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腎盂腎炎|病態や看護師が知るべきポイント

  • 公開日: 2017/9/5
  • 更新日: 2020/3/26
  • 解説

現所属[東邦大学医療センター佐倉病院 腎臓学講座 准教授](https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/neph/patient/staff_profile.html)所属学会日本内科学会認定内科医・総合内科専門医日本腎臓学会専門医・指導医日本腎臓学会 学術評議員日本透析医学会専門医,指導医日本移植学会移植認定医日本腹膜透析学会 会員米国腎臓学会 会員資格上記ご経歴(卒業校、過去の勤務先病院、出版している書籍情報など)1997(平成 9)年3月 東邦大学医学部医学科卒業1997(平成 9)年5月 東邦大学医学部付属大森病院にて研修1998(平成10)年5月 済生会横浜市南部病院にて研修1999(平成11)年5月 国立病院東京医療センター 専門内科レジデント 2001(平成13)年5月 東邦大学医学部研究生(腎臓学講座)2002(平成14)年5月 川崎社会保険病院 腎臓科 医員2005(平成17)年9月 東邦大学医学部腎臓学講座 助教2011(平成23)年6月  米国Cleveland Clinic留学2013(平成25)年6月 東邦大学医学部 腎臓学講座 助教2013(平成25)年8月 東邦大学医学部 腎臓学講座 講師2015(平成27)年12月 東邦大学医学部 腎臓学講座 准教授2016(平成28)年5月 東邦大学医学部 腎臓学講座(佐倉)専門分野腎生理学、体組成学、腎栄養学、臨床腎臓学、腎移植内科学

尿路感染症の一つです。細菌などの感染によって、腎臓の中の腎盂に炎症を起こす病気です。多くの場合は、上行性の感染ですが、基礎疾患のある人は血行性に感染を起こすこともあります。



病態

腎盂腎炎には、単純性と複雑性があります。尿は腎臓で生成されて、尿管を通って膀胱に溜まり、尿道から排出されます。その経路を逆にたどって細菌が腎臓の腎盂に感染することで炎症を起こすのが単純性の腎盂腎炎です。一般的には、尿道が短い女性に多く発症します。

複雑性は尿路結石、尿路系の悪性腫瘍など、尿機能に異常があってカテーテルが留置されているなど、基礎疾患がある人に起こります。単純性の腎盂腎炎は、原因の7割が大腸菌です。基礎疾患がある場合は、原因菌はさまざまです。男性患者さんの腎盂腎炎はほとんどの場合、複雑性です。

説明図

症状

腎盂の炎症のために、局所症状として背部痛、叩打痛などが起こります。また、全身症状として発熱、悪心・嘔吐、全身の倦怠感などがあります。膀胱炎を併発していると、これらに加えて、膀胱刺激症状がある場合があります。膀胱刺激症状とは、排尿時痛や頻尿、残尿感、尿の混濁、下腹部の違和感などです。

診断

尿検査で尿中の白血球の上昇と、膿尿、細菌尿の培養確認を行って、尿路感染の有無を調べます。尿培養検査によって、原因菌を調べます。単純性腎盂腎炎の場合、原因菌の7割は大腸菌です1)。また、血液検査では、白血球の上昇やCRP、プロカルシトニンの上昇、血沈亢進などの炎症反応がみられます。

男性の腎盂腎炎では、前立腺炎との鑑別が重要になります。前立腺炎でも白血球尿が見られるので、鑑別は難しいですが、前立腺炎の場合、排尿時通や会陰部痛がみられることがあります。

治療

グラム陰性桿菌が原因菌の場合は、ニューキノロン系あるいは、セフェム系の抗生物質が選択されます。臨床的にはニューキノロン系が選択されることが多いですが、JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―ではセフェム系の抗生物質が推奨されています。日本ではニューキノロン系の抗生物質を使うことが多く、その耐性菌を作らないためにも、グラム陰性桿菌の治療にはセフェム系の抗生物質が勧められています。

腎盂腎炎は、JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―で、単純性腎盂腎炎、単純性腎盂腎炎(閉経後)、妊婦の腎盂腎炎、複雑性腎盂腎炎に分けて治療法が推奨されています。

単純性腎盂腎炎、単純性腎盂腎炎(閉経後)

原因菌はグラム陰性桿菌が約 80%で、そのうち約 90%は大腸菌です。また、約20%の患者さんでグラム陽性球菌が検出されます。治療薬は、腎排泄型のβ-ラクタム系薬、キノロン系薬などが推奨されています。抗菌薬治療開始後3 日目を目安にempiric therapyの効果を判定して培養結果が判明次第definitive therapy※※に切り替えます。

このような抗菌薬の使用を“de-escalation”と呼びます。注射薬から経口薬へスイッチするタイミングは、解熱や腰背部痛など症状寛解を目安にして抗菌薬投与期間は合計で14日間です。アミノグリコシド系薬は安全域が狭いので腎機能低下時には注意が必要です。経口薬での外来治療が可能と判断される軽症・中等度の症例では,初回来院時の単回注射薬の併用も推奨されています。

※empiric therapy:経験的治療のことで、原因菌が確定していない時に、原因菌となる可能性のあるすべての菌に効果が期待できる広域の抗菌薬を使うこと

※※definitive therapy:原因限定治療のことで、原因菌が判明した際にその菌に有効な狭域な抗菌薬を使うこと

妊婦の腎盂腎炎

原因菌は単純性腎盂腎炎と同様です。また、約20%の患者さんでグラム陽性球菌が検出されます。治療薬は、セフェム系薬が推奨されます。キノロン系薬は催奇形性の問題があり禁忌となります。使用を避けるべき抗菌薬は妊娠初期でキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、ST 合剤※、妊娠後期ではサルファ剤です。

※サルファメソキサゾールとトリメトプリムを合わせた薬剤

複雑性腎盂腎炎

原因菌は多岐にわたり、尿培養検査が必須です。過去に抗菌薬治療を受けた患者さんでは、各種抗菌薬に耐性を示す菌が分離されることも多いです。グラム陽性球菌ではEnterococcus属が多く、Staphylococcus属も検出されます。グラム陰性桿菌では大腸菌をはじめ Klebsiella属、Citrobacter属、Enterobacter属、Serratia属、Proteus 属などの腸内細菌や、P. aeruginosaなどのブドウ糖非発酵菌も検出されます。

治療薬の選択は、各施設や地域における薬剤感受性パターンを認識して行います。原因菌の推測が困難で、多剤耐性菌が検出される可能性が高いため、empiric therapyには広域抗菌薬を選択します。治療開始後3日目を目安にempiric therapyの効果を尿や血液培養で判定して、可能であれば、definitive therapyに切り替えます。

治療効果がある場合でも薬剤感受性試験の結果によって、より狭域な抗菌薬にde-escalationすることが望ましいです。

看護師に知っておいてほしいこと

腎盂腎炎では特に食事指導を行うことはありません。ただし、女性の場合だと、尿を我慢することが膀胱炎の原因になることがあるので、水分をよくとってもらうことと、トイレを我慢しないように生活指導をする必要がでてきます。

また、腎盂腎炎の治療では、患者さんの状態によって入院することがあります。基礎疾患がある患者さんは、腎盂腎炎から血中に菌が移行し敗血症を起こして重症化することがあるので、患者さんの経過をしっかりと観察することが重要です。


引用・参考文献

1)一般社団法人日本感染症学会、公益社団法人日本化学療法学会 JAID/JSC 感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会,編:1.膀胱炎,JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―,2015,:p.8.