や、高血糖による身体の脱水傾向、末梢循環障害による皮膚への水分供給の低下などが原因で、皮膚が乾燥しやすいため、保湿も大切です。乾燥が強い部分や角質が厚い部分には保湿クリームでマッサージするのも有効です(傷や潰瘍部には塗らないよう注意)。洗浄剤や保湿剤は、できれば皮膚と同じ弱酸性のものを選びます。
巻き爪や胼胝、白癬症などは自己判断で対応せず、早めに医師に相談するよう伝えておきます。
<高血糖と皮膚の変化をもたらすAGEs>
高血糖の状態が続くと、余分なブドウ糖とタンパク質や脂質が非酵素的に結合し(糖化)、最終的にAGEs(終末糖化産物)という物質ができます。AGEsは、皮膚のコラーゲンやエラスチンに架橋を形成し、正常なつながりを壊し、皮膚の弾力性や柔軟性を失わせます。角層の保湿因子(NMF)やセラミドの代謝にも影響を及ぼし、水分保持力が低下し、乾燥が進みます。血管壁や基底膜にもAGEsが沈着し、微小循環障害が進み、皮膚への水分や栄養の供給がさらに低下、皮脂欠乏と乾燥が進み、感染リスクも増大します。したがって、血糖コントロールは、皮膚を健全な状態に保つためにも重要なのです。
Q2 患者さんがどんなことを不安に思っているかを知りたいです。
患者さんは、足を失うのではないか、また傷ができるのではないかといった不安や、自分でケアが十分にできないのではといった不安を抱えていることが多いと思います。足切断だけは免れたい、足切断をした著名人の名前を出して、あの人のようにはなりたくないと言う方もいます。とはいうものの、何がどうなって足切断に至るのかわからず、漠然と怖いと思っている方も少なくありません。不安を抱えている患者さんには、常に安心感を与えるような声かけが必要です。また、トラブルがあればきちんと対応することと、それはできるだけ早いほうがよいことから、「異変に気づいて早めに適切な対処ができれば足切断は予防できるかもしれませんよ」と伝えておくことが大切だと思います。
その一方で、「足の指くらいなら切断しても生活は変わらないでしょ」と言う方もいます。足の指1本の切断でも、はじめは車椅子生活になるので、生活が変わらないということはありませんよ、と説明しますが、どう説明しても「困らない」と言う方がいるのも事実です。
Q3 無自覚で進行していく患者さんが多く、切断した人もみてきました。早く気づかせるためのポイント、本人に自覚してもらうにはどうしたらよいのかなど知りたいです。
無自覚な人に自覚してもらうのは、なかなか難しいのが現実ですが、実際に足切断に至った例の写真などを見せて、小さな傷がこのような状態になってしまうと説明することがあります。また、下肢切断後の5年生存率などのデータ(糖尿病足病変患者さんの5年生存率55%、足病変再発患者さんの5年生存率33%、足病変再発率71%)1)を提示したり、足切断に至った際の生活や、自分が大事にしていることにどんな影響があるかをイメージしてもらい、例えば5年後にどうしていたいか、ずっと元気でいるために、今何ができるかを、患者さんと一緒に考えることもあります。ただし、実例の写真や生存率の数値などは患者さんにとっては厳しい内容で、脅しのようになって不安をあおってしまう可能性もありますから、対象のリアクションをみながら、慎重に説明の仕方を工夫しなければいけないと思います。
また、フットケアチェック表を患者さんと一緒に使い、日常のケアを習慣化してもらうこともあります。家族や介護スタッフに、患者さんへの声かけを依頼しておくのも有効だと思います。
Q4 整形外科に所属しているため数年に1回は糖尿病に伴う下肢切断を診ます。下肢切断後の観察・メンタルケアについて知りたいです。
<観察ポイント>
下肢切断後は、一般的な術後の観察事項のほか、断端の発赤、滲出液、疼痛などの感染徴候の有無、浮腫、幻肢痛の有無などを観察します。切断して失った足に痛みを感じる幻肢痛は、8割くらいの患者さんにみられるといわれています。
術後に装具を装着する場合は、装着した部分に潰瘍などのトラブルが起こることがあるので注意が必要です。
また、健側への負担や皮膚障害の有無も忘れずに観察することが大切です。
<メンタルケア>
まず、下肢を失ったことの喪失感や羞恥心、社会生活への不安があります。入院中、カーテンを閉め切って周りとのかかわりを拒絶する人もいます。切断した足は埋葬するのですが、それを聞いて心を痛める方もいます。また、今まであった足がなくなって、スムーズに歩けなくなって落ち込んでしまうこともあります。糖尿病の罹病期間が長く、自律神経障害があると、起立性低血圧が起きやすくなります。下肢切断後、装具を装着してリハビリをしようとしても、フラフラして気持ちが悪くなり、思うようにリハビリができなくて悩んでしまう方もいます。そのような場合は、患者さんの話をよく聞くことに尽きると思います。また、義足の装着やリハビリで何ができるようになるかを、具体的に伝えることも大切です。
糖尿病の治療やケアをしっかりやっておけばよかったという後悔と自責の念に苛まれることもあります。ただ、なぜ切断に至ったのかがよくわからないでいる方も少なくありません。残ったほうの足も切断することになるのは耐えられないと思っていて、フットケアについて関心が高まっているタイミングでもあるので、切断に至った経緯や原因などを今一度丁寧に振り返り、これからのフットケアについて動機付けを行います。
術前に義肢装具士などに会って話を聞きたかったという患者さんも少なくありません。術前・術後を含めて、義肢装具士や理学療法士などによる介入や、精神面へのサポートとして臨床心理士によるカウンセリングなど、多職種連携も重要です。
「外の景色が見えるってやっぱりいいよね。空とか雲とか山とか癒されるよね。ようやく希望がみえてきたよ。これまでは寝たきりで集中治療室の青い天井しか見えなかったからさ」
ある夏の日、空雲に包まれた赤城山を指さしながら、前橋赤十字病院の集中治療室で糖尿病性ケトアシドーシスからの回復段階にある患者さんが話してくださいました。
後日、元気に退院された患者さんが外来を受診された際、当時研修医であった私は末丸先生の外来に同席させてもらいました。
「稚拙な短歌ですみません」とおっしゃりながら末丸先生が短歌を披露されました。
「大空に希望を描く瞳へと映る笑顔で寄り添う心」
「大空に希望を描く瞳」は、早く元気になって退院したいと希(こいねが)う患者さんの瞳を意味し、「瞳へと映る笑顔」は、医師の笑顔を意味するとおっしゃっていました。
「人を喜ばせられる、そしてその喜ぶ姿を直接見ることができる医師になりたい」と夢みた医学生時代の言葉をふと思い出しました。
早く元気になりたいと希う患者さんを前にしたら、どんなに疲れていても笑顔で寄り添うよう心がけたいと思っています。
(「前橋赤十字病院から眺めた夏の赤城山」 末丸大悟先生ご提供)引用文献
1)栗田征一郎,他:糖尿病足病変で入院加療した患者の実態と生命予後に影響する因子の解明.糖尿病 2018;61(1):1-8.
ミノン全身シャンプー泡タイプ

顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。
[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)
ミノン全身保湿ミルク
ミノン全身保湿クリーム

敏感肌、バリア機能が乱れやすい肌を支える全身に使える「塗るミノン」。広い範囲のケアにはべたつかないミルクタイプ、乾燥のつらい部位にぴたっと密着感のあるクリームタイプ。
[医薬部外品]販売名:DSミルクz
200mL、400mL、320mL(つめかえ用)
販売名:DSクリームz
90g
詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/
がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。
