ストーマをめぐる現状と問題
- 公開日: 2017/7/31
ストーマ周囲の皮膚にトラブルが生じると、患者さんは不安とストレスにさらされます。またストーマ管理が困難となることで、QOLの低下につながることも考えられます。ここでは、皮膚トラブルを防ぐために看護師に求められる役割、ストーマ患者さんを取り巻く現状や問題について解説します。
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ストーマとは? ストーマケアについて
ストーマの受容困難は造設前の不安が一因
ストーマ造設にあたり、患者さんは大きな不安や多くの疑問を抱えています。ストーマへの理解が不十分で納得しないまま造設してしまうと、受容が困難になります。その結果、「ストーマをみたくない」「ストーマに触りたくない」といった理由からセルフケアを怠ってしまい、皮膚トラブルにつながることも考えられます。
患者さんのセルフケア力を高めるためには、ストーマへの理解を深め、患者さんの不安を軽減する術前のかかわりが重要です。そこで、術前のオリエンテーションでは、繰り返し段階を踏んで説明を行い、不安をできる限り取り除いてストーマへの受容を促すとともに、退院後はセルフケアが必要であることも伝えましょう。
セルフケアを習得できない身体機能の低下の可能性
入院中には、造設したストーマそのもののケアと管理のほかに、装具交換や日常生活上の注意など、セルフケア指導を行います。
特に高齢患者さんの場合、視力の衰えや手指の巧緻性の低下によってセルフケアがより困難になるため、看護師は入院中に患者さんのセルフケア力へのアセスメントを行い、患者さんに合った方法を指導する必要があります。正しい洗浄の方法や面板を愛護的に剥がす方法など、皮膚障害を予防するための指導も行います。
また、患者さんがセルフケアに失敗したときは、落ち込む患者さんをフォローするとともに、正しいケアを習得してもらえるチャンスととらえて、指導していくことも大切です。そしてストーマケアに限りませんが、病棟内ではアセスメントの評価方法や指導内容を統一しておく必要があります。あわせて、患者さんへの指導の進捗についても共有するようにしましょう。
退院後の皮膚トラブルセルフケア指導不足が原因
在院日数の短縮が進むことで、ストーマケアを必要とする患者さんに十分なセルフケア指導を実施できないケースが増えています。また、医師や施設により、大きさや形状が異なるストーマが作成され、管理を複雑にしていることもセルフケアを困難にしています。
そのため、退院後に患者さんが臭いや便漏れ、皮膚障害などの問題に悩むことも少なくありません。それでもストーマ外来があれば退院後のフォローが可能です。しかし、手術のできる病院が必ずしもストーマ外来をもっているとは限らないのが現状です。
セルフケア不足で起こる問題のなかで多いのは皮膚障害です。ストーマ周囲の皮膚は、面板で覆うことで皮膚呼吸ができなくなり、トラブルが起こりやすい環境だといえます。そのうえに装具が合わない、皮膚の清潔保持ができないなど、セルフケア不足が重なることで皮膚障害リスクが高くなります。
医療者以外の介入により皮膚トラブルのリスクが増加
最近では、厚生労働省がストーマの装具交換は医行為ではないという見解を示し、医療職者以外でも装具交換が可能となりました。これは“一人でストーマの管理ができなくなったらどうすればいいか”という患者さんの不安の声を反映してのことです。しかしながら、介護職者や家族の場合、適切なアセスメントやケアを行うのが難しく、皮膚障害などのトラブルが起こりやすくなる可能性があります。
そこで、介護職者や家族はできるだけ早くに異常を発見し、何かあったときにはストーマ外来につなげるという体制をつくることが重要です。
日本創傷・オストミー・失禁管理学会では、在宅からストーマ外来につなぐツールとして、「困った時のストーマ相談ガイド」と、ストーマ外来の受診を円滑にするための「ストーマ携行カード」を作成しています。http://www.jwocm.org/public/stoma/からダウンロード可能なので、患者さんや家族、介護職者に活用をお勧めするとよいかもしれません。
(ナース専科マガジン2015年10月号より転載)