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チームで取り組む “透析患者のかゆみ対策” ~治療アルゴリズムでかゆみをゼロに~【PR】

  • 公開日: 2017/5/29
  • 更新日: 2020/3/26
  • # 注目ピックアップ
  • # かゆみ・掻痒感
  • # 腎炎
  • # 薬理学・薬剤

血液透析患者において、そう痒症は非常に多くみられる合併症のひとつであり、近年では生命予後にも影響を与える可能性のある因子として注目が高まっている。その一方で、血液透析患者のかゆみには複数の因子が関与していることから、透析治療の現場ではかゆみ対策に難渋しているケースが少なくない。
本セミナーでは、透析そう痒症治療の第一人者である特定医療法人あかね会大町土谷クリニック院長高橋直子先生に、透析そう痒症の治療アルゴリズムに基づいた原因別かつ総合的な治療や、院内・院外を含めたチームでのかゆみ対策への取り組みについて、自施設での事例を交えながら解説いただいた。

透析方法の変更や皮膚の保湿に、薬物治療など多様な対策を組み合わせた治療が重要

 血液透析患者の皮膚そう痒症は生命予後に影響を与えうる重大な合併症のひとつとされるが1)、かゆみの原因には複数の因子が関与していることから、治療抵抗性となることが少なくない。
 近年では、透析方法の変更や皮膚の保湿といった従来の治療に、薬物治療など多様な対策を組み合わせていくことが重要との考え方が広がっている。一例として、2015年のKidney Internationalに掲載されたミニレビュー2)では、次のような透析そう痒症の治療アルゴリズムが示されている。かゆみを訴える透析患者に対し、まず、かゆみに関する他の要因を除外した上で、軽度のかゆみに対しては肌の保湿を行い、重度のかゆみに対しては透析量をKt/V>1.2として透析効率の改善を図る。改善しない場合は、肌の保湿に加えて、ガバペンチンa)、紫外線照射、活性炭、κオピオイド受容体作動薬ナルフラフィンのいずれかを使用し、それでもかゆみが遷延する場合はμオピオイド受容体拮抗薬ナルトレキソンb)、タクロリムス軟膏、鍼灸のいずれかを使用する。それでもなお遷延する場合には腎移植を考慮するとしている。
 国内では2014年と2015年に、κオピオイド受容体作動薬レミッチ®カプセル2.5μg(一般名:ナルフラフィン塩酸塩、以下レミッチ®)の開発者の1人である鈴木らが「透析そう痒症治療の現状と最近の進歩」として、透析そう痒症の治療方針を発表している(表1)3,4)。透析方法の変更やカルシウム・リン代謝への介入、皮膚保湿剤の使用などに加え、オピオイドによる治療など多様な対策を提示し、従来の治療とレミッチ®をはじめとする薬物治療などとのよりよい組み合わせにより、そう痒症を改善させることが重要であると述べている。
a) わが国では透析そう痒症に対しては未承認。
b) わが国では未発売。

透析そう痒症の現状と最近の進歩の表

当院でのかゆみ対策:かゆみの原因別かつ総合的な治療に、院内・院外を含めたチームで取り組む

当院の透析そう痒症治療においては、次の4つを基本方針として、多様な対策に取り組んでいる。第一に、かゆみの原因別かつ総合的な治療の実施、第二に、看護師・臨床工学技士・薬剤師からそれぞれ選任された「スキンケアスタッフ」が指導的役割を発揮するチーム医療、第三に、「フットケア」や「HDF」といった他の医療チームとの連携、第四に、「家族」や「介護(予防)サービス」との連携、である。ここからは、それぞれの基本方針について詳しく解説していきたい。

