第4回 高齢者や施設での糖尿病患者さんへのフットケアQ&A【PR】
- 公開日: 2026/1/23
左から末丸大悟 医師、松本夏希 医師、石川恵 看護師糖尿病患者さんに起こる足病変について前橋日赤糖友会で療養指導に携わる医師および看護師に、ナース専科の読者のみなさんから寄せられた質問に回答していただきました。
Q1 目が悪い患者さんのセルフモニタリング、下肢の観察など指導をどのように行うべきでしょうか。
まず患者さんの視覚障害の程度を把握し、フットケアだけでなく、インスリンの投与や内服など、ほかの療養行動も含めて、どの程度支障が出ているかを把握します。そのうえで、患者さんができることを探します。
可能であれば、足の観察には拡大鏡や鏡、写真撮影などを使ってもらいます。鏡を床に置いて足の裏を見るなど、その人の視力に合わせて具体的な方法を指導します。また、ご家族や介護スタッフなど、サポートパーソンに協力を要請する必要があります。家族に写真を撮ってもらい、患者さんと一緒に確認するのもよいと思います。
よく見えない中での爪切りは、指先を傷つける懸念があるので、爪切りやニッパーは使わず、爪やすりを使ってこまめに削るよう指導します。
また、家の中で足を怪我しないように、必ず靴下を履き、床に物を置かないよう整理整頓し、ぶつかってけがをする可能性がある家具の角などにクッション材を貼るなどして保護します。靴を履くときは、必ず靴をひっくり返して、石などの異物がないかを確認します。
また、外来受診時は、毎回必ず医療者が足の状態を確認することも大切だと思います。
Q2 高齢者の乾燥して硬い角質の厚い踵のケア、変形した爪のケアについて知りたいです。セルフケアも十分にできず独居や施設退院予定で、退院後は特に費用も時間もかけられない場合、包括の期限2カ月で、何を目標にしてケアをしていくとよいのでしょうか。在宅などで、あまり費用がかけられない場合の工夫もあれば、教えてください。また、乾燥が強く角質が硬い場合はどのようにすればよいでしょうか。
傷や潰瘍をつくらないことを最優先の目標に設定してほしいと思います。まず、足を清潔に保ち、保湿するという基本について、患者さん本人がどこまでできるかをアセスメントします。認知機能の低下がない場合は、糖尿病足病変をどの程度予防したいと思っているか、どこまでケアをしたいか、どんなケアならできそうかを、患者さんといっしょに丁寧に確認していきます。高齢者の場合、残りの人生をどう楽しみたいかも鑑みて、フットケアをどこまで厳格に行うのか、その人に合ったケアの方法をともに考えることも大切だと思います。
硬い角質に対しては、毎日の入浴や足浴と、その後の保湿が基本です。保湿剤は、しっかり塗るようにします。肥厚した爪に対しては、爪切りは使わず、爪やすりで削るようにします。毎日の入浴や足浴が難しい場合でも、清潔の保持と保湿だけは継続できるよう支援します。
また、ひどく硬くなった角質や肥厚した爪、変形した爪など、セルフケアが難しいものに関しては、皮膚科やフットケア外来を受診していただくよう提案しています。
Q3 糖尿病があることで下肢の痛覚が鈍い方が下肢潰瘍をよくつくって入院していました。予防ケアの指導をしても繰り返すケースでは、どのような指導をするのがよいのでしょうか。
ただ「気をつけて」というよりも、潰瘍ができることを繰り返す原因が何か、靴が足に合っていないからか、歩き方の問題なのか、その部位が乾燥しているからか等、患者さんと一緒に探る必要があると思います。外来受診の際に、月1回は必ず足も見るなど、フットチェックをする日を決めるのも有効だと思います。
過去に足に傷や潰瘍をつくったことがあるなどのリスクがある方は、毎回フットケア外来にもかかってもらうようお話ししています。そうすることで、小さなトラブルを発見し、早期に介入することができ、足を救うことができたケースも数多くみてきています。ただ、地域のクリニックなどではフットケア外来がなく、専門的なフットケアは難しいのが実情だと思いますから、潰瘍を繰り返すようなケースは、地域の中核病院のフットケア外来などを紹介するのもよいと思います。
Q4 糖尿病で透析をしている患者さんと慢性心不全の患者さんでは、足の観察ポイントやケアなどに、なにか違いがあるのでしょうか。違いがあれば、教えてください。
透析をしている患者さんには血管障害や浮腫があり、小さい傷でも感染リスクは大きくなります。心不全の患者さんの場合は、浮腫があり、全身の皮膚が脆弱になっているので、圧迫や靴擦れなどの擦れに注意が必要です。いずれのケースも、足のむくみや皮膚の色、小さな外傷に十分な注意が必要という点が共通しています。
<透析患者さんの場合>
