【連載】がん治療中も“その人”らしい生活を―患者さんの治療継続を支えるアピアランスケアの取り組み
治療中でも楽しく生活できるようにサポートを実施―大阪公立大学医学部附属病院の取り組み【PR】
- 公開日: 2026/2/27
大阪公立大学医学部附属病院は、地域がん診療連携拠点病院として、がんの集学的治療を提供しています。化学療法センターは、毎月1,000件以上の化学療法が行われ、通院するがん患者さんのQOLを大切にした治療に努めています。アピアランスケアでは、がん化学療法看護認定看護師の資格をもつ岩見明子さんが中心になって取り組み、患者さんへの情報提供やセルフケアの指導などを行っています。ここでは、その活動の一端を紹介します。
病棟から外来へ―変化したアピアランスケアへの意識
血液内科病棟での看護をきっかけに、これまで十数年にわたり、がん患者さんにかかわってきました。病棟にいたときに管理職になるのか、このまま臨床に残るか、キャリアプランを考えるタイミングがあり、がん治療の臨床現場で看護をしていきたいという思いが強く、がん化学療法看護認定看護師資格を取得しました。その後は外来の化学療法センターに異動し、国立がん研究センター中央病院の医療従事者向けアピアランスケア研修会*を受講する機会を得て、院内での教育活動などを通じて、アピアランスケアにも積極的に取り組むようになりました。
病棟で勤務していた当時は、まだアピアランスケアという言葉もありませんでしたし、血液内科ということもあり、まずは命を助けることのほうが大事だからと抗がん薬治療の開始が優先され、外見のことは置いておくという状況でした。皮膚障害の副作用が現れる患者さんも多いですが、体調面から患者さん自身でケアすることは難しかったため、保湿剤の全身塗布を行いながら、復学や復職に備えてウィッグの話題を提供するなど、皮膚障害のケアの延長線上で対応していました。
化学療法センターに異動したときに、病棟とは異なり、患者さんは生活をしながら治療を受けるため、外見の変化による苦痛を抱える人が多く、治療や社会生活が困難になる患者さんも少なくないことに気づきました。そうした患者さんの看護を通して、アピアランスケアに対する意識が変わっていきました。
2人の患者さんからの学び
これまでに強く印象に残っている2人の患者さんがいます。1人は70歳代男性、初回化学療法を受ける患者さんで、治療直前になって、化学療法の副作用で脱毛が起こることに対して、「そんなことは知らなかった!」と治療を拒否されたのです。よくよく話をきいてみると、患者さんはおしゃれな人で、同級生と比べて毛量が多いことが自慢で、お手入れも熱心に行っていて、それが自分のアイデンティティとなっていたようなのです。
副作用について説明をしたうえで、同意書をとっていても、患者さんがきちんと理解しているかどうかの確認が足りなかったと反省しました。それは、私たち医療者に“高齢の男性だから外見の変化はそんなに気にしないだろう”という勝手な思い込みがあったからかもしれません。このことをきっかけに、どんな患者さんに対しても必要な情報を提供して、患者さん自身が納得して治療を受けることが大切だと気づきました。
もう1人は、生活の変化で皮膚障害が悪化してしまった高齢の独居男性患者さんです。患者さんは外用剤の塗布など熱心にスキンケアに取り組み、脱毛をカバーするためにいつも帽子をかぶって身なりを整えていました。通院時に観察してみると、顔はきれいになっていましたが、爪囲炎を発症していました。爪囲炎の診察中、「ついでにこれも」と患者さんが帽子を外すと、頭皮は炎症を起こし、化膿して血液や抜けた毛がこびりついている状態でした。医師も私も衝撃を受け、事情を聞いてみると、自宅にお風呂がなく銭湯に通っていましたが、外用剤の油分で浴場が汚れると言われて、銭湯に行きづらくなっていたのです。
入浴ができなくなってからも、顔の洗浄は続けていた一方で、頭部に関しては脱毛が進んでいたこともあって、タオルで拭く程度だったようです。これも“入浴はしているだろう”、“頭も洗っているだろう”という私たちの思い込みがあったのだと思います。特に銭湯を利用していたことから、入浴習慣が断たれてしまったのは想定外のことでした。この事例を通し、患者さんの生活全般をみて、やりたくてもできない環境で過ごしていないかを確認するとともに、全身を上から下まで丁寧に観察していく必要性を痛感しました。特に男性患者さんには毛がないから頭を洗わないという人が多く、抜けてしまってもきちんとシャンプーで洗わないといけないといったスキンケアの指導がとても大切だと認識しました。
がん患者さん向けのガイド制作の取り組み
こうした体験をスタッフ間で共有し、ケアに活かせるように努めています。当院では、がん分野の専門看護師と認定看護師が共同で「がん看護リンクナース」を育成しています。各病棟から代表1名の看護師が数人ずつのチームを作ってがん看護上の課題の解決に取り組んでいます。リンクナースのメンバーは毎年変わり、がんに関連したさまざまなテーマに取り組んでいます。アピアランスケアに関しては、アピアランスケアの概要や脱毛前後のケア、スキンケア、爪のケアの方法についてまとめた患者さん向けガイドを作成しています。
化学療法センターでは、患者さんへの説明やセルフケア指導は主に抗がん薬の点滴中に行っていますが、口頭ですべてを伝えるのは難しく、患者さんも覚えきれないと思いますので、家に持ち帰ることができる資料が必要と考えました。資料は、病院ウェブサイトでも『がん患者さんのためのアピアランスケアガイド』として公開されています(図)。
図 がん患者さんのためのアピアランスケアガイド

