「てんかん」プレスセミナー|てんかん診療ガイドライン2018
- 公開日: 2018/7/24
2018年7月2日品川グランドセントラルタワーにて、大塚製薬による「てんかん診療ガイドライン2018」についてプレスセミナーが行われました。ガイドラインの作成委員会の委員長である、公立大学法人福島県立医科大学 神経再生医療学講座教授 宇川義一先生が、ガイドライン改訂の背景や使用にあたっての留意点などを中心に解説されました。その様子をレポートします。
ガイドライン改訂までの流れ
現在、日本国内のてんかん患者さんは100人に1人程度の割合で、かなりの罹患率であることがわかります。てんかん治療にはてんかん専門医以外も多く携わっており、一般医の指針として、2010年に「てんかん治療ガイドライン2010」が作成されました。
しかし、作成後も新たな抗てんかん薬が販売され、英国ガイドライン(NICE)や国際抗てんかん連盟(ILAE)のてんかん分類が改訂されるなど、てんかん治療を取り巻く状況は変化しています。これらの変化を受け、「てんかん治療ガイドライン2010」の改定版である「てんかん診療ガイドライン2018」が新たに作成されることとなりました。
てんかんガイドライン2018改訂の概要
てんかん診療についてのガイドラインはさまざまな学会から出ていますが、「てんかん診療ガイドライン2018」は日本神経学会だけではなく、日本てんかん学会、日本脳神経学会、日本小児神経学会、日本神経治療学会が協力し作成しました。
今回の改訂の概要は下記になります。表現など一部変更しています。
- 新規抗てんかん薬の記載を追加
- クリニカル・クエスチョン(CQ)についてGRADEシステムを用いてシステマティックレビュー(SR)を行った
- 抗NMDA受容体抗体脳炎について記載
GRADEシステムを用いたSRは初の試みであり、わかりやすいように他のCQとは章を変え区別しています。SRを行ったCQは推奨グレードとエビデンスを記載し、エビデンスの解説をしていますが、それ以外のCQは専門的な総合的意見を記載し解説しています。
抗NMDA受容体抗体脳炎に関しては、治療法を間違えなければ一定数で社会復帰できる患者さんがいるということが知られるようになり、近年注目されている疾患です。
また、成人および小児てんかんの最新の診断・治療・検査・予後についても記載されており、薬剤の使用方法など、治療に関しては成人をベースにして記載されています。
ガイドラインの今後と課題
神経疾患の治療も日々進歩しており、以前は治らないとわれていたような疾患も、治療ができるようになってきています。このような変化を反映させるために、ガイドラインは数年に一回程度の定期的な改訂が必要となりますが、ガイドラインの作成には多くの時間を要し、改訂までに時間がかかってしまいます。そこで、日本神経学会では、新たな情報が出た場合などは追補版をホームページ上に掲載することで対応しています。また、次期改訂をよりよいものとするため、評価や意見も受け付けています。
最後に、宇川先生は「てんかんは頻度の高い疾患でありながら、日本ではまだまだ偏見があり仲間内などでは隠そうとする人が多い。脳の奇形など先天性のものによるてんかんはなかなか治らないが、そうでないものは薬さえ飲んでいれば普通の人となにも変わらないということを知って欲しい」と話しました。