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第26回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会 理事会企画4 論文賞・研究助成演題をレポート

  • 公開日: 2017/10/10
  • # 注目ピックアップ
  • # 学会・セミナーレポート

6月2日、3日の両日に渡り、幕張メッセ国際会議場にて、第26回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会が開催されました。その中の「理事会企画4 論文賞・研究助成演題」として、下記の4つの研究発表が行われました。その概要を紹介します。


側頭部エコーによる栄養モニタリングを用いた在宅低栄養患者の栄養管理プログラムの開発

演者 上畑陽子さん(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野)

上畑陽子さん(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野)の写真

 在宅低栄養患者さんの増加に伴い、在宅栄養管理の重要性が増し、ニーズが高まってきています。しかし、従来の体重や上腕肢といった身体計測、血清アルブミンによる栄養モニタリング方法や評価では、寝たきりで特に拘縮がある患者さんでは、身体計測が困難なケースが多くみられました。また評価も、1~数カ月後ごとの場合が多く、栄養介入の効果測定が早期にできず、適切な栄養介入の迅速な提供ができないという問題がありました。

 そこで、上畑さんはこれまで低栄養の診断基準として臨床的に用いられてきた「側頭筋の減少」に着目し、側頭部エコーによる栄養モニタリングを開発するにあたり、側頭部エコーが在宅でも可能かを検証することにしました。

2017年3月より調査を開始し、現在、在宅の低栄養高齢者4名について調査中です。その症例を発表するとともに、研究結果の考察として、 ①るいそうが著明な高齢患者さんは、そうでない人と比べ、側頭筋厚が薄い傾向にあること、②同程度の体格でも、エネルギー充足が不安定な場合は、より側頭筋厚が薄い傾向を認めたことを挙げました。この2点から、側頭筋厚の計測は、体格だけでなく、直近のエネルギー充足状況も推定できる可能性が考えられると説明しました。

今後もフォローアップ調査を継続し、側頭部エコーの実施可能性を証明し、症例数を増やして対象群と比較することで、側頭部エコーを用いた栄養管理プログラムで、栄養改善効果を示していきたいと結びました。

ハイリスク患者における創傷被覆材の褥瘡予防効果の検証

演者 佐々木早苗さん(東京大学医学部附属病院看護部)

上畑陽子さん(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野)の写真

 日本褥瘡学会の発表では、0.36~2.08%で褥瘡が発生しているとされています。また佐々木さんの勤務する東京大学医学部附属病院での褥瘡の発生率は、6年前から徐々に低下しているものの、いまだ0.37%の発生率となっており、褥瘡が防ぎきれていない状況があります。そこで佐々木さんは、まずは同院の褥瘡発生におけるハイリスク要因の調査を実施しました。

 その結果、仙骨部と尾骨部において、褥瘡ハイリスク患者さんの中でも「強度の下痢が続く状態」「極度の皮膚の脆弱」を有する患者さんに褥瘡が発生していることを明らかにしました。そして、これらの項目を示す患者さんを対象に、仙骨部と尾骨部を覆うように創傷被覆材を貼付する「介入群」と、創傷被覆材を貼付しない従来の方法の「コントロール群」とを比較しました。なおこの研究に使用した創傷被覆材は多層構造で、ドレッシング材交換時の皮膚剥離のリスクが低減するものを使用しました。

 その結果、介入群での褥瘡発生率は1.7%で、コントロール群の7.7%と比較し、介入群は優位に低値でした。従って、ハイリスク項目の「強度の下痢が続く状態」または「極度の皮膚の脆弱」を有する患者さんの、仙骨部と尾骨部に多層構造の創傷被覆材を貼付することで、褥瘡予防に効果的な可能性があるといえる、とまとめました。

乳がん術後放射線照射部位における皮膚バリア機能の経時的変化と他覚症状および保湿ケアとの関連性

演者 宮前奈央さん(神戸低侵襲がん医療センター看護部)