https://www.hosp.omu.ac.jp/consultation/cancer/cancer-haircare/
アピアランスケアという概念が浸透し始めた2020年頃から、がん看護リンクナースが制作を担当し、改編を重ねて現在の形になりました。改編の過程では、AYA世代に限らず、どの年代にも活用してもらえるように配慮しました。多くのスタッフが制作を通してアピアランスケアを学ぶことにより、根拠をもってケアを提供してほしいと考えました。
院内への教育活動として、年に1回、アピアランスケアの研修を実施しています。アピアランスケアの考え方を理解し、目的をもってケアをしていくと、患者さんの受け止めも違ってくるのではないかと思っています。病棟で勤務していたときは、患者さんからアピアランスに関する相談を受ける機会があまりなく、社会とのつながりを意識した看護はできていなかった、という私自身の反省をもとに、院内研修では、患者さんのがん治療と生活の両立をささえられるような看護師の育成を目指しています。
夕方の遅い時間の開催で任意参加のため、研修の受講者数は多くはありませんが、今後は時間に縛られずに多くのスタッフが受講できるように、動画配信を計画しているところです。
スキンケアへのかかわりが大切
これまでアピアランスケアにかかわってきて、特に難しいと感じているのがスキンケアの指導です。脱毛とは違い、患者さんの中には、皮膚が荒れていたり爪が変色していたりしても、副作用だと意識していない人やもう高齢だからいいと放置する人もいます。しかし、皮膚の乾燥が強くなると血管穿刺やテープ固定が困難になり、治療にも大きく影響します。スキンケアは皮膚障害の副作用が予測されるケースだけではなく、すべての患者さんに必要ですが、指導が行き届かないところもあるように感じています。
保湿剤の使用量が少な過ぎることは多くの患者さんに共通していますので、たっぷり使うことを繰り返し指導しています。スキンケアは日常の身だしなみを整える行動の一部なので、特別な難しい方法ではなく自分で行え継続できるよう、患者さんと一緒に考えるようにしています。
患者さんに楽しく生活してもらうために
私がアピアランスケアを実践していくうえで大切にしているのは、抗がん薬の治療中であっても“患者さんが楽しく生活できること”です。治療を受けるためだけに生きているのではなく、楽しく外に遊びに行ったり、家族や大切な人たちと有意義に過ごしたりしてほしいと思うのです。患者さんの中には、仕事を休んで治療をしているのだから遊びに行くことはできないと、家にひきこもっている人もいますので、「遊びに出かけたりして有意義に過ごしてほしい」と本人や家族に伝えるようにしています。社会とつながるときに、外見の変化がハードルになるのであれば、それをできる限り取り除けるようにサポートしたいと思っています。
また、当院では、院内美容室と協力してウィッグやメイク、ネイルケアのアドバイスなどの情報提供やアピアランスケア相談会を月2回実施していますので、必要に応じて患者さんに紹介しています。
アピアランスケアに限らず、就労のことなども支援したい患者さんがかなりいますので、化学療法などのがん治療を生活と両立させるためのサポートをしていきたいと考えています。アピアランスにかかわる問題は、外見だけではなく、社会や家族との関係が関与するなど複雑で、症状に対する治療やケアだけでは根本的な解決にはならないことが少なくありません。じっくりと話を聞き、適切なサポートをしていくには、時間が足りないことを実感しています。私自身でやれることには限りがありますので、自分も勉強しながら、看護師向けの教育活動を通して、いろいろな看護師がアピアランスケアに取り組めるようベースの看護の力を上げていければと考えています。
*医療従事者向けアピアランスケア研修会 応用編
国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センターが実施する全国のがん診療連携拠点病院、地域がん診療病院、小児がん拠点病院に勤務する医療者を対象とした研修会。医療機関内でがん治療に携わっている医療職(医師、看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーなど)に向けたe-learningも開講している。
ミノン全身シャンプー泡タイプ

顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。
[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)
ミノン全身保湿ミルク
ミノン全身保湿クリーム

敏感肌、バリア機能が乱れやすい肌を支える全身に使える「塗るミノン」。広い範囲のケアにはべたつかないミルクタイプ、乾燥のつらい部位にぴたっと密着感のあるクリームタイプ。
[医薬部外品]販売名:DSミルクz
200mL、400mL、320mL(つめかえ用)
販売名:DSクリームz
90g
詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/
がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。