基本方針1

かゆみの原因別かつ総合的な治療の実施

透析そう痒症には多くの因子が関与しているが、それらは次の3つに大別することができる(図1)5)。第一に「腎不全・透析に由来する異常」が挙げられ、これには尿毒症性物質、血清カルシウム・リン高値、二次性副甲状腺機能亢進症などが起痒物質として作用するもの、また、透析膜による補体活性化など透析治療に関連するもの、さらにこれらによるアレルギー反応、ヒスタミンなど種々のかゆみのメディエーターの関与などが含まれる。第二に皮膚の乾燥とそれによるC線維伸長、かゆみ閾値低下、過敏性の亢進などの「皮膚に由来する異常」、第三に内因性オピオイドが関与する「中枢神経内のかゆみ制御の異常」が挙げられる。透析そう痒症はこれらの因子が複合的に関与して治療抵抗性となる場合が多いと考えられるため、個々の患者の状況を踏まえた原因別かつ総合的な治療が重要となる。

透析そう痒症の原因の図

上記3つの原因すべてを網羅した対策を行うため、当院では2009年6月より「透析そう痒症の治療アルゴリズム」(図2)5)を導入している。本アルゴリズムでは、まず透析そう痒症と診断された場合、皮疹がなく乾燥のみの状態には保湿剤を使用する。一方、乾燥および掻破による炎症や二次的な湿疹化を伴う状態や保湿剤のみで効果不十分な場合は、保湿剤にステロイド外用剤を併用する。ステロイド外用剤を併用しても効果不十分な場合は、既存治療抵抗性透析そう痒症と考え、レミッチ®を投与する。また、保湿剤のみでは効果不十分で、かつステロイド外用剤の使用を避けたい(または使用の必要がない)症例もレミッチ®投与の対象となる。保湿剤とステロイド外用剤の併用またはレミッチ®と保湿剤、ステロイド外用剤の併用で効果がみられた場合、ステロイド外用剤のランクダウン・減量・中止を試みるが、保湿剤は継続する。一方、レミッチ®の初期用量で効果不十分の場合は増量を検討する。この間、透析方法や薬剤、検査データの見直しとスキンケアや生活指導は継続して行う。さらに本アルゴリズムに基づき、以下のような原因別の治療を行っている。

透析そう痒症の治療アルゴリズムの図

<腎不全・透析に由来する異常への対策>

まず、かゆみの原因となる尿毒症性物質を効率的に除去するため、十分な透析を行う。具体的な方法としては、長時間透析・頻回透析/PMMA膜を使用した蛋白吸着型透析/前希釈オンラインHDF(血液透析ろ過)などがある。PMMA膜は、ポリビニルピロリドン(PVP)やビスフェノールA(BPA)といったかゆみ誘発成分を含まないため生体適合性がよいことに加え、透析そう痒症と関連するとされるアルブミンレベル以上の分子量物質の除去に優れている。前希釈オンラインHDFは、蛋白結合尿毒素や低分子量蛋白の除去に優れており、PVPやBPAを大量のろ過で透析液側に洗い流せる点や、大量の置換液で血液が希釈され、流速も速いために血液細胞の膜表面への接触リスクが低減される点からも生体適合性がよいと考えられる6)。前希釈オンラインHDFによりそう痒症状を改善するには、そう痒の起因物質と推定されるβ2-ミクログロブリン(MG)除去率80%以上、α1-MG除去率25~35%前後となる処方条件を目指すべきとされる(図3)7)。それでもそう痒が改善しない場合には、PVPやBPAを含まない透析膜を用いて、生体適合性のさらなる向上を試みる8)。
このほか、低温透析療法(35.5℃)によるかゆみ閾値上昇や血清リン・カルシウム・PTHの適正な管理など、様々な対策を行うが、処方中の薬剤に起因するかゆみがしばしばみられることから、薬剤の見直しも非常に重要と考えている。特に、遅延型の薬剤アレルギーが疑われる場合は、薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)の実施が有効な場合もある。