宮前奈央さん(神戸低侵襲がん医療センター看護部)の写真

 乳がん術後の放射線治療における有害事象で、最も多いのが放射線皮膚炎です。放射線皮膚炎は皮膚バリア機能への影響が予想されますが、放射線皮膚炎に関する研究が不足しているために、それが明らかになっていません。そこで宮前さんは、乳がん術後の放射線治療に伴う経時的な皮膚バリア機能の変化を明らかにする、皮膚バリア機能と放射線皮膚炎の他覚症状と保湿ケアの関係を明らかにする、という2つの目的で研究を行いました。

 皮脂量、角質水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)、表皮pH、皮膚の厚み、表面温度を皮膚バリア機能の指標として設定し、治療中は1週間に1回、治療後は1、2、4、8週間後の外来受診時に測定しました。その結果、皮膚表面の温度は治療2週目から、表皮pHは治療3週目から優位に上昇し、治療終了後8週目まで続いていることが明らかになりました。

 また、保湿ケアによる皮膚のバリア機能との関連として、保護作用を認めたものは表皮pHと角質水分量で、このうちの角質水分量に着目し、①治療3週目以降に保湿ケアを開始した群、②治療開始前から保湿ケアを実施していた群、の2つで比較をしました。その結果、①は治療1~2週間目に優位に角質水分量の低下がみられ、②は角質水分量の維持に効果があることが示されました。また、他覚症状である落屑がある場合は、角質水分保持機能や保湿機能が低下していることが明らかになりました。

宮前さんはまとめとして、放射線治療前からの保湿ケアを推奨するとともに、スキンケアには治療後も含め、弱酸性で低刺激のものを用いた保湿ケアを継続することと、落屑が生じている場合は、保湿剤に加え角質層を油分でカバーするケアが有効である、などを挙げました。

非侵襲的陽圧換気療法施行下に発生する医療関連機器圧迫創傷予防のための接触圧評価方法の確立

演者 仲上豪二朗さん(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野)

仲上豪二朗さん(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野)の写真

 非侵襲的陽圧換気療法(以下、NPPV)では、マスク周囲からの空気のリークを起こさないマスクフィッティングが重要ですが、ストラップを強く締めすぎると、鼻梁部などに医療関連機器圧迫創傷(以下、MDRPU)を起こしてしまうことがあります。また今のところ、適切にフィッテングができているかという、顔面の接触圧評価目的に信頼性・妥当性のある計測機器がありません。そこで、仲上さんたちの研究グループでは、NPPVマスクの接触圧測定機器を開発しました。今回の研究の目的は、この新しく開発した接触圧測定機器の信頼性と妥当性を検証することです。

 調査は平均年齢35歳の健康な20名の男女に、NPPVマスクを装着してもらい、新しく開発したセンサーを用いて、①ストラップをちょうどよい締め方をしたとき、②非常に強い締め方をしたとき、の2つで測定し比較を行いました。結果として、センサーは高い信頼性があり、明らかに締め付けを強くした②のほうが接触圧が有意に高くなることから、妥当性もあることが検証できました。

 さらに、このセンサーを使った応用例として、現在、同研究グループが開発しているNPPVマスクによるMDRPU予防のためのフィッティングデバイスの評価を紹介しました。このフィッティングデバイスは、顔面形状を3Dスキャナーで計測し、マスクとの間に生じる間隙を埋めるもので、3Dプリンタによって作成できます。使用した群と使用していない群とで接触圧を測ったところ、使用している群では鼻梁部の接触圧が下がっており、また全体の接触圧が均等に分散されていることがわかりました。その結果、市販のNPPVマスクでも、フィッティングデバイスにより各個人の顔にピタッと装着できることが示唆されました。

 これらの検証により、このセンサーを用いることで、NPPVマスクのMDRPU予防のためのケア方法の開発や、マスクフィッティングの教育が可能となる、と仲上さんは考察しています。


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