汗腺や皮脂腺が萎縮しているうえ、水分制限があるため、皮膚の水分量も低下して、乾燥しやすくなっています。また、尿毒素の蓄積や透析液の成分の影響などにより、掻痒感を訴える患者さんも多くいます。痛みを感じないため、皮膚がむけるまでかきむしってしまうこともあります。乾燥や掻痒感がある場合は、やはり、保湿を徹底することが基本です。入浴時は、熱すぎるお湯は避け、刺激の少ない洗浄剤で洗います。透析患者さんの場合、保湿には軟膏を使うことが多いのですが、使用量が少ない方が多くみられます。入浴後10分以内に、ベタベタするくらい塗るといった塗り方の指導が必要です。また、無意識にかきむしってしまわないように、爪を短めに整えたり、手にミトンをつけるといった対策も有効だと思います。症状が強い場合は、医師に相談し、透析で尿毒素が十分に除去されているかを検討するほか、掻痒感を誘発する物質を抑える薬(κオピオイド受容体作動薬など)や、抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイドの外用薬などを処方することがあります。
<心不全患者さんの場合>
心機能低下による体内水分量の貯留で、むくみやすく、浮腫が皮膚を圧迫し、皮膚トラブルを生じることがあります。発赤や湿疹が生じたり、皮膚が乾燥し、掻痒感を訴えます。血液循環が悪く、皮膚の角化細胞がダメージを受け、バリア機能が低下して、外からの刺激に弱くなるため、掻痒感が生じます。末梢循環障害で末梢への血液供給が不足し、皮膚の冷感やチアノーゼを生じたり、潰瘍を引き起こすことがあります。
これらのスキントラブルへの対策の基本は、透析患者さんの場合と同様です。浮腫に対して弾性包帯や弾性ストッキングを使うことがありますが、皮膚を圧迫しすぎないようにすることが大切です。糖尿病を合併していて神経障害がある場合には、圧迫されて傷ができても気づかないことがあるので、十分な注意が必要です。
足の状態を定期的にチェックすること、どのような異常があったら医師に報告し受診を促すかを、患者さんと医療者の間で共有しておくことも大切です。異常がみられた場合は、できるだけ早く医師に相談するようにします。
Q5 高齢者施設勤務のため、白癬症の方も多いです。入浴も週2回で清潔保持が難しい場合のケア方法を教えてください。人数も多いので、すべての方に足浴など手厚いケアが人員的に難しいです。時短テクニックや、これだけはやっておくとよいということがありましたら、教えてください。
白癬症の場合は、特に清潔に保つことと、足に傷をつくらせないこと、異常を早期発見することが大切です。また、爪白癬がある場合は、早めの皮膚科受診を検討してください。
足浴が難しい場合には、タオルで清拭し、指の間をよく乾燥させるだけでもよいと思います。特に指の間が湿潤していると白癬菌の温床になるので注意が必要です。清拭しながら足をよく観察し、すぐに保湿するという一連の動作で時短を図りましょう。すすぎがいらない洗浄剤を使うのもよいと思います。また、私たちがよく行うのは、ビニール袋の中にぬるま湯と少量の洗浄剤を入れ、よく振って泡立て、その中に足を入れてもらって足浴をする方法です。足を洗ったら、泡をぬぐいながらビニール袋を外し、今度はぬるま湯だけのビニール袋に足を入れてもらい、洗浄剤を落とします。この方法だと、シャワー室などの特別な場所は必要なく、準備や片付けも比較的簡単なので、手軽だと思います。
Q6 血流障害時のフットケアでNGなことが知りたいです。
下肢の血流障害を評価するスケールのFontain分類で、III度(安静時疼痛)以上の血流障害がある場合は、看護ケアは行わず、医師に報告し、皮膚科受診の検討を依頼するようにしています。まず看護サイドでのケアが可能かどうか、正確にアセスメントする必要があると思います。
そこまでに至らない血流障害の場合は、様子をみながらケアを行いますが、強いマッサージや熱いお湯での足浴、カミソリで角質を削るといったケアは避けます。
爪切りの際は、爪とその下の皮膚組織との見分けがつかないことがあるので、フットケア用のゾンデで区別をつけてから、皮膚組織を傷つけず、深爪にならないように切ります。また、爪切りやニッパーでなく、爪やすりを使ったほうが安全です。
胼胝や角質を除去する場合は、出血や皮下出血、潰瘍などがないかを確認をしたうえで、皮膚をよく乾燥させ、患部を伸展させながら、肥厚の程度や硬さを指で確認しながら少しずつ削ります。角質でない部分を削ってしまうと大惨事になるので細心の注意が必要です。処置が難しい場合や、鶏眼の場合は、皮膚科を受診するようにします。
きつい靴や靴下、弾性包帯などで締めつけるようなことも避ける必要があるので、自己判断でそれらを使っていないか、確認することも大切です。
Q7 足の裏など見えにくいところや手が伸ばしにくいところのセルフケア教育を教えてください。
足先や足の裏など見えにくい部分は、やはりスマートフォンのカメラで撮影するのが有効だと思います。そして異常があったら、受診時にその写真も医師に見せることもできます。足の観察をルーティン化することができるように、入浴の後に必ず足を観察するなど、毎日行っている生活動作と組み合わせるとよいと思います。また、自分だけではできない場合は、家族にも協力してもらい、セルフケアをするよう促してもらったり、観察を手伝ってもらうようにしています。