前希釈オンラインHDFの処方条件と治療効果の関係グラフ

<皮膚に由来する異常と中枢神経内のかゆみ制御の異常への対策>

皮膚に由来する異常によるかゆみ対策としては、保湿剤を用いたかゆみ抑制が基本となる。当院では、保湿剤として白色ワセリンやヘパリン類似物質、尿素を主成分とする外用剤を使用している。いずれも皮膚のバリア異常を改善し、伸長したC線維を元の状態に戻し、皮膚の過敏性を低下させる効果が期待できる。軟膏、クリーム、ローション、スプレーなど様々な剤形があるが、塗布部位や季節、患者の好みに応じて、塗りやすく継続しやすいものを選択する。
塗布量の目安としては「ワン・フィンガー・チップ・ユニット(1FTU)」という考え方があり、軟膏やクリームでは大人の人差し指の先から第一関節まで、ローションでは1円玉大が、手のひら2枚分の面積に相当する(図4)。また、正しい塗り方としては、まず外用剤を清潔な肌に数ヵ所置き、手のひら全体で薄く伸ばすように、皮膚の溝に沿って横方向に塗布する。ティッシュを貼り付けると落ちない程度に肌がしっとりしている状態が適量である。これらの方法に従って、胸腹部または背部に1日2回、1週間塗布するための必要量は50gであるが、実際には多くの患者が必要量を塗れていない。外用剤による保湿効果をきちんと引き出すために、患者には十分な量を適切な方法で塗布していくよう指導することも非常に重要である。
一方、中枢神経内のかゆみ制御の異常への対策としては、前述した「透析そう痒症の治療アルゴリズム」に則り、既存治療抵抗性透析そう痒症と考えられる場合にレミッチ®を投与している。

外用剤の湿布の目安の図

次ページ「基本方針2 「スキンケアスタッフ」が指導的役割を果たすチーム医療の実践」

基本方針2

「スキンケアスタッフ」が指導的役割を果たすチーム医療の実践

当院の透析そう痒症治療の2つめの基本方針として、看護師7名、臨床工学技士3名、薬剤師1名からなる「スキンケアスタッフ」が指導的役割を発揮するチーム医療が挙げられる。
看護師は効果的なスキンケアの方法や生活習慣の改善を継続して指導し、臨床工学技士は透析液の水質管理に加えて有効な透析方法の検討と管理、患者の皮膚の写真撮影と患者データの管理を行う。また、薬剤師は調剤と服薬指導に加え、年1回のかゆみのアンケート調査の実施とそのデータ管理を行う。さらに、これらの「スキンケアスタッフ」が中心となり他のスタッフに対する指導も行っている。
実際の透析室でのかゆみ治療においては、スキンケアスタッフの指導の下、医師を含む全スタッフが役割を分担して治療を行っている。その際、患者への聞き取りやスタッフの情報共有のために活用しているのが、3種類の「かゆみのチェックリスト」である(図5)。初診時には「かゆみのチェックリスト①」を用いて、かゆみの強さ、かゆみを感じる部位(湿疹などの皮膚症状、乾燥、落屑)と場面を確認する。次に「かゆみのチェックリスト②」を用いて、スキンケアや入浴の状況、かゆみへの対処法、薬剤の使用状況について聞き取りを行う。そして、患者の原疾患や合併症、検査結果などを把握して医師が診察し、スキンケアスタッフと検討の上で治療方針を決定する。さらに、2回目以降の受診時には「かゆみのチェックリスト③」を用いて各所見を簡便に時系列で記入していく。併せて、処方歴、患者の感想なども毎回記入し、治療や指導方針の検討に役立てている。かゆみの診察と患者指導は継続して繰り返し行うことが大切であり、このようなツールを活用したチームでの取り組みが有効と考えている。

