第6回 ストーマサイトマーキングの目的と手順
- 公開日: 2016/5/30
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ストーマとは? ストーマケアについて
ストーマサイトマーキングを行う目的
マーキングの基本をおさえる!
ストーマサイトマーキングを行う目的は、QOLの維持と合併症の予防です。マーキングの基本は、「クリーブランドクリニックの5原則」です。
【クリーブランドクリニックの5原則】
1.臍より低い位置
2.腹直筋を貫く位置
3.腹部脂肪層の頂点
4.皮膚のくぼみ、しわ、瘢痕、上前腸骨棘の近くを避けた位置
5.本人が見ることができ、セルフケアしやすい位置
この原則は、装具が貼付できる位置を検討するために広く使われています。日常生活や仕事でよくとる姿勢を確認し、どこにしわやくぼみができるのか、平面が得られる部位があるのかをみます。その際、正面からだけでなく、側面からも観察することが大切です。
ただし、メタボリックシンドロームの患者さんは、上腹部の突出により下腹部が見えず、セルフケアが非常に困難となるため5を最優先します。2については、傍ストーマヘルニアなどの晩期合併症予防のために必要な原則となります。
マーキングはどこにする?
ストーマサイトマーキングは、造設する腸管によって部位が異なります。
(赤丸:ストーマ造設位置 青色斜線部:ストーマ造設が可能な範囲)
■ダブルストーマの場合
ダブルストーマの場合は、基本的に右下腹部に回腸導管(尿路ストーマ)、左下腹部に結腸ストーマを造設します。造設位置は尿管の長さにより位置の制限が生じる、尿路ストーマを優先して決めます。
ストーマとストーマの間は7~8㎝以上あけ、装具が重ならないようにします。さらに、ベルトを装着する可能性も考慮し、高さも3~5㎝上下にずらします。この際、尿路ストーマを上にします。
■尿管皮膚瘻の場合
尿管皮膚瘻は、残せる尿管の長さによって位置が異なるため、下図のようにマーキングします。
(赤丸:ストーマ造設位置 青色斜線部:ストーマ造設が可能な範囲)
■緊急手術の場合
緊急手術の場合は腹膜炎や腸閉塞による腹部膨満、あるいは全身状態の悪化などで動けない患者さんもいます。可能な姿勢で腹直筋を確認し、造設可能範囲もしくは避けてほしい位置をマーキングします。
(青色斜線部:ストーマ造設が可能な範囲)
ストーマサイトマーキングの手順
9ステップでマーキング
ストーマサイトマーキングの流れをみていきましょう。
■必要物品
水性マーカー、油性マーカー、マーキングディスク(標準体型用7㎝)、ポリウレタンフィルム、ノギスまたはメジャー、必要時はデジタルカメラなど
■手順
STEP1.
術式、ストーマ造設部位、範囲などを医師に確認します。
STEP2.
患者さんにストーマサイトマーキングの説明をします。
STEP3.
患者さんに仰臥位になってもらい、腹部全体が観察できるように衣服を調整します。
STEP4.
肋骨弓、腸骨棘、臍、瘢痕(例:腹部手術の既往がある場合、ドレーン挿入部位の瘢痕など)をマークします。
STEP5.
患者さんに頭を軽く上げて臍を見てもらうようにし、腹壁を緊張させます。腹部外側から中心方向へ軽く圧迫し、腹直筋外縁を確認していきます。
STEP6.
臥床した状態で腹直筋の頂点と平面が確保できるかを確認し、マーキングディスクの穴から印をつけます。
STEP7.
患者さんに座位、前屈位などさまざまな姿勢をとってもらい、マーキングした部位にしわやくぼみがないか確認します。マーキングした部位にしわやくぼみが入る場合は、平面が得られる部位を再度確認し、マーキングの位置を修正します。
STEP8.
マーキング部位が本人から見えるかどうか確認します。
STEP9.
マーキングの位置を油性ペンで印をつけ、正中、臍、ウエストライン、腹直筋外縁、腸骨棘(肋骨弓)、しわやくぼみがある部位からの距離を記録します。
術後の評価も忘れずに
術後にストーマサイトマーキングが適切であったか、ストーマサイトマーキングの位置に造設されたかどうか、正中創離開や巨大ストーマとなる可能性が術前から予測されたのかどうか、などを評価します。
また、ストーマサイトマーキングを行ったにもかかわらず、本人から見えない位置にストーマが造設された際やしわ・くぼみが発生した場合は、その要因について検討を行うため、術中の腹部の状況を執刀医に確認します。
なお、2012年より、人工肛門、人工膀胱術前処置加算(K939-9)により、術前ストーマサイトマーキング実施に対する診療報酬の請求ができるようなっています。詳しくは、日本ストーマリハビリテーション学会ホームページ内で確認できます。
文献
1)菅井亜由美編:ストーマ術後のケアまるっとよくわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決、メディカ出版、2015.
2)ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション実践と理論、金原出版、2006.
3)松原康美編:ストーマケア実践ガイド 術前から始める継続看護、学研メディカル秀潤社、2014.
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