第2回 糖尿病足病変を発症させないためのフットケア【PR】
- 公開日: 2026/1/16
左から末丸大悟 医師、松本夏希 医師、石川恵 看護師糖尿病患者さんに起こる足病変について前橋日赤糖友会で療養指導に携わる医師および看護師にご解説いただきました。
糖尿病足病変のハイリスク要因
2008年に診療報酬が改定され、医師や看護師、患者さんの要件等を満たす場合、糖尿病患者さんへのフットケアが「糖尿病合併症管理料」として、外来のみ月1回170点が認められました。患者さん側の要件としては、ア:足潰瘍や足趾・下肢切断の既往、イ:閉塞性動脈硬化症(血流の障害)、ウ:糖尿病神経障害といった糖尿病足病変ハイリスク要因を有する外来患者とされています。
糖尿病合併症管理料 170点
糖尿病合併症管理料は、次に掲げるいずれかの糖尿病足病変ハイリスク要因を有する入院中の患者以外の患者(通院する患者のことをいい、在宅での療養を行う患者を除く。)に対し、医師が糖尿病足病変に関する指導の必要性があると認めた場合に、月1回に限り算定する。
ア 足潰瘍、足趾・下肢切断既往
イ 閉塞性動脈硬化症
ウ 糖尿病神経障害
<施設基準>
イ :当該保険医療機関内に糖尿病足病変の指導を担当する専任の常勤医師(当該指導について相当な経験を有するものに限る。)が配置されていること。
ロ :当該保険医療機関内に糖尿病足病変の指導を担当する専任の看護師(当該指導について相当な経験を有し、かつ、当該指導に係る研修を受けたものに限る。)が配置されていること。
糖尿病足病変のハイリスク要因として、11項目を挙げてみました(表1)。
表1 糖尿病足病変のハイリスク因子
| ①足病変や足趾切断の既往がある患者さん |
| ②透析患者さん(→血管障害に伴う壊疽リスクが高い) (糖尿病患者:1.63倍、糖尿病ではない透析患者:82.6倍、糖尿病性の透析患者:481.4倍)1) |
| ③末梢動脈性疾患(PAD)がある患者さん |
| ④ヘビースモーカー |
| ⑤糖尿病神経障害が高度な患者さん |
| ⑥足趾や爪の変形、胼胝を有する患者さん |
| ⑦足病変自体を知らない患者さん |
| ⑧血糖コントロールが不十分な患者さん |
| ⑨視力障害で足の観察や爪切りができない患者さん |
| ⑩外傷を受ける機会が多い患者さん |
| ⑪一人暮らしの高齢者で足の衛生保持が困難な患者さん |
このように、足病変のリスクが高い糖尿病患者さんは多岐に渡り、糖尿病合併症管理料の要件にあてはまる患者さんは多く存在し、足病変の早期発見・早期介入のためには、フットケアを外来でできるように促していく必要があると思っています。2008年の診療報酬の改定後に、フットケアに興味をもつ看護師が増え、糖尿病合併症管理料請求の認定を受けた施設も増えてきているようです。
その一方で、とにかく患者数が多く、限られた診療時間内に足までみるのは難しい実情もあるようです。看護師の人手不足、実施場所などの運営面の問題や、糖尿病内科も含めた医師の無関心や知識不足、充実した研修システムの未整備など、いくつもの障壁があります。
足病変の予防に必要なこと
糖尿病合併症の予防には、早期発見、早期介入が重要です。糖尿病網膜症では眼科受診を勧めること、糖尿病腎症では尿検査で病状を把握することが早期の介入となりますが、糖尿病足病変の場合は足の観察が欠かせません。糖尿病足病変に関しては、小さなトラブルを見逃さないことが最大の予防です。①毎日フットチェックをすること、②清潔と保湿の習慣をもつこと、③靴と生活習慣の見直しの3本柱が重要です。糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループにより、「多くの足潰瘍は、定期的な足の点検、フットケアの実践、適切な靴の選択によって予防可能である」とのインターナショナルコンセンサス(1999年)が示されています。
混雑する外来ですべての患者さんに靴と靴下を脱いでもらい、足をみて、終わったら靴下と靴を履いてもらうという作業をするのは難しいのも現実です。しかし、実際に観察を行ってみると、リスクの高い患者さんが多くみられます。また、足・爪白癬が疑われて皮膚科受診を勧めても、受診しない患者さんが意外に多いという実情もあります。このような場合には、短時間で足病変のリスクをチェックできるチェックシートを使用するのもよいでしょう。
●糖尿病足病変 簡易記録用紙
糖尿病足病変に関する項目を記載し、糖尿病足病変のリスクを管理するシート。

