乳がん患者さんの療養生活のQOLを高めるために―皮膚障害とケア―02
- 公開日: 2016/3/18
- 更新日: 2021/1/14
乳がんでは、手術・化学・放射線療法などに対する有害事象として、さまざまな皮膚障害が現れやすいことがわかっています。今回は、患者さん退院後の社会生活に焦点を当て、皮膚障害に対しどのようなケアを行っていけばよいか、3人の認定看護師にお話しいただきます。
左から、座談会出席者の金井 久子さん、佐野 加奈さん、根本 弘美さん
02 退院後の社会生活に向けた看護のかかわり
――今回は、乳がん患者さんの退院後に目を向けたいと思います。患者さんの社会生活に向けた支援として、退院後の下着選びはとても重要な要素の1つだと思います。皆さんの施設では下着選びに関して、患者さんからどのような声が聞かれますか?
金井: 皮膚障害ではありませんが、1つは術後にドレーンが入っている患者さんからの「どんな下着をつければよいですか」というものです。
パジャマの下にもう1枚肌着をつけたいけれど、前開きのものがあまりない。バリッと剥がすマジックテープがついているような介護用のものしかない。そんなとき自由にはさみで生地をカットして成形できる製品※が市販されていることを紹介したりします。
また、乳房再建術の患者さんでエキスパンダーを入れている場合は、しばらく胸を揺らさないように固定しなければなりません。しかし乳房の大きさや形には個人差があり、なかなかよいブラジャーがみつけられないという声を聞きます。
佐野: 当院では乳房再建術を受けた患者さんは、担当医の指示があるまでの術後約1カ月はブレストバンドを装着していただいています。病院によりさまざまですね。
根本: 入院病棟あるいは乳腺外科で下着を紹介され、ある程度の情報をもっている患者さんでも、実際にはどれを選べばよいかわからないという声をよく聞きます。
これがよさそうだと思って購入してみても、いざつけてみると自分の体型に合わなかったり、普段自分が使用している下着と何が違うのかわからないという声もあります。
――そのような患者さんの悩みに対して、どのように対応されているのですか?
金井: 当院では、乳房再建術以外ではこの下着を使ってくださいというお話はしていません。ただ、患者さんによっては、入院前から下着について心配している人もたくさんいます。そこで術前オリエンテーションから下着の説明はしています。
また、患者さんのなかには市販の下着にさらに改良を重ねて、全摘用のブラジャーを開発するなど、とても工夫しているケースもあります。患者会が発行する冊子などには、下着だけでなく日常ケアのヒントがたくさん紹介されていますので、そういった患者さんから発信される情報も紹介して、参考にしていただいています。
――次のページでは、それぞれの施設での情報提供の仕方についてご紹介いただきます。