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【連載】エキスパートが教える! 知っておきたい看護技術

ウロストミー(尿路ストーマ)の基本知識|種類と主な造設例

  • 公開日: 2020/5/11

ここでは、ストーマケアを行うにあたり、まずは知っておきたいウロストミーの基本知識を解説します。


【関連記事】
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ウロストミーとは

 ウロストミー(尿路ストーマ、人工膀胱)は、正常な尿路(膀胱から尿道を経て排尿する)が障害された場合、または膀胱の機能(畜尿機能・排尿機能)が損なわれた場合に、尿路を変更する「尿路変向術」により造設されます。

 その原因はさまざまですが、多くは膀胱がんで膀胱を摘出したことによる造設です。

●主な造設例
・がんの根治手術で膀胱など尿路の一部を摘出した場合(膀胱がん・尿道がんなど)
・がんの浸潤や炎症性疾患(尿路結核・膀胱結核※・間質性膀胱炎)などにより尿路に通過障害が起きた場合
・神経因性膀胱により、排出障害だけでなく蓄尿障害を来すまで悪化した場合
・先天性疾患(膀胱・下部尿路形成異常など)により尿路機能に障害が起きた場合
・外陰部の外傷により尿道が断裂した場合

※尿路結核・膀胱結核……結核菌による感染症。肺結核から血行性に感染が広がり、尿管や膀胱に慢性肉芽腫性炎症を生じる。

ウロストミーの種類

 ウロストミーには、非禁制型(失禁型)ストーマと禁制型ストーマがあります。

 非禁制型ストーマは、主に回腸導管、尿管皮膚瘻といった尿路変向術によって造設され、中でも多いのは、回腸導管です。
 非禁制型ストーマの場合、ストーマから排出される尿を貯めておくストーマ装具の着用が必要となります。

 禁制型ストーマは、腸管で代用膀胱を造設し、尿がストーマから漏れないように尿禁制機能のある構造でつくられます。そのため、尿の排泄は間歇自己導尿により行われます。手術が複雑で難しく、結石や電解質異常などの合併症が多いことから現在は実施されることが少なくなっています。

非禁制型ストーマ

回腸導管
  回腸の一部(約15㎝)を切除し、その切除した部分(導管)に尿管をつなぎ、尿の排泄口となるストーマを腹部に造設します(図1)。
 遊離した回腸の口側端を盲端とし、肛側端をストーマとします。

図1 回腸導管
尿路ストーマ回腸導管の図

尿管皮膚瘻
 尿管を直接皮膚に吻合して、ストーマを造設します。尿路変向術の中で最も簡易的な術式です(図2)。ストーマを片側に1つ(一側性)、または腹部両側に1つずつ(両側性)造設する方法があります。

 時間の経過に伴い、尿管皮膚瘻の孔が針孔のように狭窄していくと、閉塞を防ぐため、カテーテルを挿入することもあります。

図2 尿管皮膚瘻
尿管皮膚瘻の図

禁制型ストーマ

 腸を使って代用膀胱をつくり、そこに尿管・尿道を吻合します。作成方法には、回腸利用尿禁制型代用膀胱(コックパウチ法)、回腸・盲腸・上行結腸利用尿禁制型代用膀胱(マインツパウチ法、インディアナパウチ法)などがあります(図3)。

 尿の排泄は、間歇自己導尿で行います。また、代用膀胱は腸でつくられるため、中に粘液がたまり尿の閉塞、代用膀胱の炎症が生じることから、定期的なカテーテルによる洗浄が必要です。

 ストーマ装具を装着する必要はありませんが、自己導尿や代用膀胱の洗浄などの管理が必須で、感染、炎症のリスクもあります。

図3 禁制型ストーマ
禁制型ストーマ

ストーマ造設以外の尿路変向術

 ストーマは造設されませんが、尿路変向術として腎瘻、膀胱瘻が実施される場合があります。腎瘻は背部から腎盂に、膀胱瘻は恥骨上部から膀胱内にカテーテルを挿入して留置します(図4)。カテーテルは、閉鎖式の畜尿バッグにつなげて管理します。留置されたカテーテルの定期的な交換が必要です。また、瘻孔や皮膚周囲の感染などのリスクがあります。

●主な尿路変向術の例
腎瘻が造設される場合:両側性の上部尿路の閉塞など
膀胱瘻が造設される場合:前立腺肥大による尿閉や尿道断裂など経尿道的なカテーテル留置ができない場合。緊急処置として行われることが多い

図4 ストーマ造設以外の尿路変向術
ストーマ造設以外の尿路変向術


患者さんの術後の生活を考えた視点を

 ストーマはセルフケアが重要となります。非禁制型尿路ストーマでは、尿が常に流れているため、パウチの交換時には、ガーゼ等で尿を吸い取りながら行う必要があります。

 高齢者になるほど、細かな作業が難しくなるため、家族への指導や支援体制の調整など、退院後を見据えたケアが重要です。


参考文献

●宮嶋正子,監:はじめてでもやさしいストーマ・排泄ケア 基礎知識とケアの実践.学研メディカル秀潤社,2018.
●前田耕太郎編:ストーマケアに役立つ知識の整理と活用,WOC Nursing 2016;4(12):14-9.

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