Q8 認知機能の低下が進んだ方の観察・早期発見や予防行動をとってもらうためにどのようにすればよいのかを教えてください。また、リスクの共有を多職種でどのように行っているかも知りたいです。
高齢者の場合、一見、認知機能が正常のようにみえても、話をしていると違和感を感じるケースはよくあります。認知機能が低下していても、その場をうまくとりつくろってしまうために、医療者が気づかない場合もあるでしょう。軽度認知障害のケースもあるかもしれません。インスリンの管理がうまくできていないなどの問題がある場合は、認知機能の低下を疑ってみることも必要だと思います。老老介護/認認介護の現場を背景として、妻に処方された多種の経口血糖降下剤(スルホニル尿素薬を含む)を妻が夫に誤って配薬し、意識障害、遷延性低血糖を来したケースを経験し、同居家族の薬手帳にも配慮することが重要と感じさせられました1,2)。超高齢社会の今では、このようなケースは氷山の一角であり、重篤な状態に至る手前で認知機能の低下を疑って認知機能の評価を行い、早期に介入することが、糖尿病足病変を診ていく上でも重要であると考えます。糖尿病外来の診療内では、時間がかかる認知機能に関するテストの実施は難しいので、時計を描いてもらうテスト「Mini-Cog test」3)や、1分間で動物をできるだけたくさん挙げてもらうテストをすることがあります。1分間動物テストで11種類以上言えれば、1週間以内のインスリン注射手技獲得が予想されるとの報告4)があります。
以前、食事のときに打つ超速効型のインスリンと、寝る前に打つ持効型のインスリンを逆にして打っていて、とても危険な状態だった方がいました。認知機能の低下がある場合は、治療やフットケアを本人任せにせず、家族などのサポートパーソンが支援、チェックすることが大切です。
サポートパーソンにも、足病変や観察ポイント、どんなことがあったら受診すべきかなどについて説明し、協力を仰ぎます。また、必要に応じて訪問看護などのサービスの導入も検討します。
介護保険の申請はしているか、ケアマネジャーは決まっているかなどを確認し、社会資源や社会保険制度を有効に活用できるよう支援します。また患者さんにかかわる病院の医師や看護師、介護スタッフ、訪問看護師などの間で多職種カンファレンスを行い、患者さんの状態や写真、フットケアシートなどを共有するとともに、誰がいつみるのかといったことを明確化しておくことも大切だと思います。
共感 【sympathy】と【empathy】
共感という意味で【sympathy】と【empathy】の2つあることをご存じですか? 【sympathy】は相手の苦痛や困難に対して同情したり、気の毒に思ったりする感情です。自然と湧きおこる精神的な共感と言えます。一方、【empathy】は相手の立場に立って、その人がどのように感じ考えているのかを想像し、理解しようとする能力です。靴で例えると【sympathy】は相手の痛そうな「靴」を見て「かわいそうに」「大変そうだね」と気遣うこと、【empathy】は相手の置かれている状況を自分自身で体験しようとすることになります。
糖尿病患者さんをケアする上ではどちらも重要ですが、【empathy】の姿勢はより個別的な看護を展開する一つの材料になると思います。
(「オリオン座と前橋赤十字病院」 松本夏希先生ご提供)
(「夕焼けを背景にした切り絵のような前橋赤十字病院」 末丸大悟先生ご提供)引用文献
1)末丸大悟:超高齢社会にみる意識障害―何を考え,何に気をつける?.日本プライマリ・ケア連合学会実践誌プライマリ・ケア 2018;3(3):73-4.
2)末丸大悟:一般用医薬品の使用有無,インスリンの注射手技,同居家族の薬手帳の確認も重要.日本プライマリ・ケア連合学会誌 2019;42(3):181.
3)Borson S et al:The mini-cog: a cognitive “vital signs” measure for dementia screening in multi-lingual elderly. Int J Geriatr Psychiatry 2000: 15:1021-7.
4)Taichi Minami et al: Predicting the ability of elderly diabetes patients to acquire the insulin self‐injection technique based on the number of animal names recalled. J Diabetes Investig 2017 Oct 5;9(3):623–8.
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がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。
