1. トップ
  2. 看護記事
  3. 看護クイズ・読み物
  4. 書籍紹介
  5. 【書籍紹介】看護師のためのアンガーマネジメント 「怒り」の感情を上手にコントロールする技術

【書籍紹介】看護師のためのアンガーマネジメント 「怒り」の感情を上手にコントロールする技術

  • 公開日: 2019/9/16

怒りの感情と上手に付き合うための技術とは

 「アンガーマネジメント」は、医療系・看護系のセミナーで取り上げられる機会も多く、知っているという人も増えてきました。しかし、具体的な内容を知らない人、怒らない方法だと誤解している人が少なくありません。アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで始まった、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。理論と技術を学び、実践を繰り返すことで怒りの感情をコントロールできるようになります。

 怒りには発生するメカニズムや構造(しくみ)があることを知っているでしょうか。同じ現象であっても怒ってしまうときと、そうでないときはありませんか? では、その違いはなんでしょうか。

 感情は起きた出来事に自分なりに意味づけすることで生まれます。怒りには構造がある、そんなことを知っているだけでも、怒っている自分を客観的に見つめることができるようになるのではないでしょうか。

 また、怒りの感情は単体で発生することはありません。一次感情をベースに、二次感情として生まれます。一次感情とは「痛い」「寂しい」などのネガティブな感情のことで、それが溜まると水がコップから溢れるように、感情が怒りへと変わります。これは、氷山にたとえることもでき、怒りが氷山の一角であれば、海中にはさまざまな一次感情が隠れています。

 怒りのパターンは人によって違うということも知っておくとよいかもしれません。一人ひとり性格が違うように怒りにもパターンがあるので、それぞれのパターンによって有効な対処法は変わってきます。自分の怒りがどんなタイプであるかは、本書にある「アンガーマネジメント診断」で知ることができます。

 怒りについて理解し、自分を客観的にみつめることができるようになったら、具体的な実践テクニックを学びましょう。アンガーマネジメントを身につけるためには対処術と体質改善の2つの方法があります。対処術にはいくつかの種類があり、自分に合っている方法を見つけられるので、実際の仕事や私生活ですぐに実践することができます。

怒りの裏にある本当の気持ちに気づく

 著者は看護師歴30年以上の現役看護師で、アンガーマネジメント協会のファシリテーターとして活動している光前麻由美さんです。多数のアンガーマネジメント協会認定資格のほか、ヘルスカウンセリング学会公認のSATコーチャーの資格を持っており、メンタルヘルスについてのプロフェッショナルです。二児の母親でもあり、看護師が抱える悩みをより包括的な視点で解説しています。

 本書では図や表、イラストなどを多く使っているため、忙しい看護師さんも読みやすい内容になっています。前半はアンガーマネジメントの基本と実践テクニックについて説明し、後半はそれをもとに看護現場で起きやすい事例を使って解説する、という構成になっているため、自分が興味のある部分から読み始めるということもできます。

 怒りに対してネガティブなイメージを持っている人がほとんどだと思いますが、怒りは自然な感情で悪いことではありません。この本は、怒ることを我慢するのではなく、怒るかどうかの判断は自分で決めてよいのだということを教えてくれます。これまで怒りの感情を抑えきれず後悔した経験がある人や、職場の人間関係でイライラしている人、後輩や部下を上手に叱る方法が知りたい人はぜひ本書を手に取ってみてください。

 怒りの裏にある本当の気持ちやリクエストを明確にして、きちんと相手に伝えるためには、アンガーマネジメントの理論を知っているかそうでないかで大きく違います。ぜひ、この本を活用して怒りの感情を上手にコントロールできる人になってください。

看護師のためのアンガーマネジメント 「怒り」の感情を上手にコントロールする技術
著 光前麻由美
定価 1,500円+税
ページ数 136ページ

カテゴリの新着記事

ポジショニングについてしっかりと学べる1冊

豊富な図で基礎から実践まで学べる  本書はセミナーや学会などで長年ポジショニングにかかわってきた田中マキ子先生が監修したポジショニングの基礎から実践まで必要な知識がまとめられている1冊です。改訂第2版となる今回は、スモールチェンジの効果など最新の知見も追加されています。

2024/2/7

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949