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【連載】チューブ・ドレーン自己抜去防止への取り組み!

第2回 チューブ管理チームの新たな課題と多職種による医療チームの利点【PR】

  • 公開日: 2016/7/25
  • # 注目ピックアップ
  • # チーム医療

病院全体の医療安全を考えるとき、看護部の牽引だけでは、職種の壁を超えて意識を高めることはなかなか難しいのかもしれません。
ならば、専門知識をもち寄り、誰でも同じように使いこなせる専用品を取り入れてはどうかと考えた病院があります。
今回は、姫路聖マリア病院が一丸となって進める多職種による医療安全チームの中から、「チューブ管理チーム」の取り組みを紹介します。


術後せん妄や認知症のある患者さんの自己抜去防止が新たな課題

 チューブ管理チームはマニュアル導入後、月1回の定例会議と2名1組での院内ラウンドを実施しています。ラウンドでは「ラウンドチェック表」を使い、マニュアル通りの固定方法ができているか、透析および8種類のチューブについて確認します。

「固定方法が統一できていない部署には、誤って実施している固定方法を写真に撮り、マニュアルの固定方法と見比べてもらうなど、視覚情報を交えて指導しています」と松本さん。特に二重のループ固定ができていないことが多いのだそうです。

 しかし、その後行った2回目のアンケートでは、1回目に課題として考え、取り組んできた内容について再び言及されていました。それは、マニュアル通りに固定していても、患者さん自身による自己抜去を防ぐことができないという報告でした。

「しっかり固定していても、術後せん妄や認知症のある患者さんの場合、どうしても抜かれてしまうことがあります。やはり、固定方法の統一だけでなく、せん妄や認知症などのリスクアセスメントが非常に重要です。今、リスクアセスメントの方法についてチームで話し合っているところです」(清水さん)

 病棟からのフィードバックは定例会議の議題となり、今後の改善点としてさらに検討されていきます。

多職種が参加するチューブ管理チームだからこそみえた多職種連携のよさ

では、多職種で行う医療チームのよさとは、どのようなところにあるのでしょうか。臨床工学技士として同チームに参加する福本さんはこう説明します。

「人工透析の場合、穿刺後に起こる穿刺針やチューブの抜去は生命に直結する重大なエラーです。循環動態に影響を及ぼす機器を管理する人工透析センターのスタッフとして、チューブの管理にはこれまでも十分注意してきましたが、今回このチームに参加し、その意識がより高まりました。特に固定方法については、マニュアルづくりに参加したことで、根拠を示しながら自信をもって周知徹底を図ることができるようになったと思います。今まで以上に医療安全に対する興味をもって、さらなるスキルアップを目指したいですね」

 また、清水さんは、シリコーン製のチューブの場合、挿入時につけるマーキングのマジックが消えやすいことに悩んでいたとき、「福本さんが特殊なインクのマジックを探してきてくれて、とても助かった」と、スムーズな問題解決にはさまざまな知識をもち寄れる、メンバーの存在が大きいと話します。

 さらに藤本さんは、閉鎖されがちで、なかなかほかの部署とのつながりがもてない手術室勤務において、「チームに参加し、ラウンドを通して他部署の人とのコミュニケーションがスムーズになった」ことを挙げます。

 医療安全管理室の調査では、チームの活動開始後、EDチューブ・胃管とドレーン関連の自己抜去数が前年の23件から14件に減少するなど、その効果がデータにも着実に表れてきています。そのうえで、松本さんは「今後の課題として、現在、胸腔、腹腔など8種類あるチューブ管理のマニュアルを、各病棟の依頼に応じて、さらに増やしていきたい」と話します。

 こうした自発的な動きに、確かな手応えを感じているという平野さん。「各チームの自主的で地道な活動が、今、少しずつインシデントの減少としてデータにも表れてきていることがうれしいですね」

 今後も平野さんと各チームの活動が両輪となって、同院の医療安全が推進されていくことでしょう。

チューブ管理チームの主な活動

チューブ固定マニュアルの作成

現在、作成されているのは「気管内」「中心」「胃管・経鼻」「胸腔」「硬膜外」「腹腔」「CVポート」と「透析」を合わせた9項目。自己抜去時の対応や、固定方法、固定時の観察および注意点などをそれぞれまとめている。

チューブ固定マニュアルの作成例写真

定例会議の開催

年間計画に基づき月1回行われる会議で、各種報告と今後の課題が話し合われる。

定例会議開催様子

院内ラウンドによる啓蒙

2人1組でラウンドチェック表を用いて、マニュアルの遵守状況を確認。

院内ラウンドによる啓蒙例

ループ固定ができていない部署には、誤った固定方法を撮影し、マニュアルと見比べながら具体的な改善点を指導。

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