●AAAスコアシート
糖尿病足病変のリスクが高い患者さんを簡便にスクリーニングできる指標で、糖尿病足潰瘍患者さんの下肢切断リスク因子研究の成果から導き出されたツール。糖尿病治療期間が15年以上を2点、両眼の矯正視力の低下が0.5以下なら6点、eGFRの低下が60mL/min以下は2点、独身は3点、肉体労働者は4点の5項目でチェックし、合計が7点以上の場合は足病変国際ワーキンググループのリスク分類のグループ1以上である可能性が高く、半年に1回程度の足の診察が適正とされています。
https://www.aaa-amputation.net/aaa_score/

●3分間足病チェック
病歴の聴取と足の診察とフットケア教育を1分ずつで実施できます。チェックすべき項目が網羅されているので、日常診療の中で役立つと思います。
https://www.aaa-amputation.net/aaa_score/3minutes_footcheck/index.html

足と全身の観察ポイント
まずは、患者さんにフットチェックを推奨してみましょう。毎日、両足の足底、趾間、踵部、足背に異常がないかを観察します(表2)。患者さん自身では見えにくいところは鏡を使ったり、家族に協力してもらったりして観察するように伝えます。
表2 観察のポイント
| 観察のポイント | チェック内容 |
| 色の変化 | 感染・血流障害のサインである発赤・紫斑・黒色変化がないか |
| 皮膚の状態 | 乾燥やひび割れ、掻痒感、浮腫、白癬、皮疹、脱毛などの異常がないか、爪に肥厚や白濁、巻き爪などの問題はないか |
| 傷や出血 | 切創、擦過傷、表皮剥離、出血や皮下血腫などがないか |
| 変形 | 外反母趾やハンマートゥ、舟底変形、扁平足や開帳足、シャルコー関節(糖尿病性関節症)などの変形がないか |
| 感覚 | しびれや冷感、痛み、感覚が鈍いなどの感覚異常の有無の確認 |
足趾を背屈したとき、足背外側に短趾伸筋の筋腹が盛り上がるかをみることがあります(図1)。盛り上がりがない場合、筋が萎縮している可能性があり、この筋を支配する腓骨神経に神経障害が起きていることが疑われます。
図1 短趾伸筋(背屈時)

