1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 透析・腎臓内科
  5. 腎疾患
  6. 慢性腎臓病(CKD)・腎不全
  7. 第16回 看護師が知っておきたいCKDガイドラインのポイント

【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第16回 看護師が知っておきたいCKDガイドラインのポイント

  • 公開日: 2018/2/3

診療ガイドラインとは?

 診療ガイドラインの定義として頻繁に引用されているもので、米国医学研究所(Institute of Medicine)による定義があります。それによると、診療ガイドラインとは「医療者と患者が特定の臨床状況での適切な診療の意思決定を行うことを助ける目的で系統的に作成された文書」とされています1)。また、わが国でも1999年厚生労働省・医療技術評価推進検討会において、科学的根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine; EBM)を普及させるために、ガイドラインの作成に研究助成を行うことが決定されてから、ガイドライン作成が促進され、さまざまながん(乳がん、肝がん、大腸がん、胃がんなどなど)についてガイドラインが作成されています。

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013とは

 現在、透析診療においても日本透析医学会・日本腎臓学会を筆頭に各学会からさまざまなガイドラインが作成されております。その中でも、2002年に米国腎臓財団で初めてCKDという概念が提唱されたことを期に、わが国でも2007年9月に「CKD診療ガイド」 を作成、2009年には CKD 全般を対象として「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009」が刊行されました。その後、改訂され、現在「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」が日本腎臓学会から刊行されています。このガイドラインでは、日常診療で感じると思われる疑問(Clinical Question:クリニカルクエスチョン、以下CQ)をCQ形式で表示し、またCKD診療全般のエビデンスが再評価されています。

 CQ形式のメリットは、現場スタッフが疑問に思うこと、困っていることに焦点をあて、その疑問にはっきりと答えるためのステートメント(回答)が明確に提示されているということが言えます。また、それぞれ治療に関するステートメントにはエビデンスレベルに基づいた推奨グレードが明記されており、現場に即したガイドラインとなっております。

 また、この2013年版での大きなポイントの一つは、高血圧合併患者の降圧目標値です。
2009年版では130/80mmHg未満、2012年版では130/80mmHg以下が降圧目標値となっていましたが、2013年版では、糖尿病合併の有無、蛋白尿の有無によって降圧目標値が区別されました。糖尿病非合併のCKDでは140/90mmHg未満、糖尿病合併のCKDでは130/80mmHg未満が、降圧目標値となり、糖尿病非合併でも蛋白尿がある場合、130/80mmHg未満となりました。また、高齢者CKDでも降圧目標値は同じですが、ただ、降圧に際しては、腎機能の悪化や臓器の虚血症状がみられないかを確認しながら、緩徐に降圧することが強調されるなど、高齢者CKDについての記述が多くなったのもポイントの一つです。

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常診療ガイドライン2012とは

 また近年では、CKDで生じるミネラル代謝異常は、骨や副甲状腺の異常のみならず、血管の石灰化等を介して、生命予後に大きな影響を与えることが認識され、CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)という新しい概念が提唱されるようになり、2012年、日本透析医学会より、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」も刊行されております。このガイドラインでは2006年に提示されたリン・カルシウム・副甲状腺ホルモンの目標値の妥当性が検証され、血管の石灰化、透析アミロイドーシス、二次性副甲状腺機能亢進症などの病態、さらに腹膜透析・保存期・小児・移植後等がカバーできるよう、範囲が広がったものとなっています。

ガイドラインを用いるメリット・デメリット

 これらガイドラインは、適切に用いれば、医療者と患者さんにとって有用な情報源となり得ます。しかし、ガイドラインを過信しすぎると、ガイドラインに従うことが、例外なくどんな患者さんにも最善であるという誤解を生むことがあります。あくまでも、ガイドラインは標準を示すものであり、すべての患者さんに画一的な治療を行うことを推奨しているものではなく、必要に応じ治療法を変えることが望ましい場合もあります。

 また、全てのガイドラインで言えることですが、設定された目標値や治療に関するステートメントは、現時点で考えうるものであり、今後のデータの蓄積によっては、将来変更されることもあり得ます。腎臓病学は常に進歩しています。私たち医療スタッフは、常に最新の情報を吸収し、技術力を高める努力を怠ってはなりません。


引用参考文献
1)米国医学研究所:Field M, Lohr K. Clinical Practice Guidelines:Washington, D.C.: Institute of Medicine., National Academies Press:1990
2)医療技術評価推進検討会報告書:1999(2018年1月19日閲覧)http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1103/h0323-1_10.html
3)日本腎臓学会,編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013.東京医学社,2013.
4)日本透析医学会:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン2012.透析会誌 2012;45(4):301-56.

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

食事制限を守れない腎不全患者さんに関する看護計画

食事制限を守れない腎不全患者さんに関する看護計画  腎臓は生きていく上で作られる老廃物を尿として身体から排泄してくれる臓器です。しかし、腎不全によってその機能が障害されることで身体の老廃物を上手く排泄できなくなるため生活に工夫が必要になります。また、腎不全を悪化させないため

2023/9/29