かゆみのチャックリストの図

基本方針3

「フットケア」「HDF」など他の医療チームとの連携

透析そう痒症治療の3つめの基本方針として、院内の他の医療チームとの連携にも取り組んでいる。当院では、透析患者の下肢末梢動脈疾患重症化予防としてフットケアを重視しており、2016年度の診療報酬改定を機に「フットケアチーム」を強化した。フットケア指導士の資格を有するリーダー看護師1名のもと、看護師6名、臨床工学技士6名で構成され、月1回全患者のフットチェックを行うほか、必要な患者のフットケアや皮膚灌流圧測定を随時行っているが、皮膚の乾燥やかゆみを発見した場合は、スキンケアスタッフと連携することとしている。
また、そう痒症などの透析合併症対策を目的として、臨床工学技士8名で構成する「HDFチーム」も導入した。合併症抑制のための適切な治療方針の決定や管理に取り組んでいる。

基本方針4

「家族」や「介護(予防)サービス」との連携

基本方針2、3で紹介した院内での連携に加えて、院外における「家族」および「介護(予防)サービス」との連携も、透析そう痒症治療の基本方針のひとつとして位置付けている。必要に応じて家族や介護(予防)サービスにスキンケアや生活習慣改善の指導を行い、非透析日には家庭や訪問介護・看護時、通所介護時の清拭・入浴後などに保湿剤の塗布を依頼している。院外との連携によってかゆみ治療を途切れず継続させられると同時に、かくれたかゆみや乾燥についての情報が得られることも大きなメリットとなっている。

治療アルゴリズム導入の効果:既存治療抵抗性そう痒症患者において「重度のかゆみ」がゼロに

当院では、かゆみの現状把握と治療効果の検証を目的として年1回、全患者を対象にかゆみのアンケート調査を実施している。アルゴリズムに基づくかゆみ治療の効果を測定するため、本治療アルゴリズム導入前の2009年5月、および導入後の2013年4月の両アンケートに回答した血液透析患者215名について解析を行った5)。その結果、治療アルゴリズム導入により、かゆみがあると回答した患者の割合は83.3%から69.8%と、有意に減少した(McNemar検定(以下同)、p<0.0001)(図6)。また、中等度以上のかゆみ(日中の白取重症度スコア3以上)の割合は31.2%から14.9%、重度のかゆみ(日中の白取重症度スコア4以上)の割合は13.0%から2.8%と、それぞれ有意に減少した(いずれもp<0.0001)。

治療アルゴリズム導入によるそう痒の変化グラフ

さらに、レミッチ®投与を受けた既存治療抵抗性そう痒症患者15名について解析したところ、中等度以上のかゆみの割合は93.3%から26.7%と、有意に減少した(p<0.005)。その中でも、重度のかゆみの割合は46.7%から0%となった(図7)。

重度のかゆみを有する患者の割合グラフ

これらの結果からアルゴリズムに基づく原因別かつ総合的な治療の実践が透析そう痒症の着実な改善につながっていることが示唆される。透析方法の変更や皮膚の保湿を基本に、レミッチ®をはじめとする薬物治療などを適切に組み合わせることで、既存治療抵抗性の透析そう痒症の改善も可能といえる。一方で、このようなかゆみ治療の効果を十分に引き出すためには、質の高いスキンケアや生活習慣の改善、より効率的な透析方法の検討や薬剤処方の見直しなどを継続的に行っていくことが不可欠である。そのためには、今後も院内・院外を含めたチーム医療をよりいっそう推進していきたいと考えている。

引用文献
1) Narita I. et al. : Kidney Int. 69(9): 1626-1632, 2006
2) Mettang T. & Kremer AE. : KidNney Int. 87(4): 685-691, 2015
3) 鈴木洋通 : 日透医誌. 29(1): 3-11, 2014
4) Suzuki H. et al. : Open Journal Nephrology 5: 1-13, 2015
5) Takahashi N. et al. : Renal Replacement Therapy 2: 27, 2016
6) 政金生人 : 透析患者の合併症とその対策. 20: 31-40, 2011
7) 櫻井健治 : 腎と透析77巻別冊(日本HDF研究会編), 東京医学社, 12-14, 2014
8) 高橋直子 ほか : 腎と透析. 79(別冊): 117-119, 2015

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