外来で診察室に入ってくるときの歩き方や座り方、靴や靴下の脱ぎ方や履き方などを観察すれば麻痺の有無が、靴底の減り方からは歩き方の癖がわかります。何を履いているかも重要です。夏に裸足でサンダルを履いている場合や、黒い靴下を履いている場合は、指導が必要です。靴がその患者さんの足に合っているか、中敷や靴下に出血や滲出液がついていないか、下肢や全身の浮腫、他の合併症の有無も確認します。また高齢者の場合は、セルフケアを行うにあたり認知症の有無や、家族の協力が得られるかといった情報も必要です。
フットケアの方法
当院のフットケア外来では、①問診(全身状態、生活状況、セルフケアの状況など)、②観察(歩き方、靴、足の状態、血流など)、③処置(爪切り、胼胝・鶏眼の処置など)の流れで実施しています。これらと並行して、糖尿病の療養指導も行っています。フットケアの具体的な方法を紹介しましょう。
清潔を保つ
感染予防のため、足を清潔に保ちます。毎日、ぬるま湯(39℃以下)と洗浄剤で足を洗い、清潔なタオルで拭き、特に白癬症になりやすい趾間はよく乾かし、その後、保湿します。踵など乾燥して亀裂を起こしやすい部位は入念に保湿します。ワセリンや市販の一般的な保湿クリームでよいので、十分な量を使うことが大切です。
爪・皮膚のケア
爪切りの際は、深爪をしないよう注意します。フットケア外来では、ゾンデを使って爪と皮膚の境界を確認したうえで、ニッパーやグラインダー、爪やすりを使って少しずつ整えます。爪はまずスクエアにカットしてから、爪ヤスリで角を削り落とします。患者さんが自分で爪切りをするときは、ニッパー等は使わず、爪やすりで削るようにします。視覚障害などで自分ではできない方や、爪がひどく肥厚している場合は、無理に自分で行わず、家族や訪問看護師に切ってもらうか、フットケア外来や皮膚科を受診してもらうようにしています。
胼胝や鶏眼も、自分で処置するのではなく、フットケア外来や皮膚科を受診するよう指導します。
また、セルフケアとして毎日足に傷や変色などの異常がないか観察し、発赤や腫脹、熱感、疼痛、滲出物などの異常があったら、すぐに医療機関に相談するよう伝えます。白癬症があるときは、皮膚が剥がれたようなところからさらなる感染を起こし、蜂窩織炎を起こすこともあるため、すぐに治療を開始することが大切です。
足の保護
足にあった靴を選ぶのも重要です。どこも圧迫されず、指先に少し余裕があり、かかとの部分がしっかりホールドされていること、足の甲でしっかり固定され、前滑りしないことが大切です。靴を履くときは、毎回必ず、中に異物がないか確認するよう伝えます。靴べらを使って正しく履き、当たっていたり、きつく締め付けられたりしているところがないかを確認します。
神経障害があると温度の感覚が鈍くなり、こたつなどの暖房器具で熱傷や低温火傷を負うことがあります。ヒーターなどの温度調節に注意し、こたつで寝てしまうようなことがないようにする、入浴の際も、湯温が高すぎないように注意し、温度計などで確認するように伝えます。毎日入浴することはよいことですが、皮膚がふやけると傷つきやすくなるので、長時間の入浴は避けるようにします。
足先を怪我しないように、家の中でも靴下を履くように指導します。靴下は、出血があったらすぐにわかるように白いものにし、縫い目が皮膚を圧迫するため、縫い目が当たらないものが望ましいです。足に合ったサイズで、締め付けがないものを選び、足が蒸れやすい場合は通気性のよいもの、冷え性の人は保温性のあるものなど、足や生活に合ったものを選ぶようにします。
生活習慣
たばこに含まれるニコチンは、末梢血管を収縮させ、血流障害を悪化させるので、喫煙者には禁煙するよう指導します。
令和元年(2018年)を迎えたころ、糖尿病の専門医を育てる「研修指導医」という資格を目指してレポート作成に励んでいました。レポートに記載した西暦を眺めていたとき、ふと令和の西暦変換法を思いつきました。西暦の下3桁『018』に令和の年数を足すと西暦になり、しかもそれが『令和』と読めてしまう偶然に驚いていました。そんな幕開けの令和元年でしたが、早々に窮地に立たされました。それは、糖尿病教育の一環として重要な糖尿病患者会「前橋日赤糖友会」が、諸事情により存続の危機に見舞われたのでした。ただ、「逆境はチャンス」と思い直し、良い方向へ舵を切ることができました。まさに多職種による“ワンチーム”に生まれた助け合いの精神で救われたようなものでした。患者さんからいただいた数々の温かいお手紙の中には、励みとなる短歌が便箋にしたためてありました。
「果てしなき糖尿病の旅なれど師の灯火にみちびかれゆく」
これは、「今を生き、今を楽しむことにしたのです」と“日々是好日”をモットーにされていた90歳を超えた糖尿病患者さんから贈られた短歌でした。この短歌に触れ、医師として、患者さんをより良い方向へ導く“灯火”を持ち続け、共に歩んでいくことを求められているのだと、あらためて胸に刻みました。

「KINDなMINDつめてRECOMMEND」
糖尿病の診療では、医療者側の考えを一方的に押し付けるのではなく、患者さんを中心に考えてRECOMMENDする姿勢が大切だなと日常診療でつくづく思うようになりました。そしてまた、RECOMMENDするにあたっても、優しい心“KINDなMIND”をもって患者さんに寄り添い、共に歩んでいくことが大切だと思い、このような川柳に綴りました。今では、糖尿病診療のモットーとしております。
『上』
この『上』という漢字を意識した医師を目指したいと私は思ってきました。『上』という字の「底辺の横棒」は、救急医療から健康診断まで幅広く内科全般に視野を広げ、「縦の棒」は、糖尿病分野を専門として、「小さな横棒」は、常に患者さんに寄り添える心を持つ臨床医を自分なりに表しています。これは、私が高校時代、医師の父と一緒に参加した医学会で配布された本『医の現在』(高久史磨著、岩波書店出版)からヒントを得て、医師に成り立てのころに考えました。医師となり早18年目となりますが、今もなお、この考えは変わっておりません。今では前橋赤十字病院とすえまる内科での診療に従事しておりますが、超急性期治療と慢性期医療の橋渡し役として、切れ目のない医療を行うことにより、患者さんやその家族との交流を通じて人生の物語を一緒に作っていくことを目標にしています。
(「前橋赤十字病院を映す水田鏡」 末丸大悟先生ご提供)引用文献
1)K el-Reshaid,et al:Progressive ischemic gangrene in dialysis patients: a clinicopathological correlation.Ren Fail 1995;17(4):437-47.
ミノン全身シャンプー泡タイプ

顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。
[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)
ミノン全身保湿ミルク
ミノン全身保湿クリーム

敏感肌、バリア機能が乱れやすい肌を支える全身に使える「塗るミノン」。広い範囲のケアにはべたつかないミルクタイプ、乾燥のつらい部位にぴたっと密着感のあるクリームタイプ。
[医薬部外品]販売名:DSミルクz
200mL、400mL、320mL(つめかえ用)
販売名:DSクリームz
90g
詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/
がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。
