【座談会】時代に必要とされるプライマリケア・クリニックとは ―小児科看護のやりがい・魅力を語る―
- 公開日: 2020/1/9
医療法人社団ナイズは、東京を中心に多拠点で展開する小児科中心のクリニックがキャップスクリニックです。「幸せの総量を最大化すること」を目標に、外来トリアージ、週休3日制、365日夜間診療など、独特な取り組みを打ち出し続けるキャップスクリニックとはどのようなクリニックか。2人の看護師と理事長・総院長の座談会をお届けします。
強く印象に残った「365日開院」、「ここに自分のやりたいことがある」と思った
──まず看護師のお2人の自己紹介とともに、キャップスクリニックに入職しようと思った理由を教えてください。
中西:キャップスクリニックの西葛西と北葛西で、看護師リーダーをしています。今年で8年目です。
学生の頃から小児科で働きたいと思ってきました。大学で地域医療にも興味をもち、小児科病棟で経験を積んでから、地域に出てみようと個人のクリニックで働きました。他の施設のことも知って視野を広げてみようと転職活動をするなかで、キャップスクリニックに出会いました。
強く印象に残ったのは、「365日開院」の方針です。人は曜日に関係なく体調を崩したり夜にも具合が悪くなったりします。ですから365日、さらに夜まで開いていることが、人の営みと合っていてとても意義のあることだと感じました。
岸:私は、キャップスクリニック錦糸町に2019年3月に入職し、今はサブリーダーを務めています。
大学を卒業して勤務した救命救急センターでは、患者さんが3、4時間も待って診察がたった3分で終わったり、早く受診すべき患者さんが何時間も待つ姿を目の当たりにしてきました。その後に勤務した保育園でも、お母さんたちが小さなことで心を痛めて心配していたり、逆になぜこんなになるまで放っておいたのだろうと思うことがあり、お母さんたちに伝えたいことが多くなっていきました。
そんなときキャップスクリニックで、小児科のトリアージのアルバイトを知りました。週末に働いてみたら、200~300人もの患児たちを看護師がトリアージして、適切に受診の順番を決めていました。またホームケアにも力を入れていると知り、自分のやりたいことがすべてあると感じ、すでに決まっていた次の就職先を断って入職しました。
「365日開院」は、困ったときにいつでも手を差し伸べられるということ
──お2人とも、キャップスクリニックに惚れ込んで入職を決めたようですね。白岡先生からキャップスクリニックの特徴を教えてください。
白岡:キャップスクリニックは、主に小児科を専門とするプライマリケア・クリニックです。キャップスの名は「Child(子ども) And Parent(保護者) Support(支援)」の頭文字からつけました。
クリニックは本来、プライマリケア(総合診療)を提供するところです。ご家族やお子さんの生活に近いところにあり、看護や医療を提供できる特徴があります。なかでもキャップスクリニックは365日年中無休、夜は21時まで運営することで、困ったときにすぐに手を差し伸べられる環境をつくっています。
365日年中無休というと、コンビニエンス・ストアをイメージされる方がいるかもしれませんが、私たちは、どんな症状であっても気軽に受診することを推奨しているわけではありません。
必要なときに受診をし、受診するほどでもないときは、自宅でしっかりと「ホームケア」で対応できるように、ケアの方法や適切な医療の知識をご家族に提供しています。自分自身で健康をつくり出せる「セルフメディケーション」を身につけられるように支援を行っています。
──白岡先生はなぜこのようなクリニックをつくろうと思われたのですか?
白岡:私が医師として夜間の救急外来で勤務していたときの経験が原点です。わざわざ夜中の救急外来でなくてもよい、と思われる受診がとても多くあり、一方で重症の患者さんには、ゆっくり手がかけられないジレンマがありました。そのとき、医療機関がもっと地域住民に歩み寄り、患者さんやご家族に正しい医療情報を提供し、受診の適正化を図るべきだと感じました。
当院では、ホームケアやセルフメディケーションに力を入れていますので、看護師が大きな役割を果たしています。待合室でも患者さんの声に耳を傾け、悩みに寄り添うほか、勉強会を開いたり、冊子やプリントをつくり情報発信に努めてくれています。クリニック全体の動きを見て、患者さんを上手に誘導し、待ち時間を短くする工夫なども考えてくれます。看護師1人ひとりの仕事の範囲が大きく、重要な戦力になってくれていると感じています。
キャップスクリニックに入って「チャレンジしたい」「経験したい」という自分に変化してきた
──看護師の裁量が大きい分だけ、責任も大きそうですね。キャップスクリニックに入って、お2人は自分にどのような変化がありましたか?
中西:以前の私はあまり何かに積極的にチャレンジしたということがなく、新しいことを前に戸惑う気持ちがありました。しかし、ここに入職してから8年の間に拠点の数がどんどん増え、クリニックとしての規模が大きくなるにつれ、自分の役割も増え、それまで経験できなかったことが経験できていると感じています。
今では、何かチャレンジすることで自分が変わるかもしれない、失敗するかもしれないけど、それも何かしらのプラスになるかもしれない、経験してみたいという気持ちに変わってきました。
岸:白岡先生が言われたように、看護師が担う幅が広いですね。
保助看法では、「患者さんの療養上の世話と医師の診療の補助」が看護師の仕事ですが、私は今、お子さんの情報を事前に医師に伝えて診察しやすく工夫したり、時には医師に診察の順番をお願いするなどして、診察時間を短くするコントロールも担っています。また、大きな病院では多職種によって役割が分かれていますが、今は医療機器の修理をメーカーに依頼するといった、技師が行うような仕事もしています。キャップスクリニックは園医もしていますから、保育園で勉強会を開催したり、今後は地域で活動することもおもしろそうだと思っています。
私はここで、一番看護師らしくないことをしていきたいなと思います。医療クラークの経歴などは本当にバラバラで、キャップスクリニックは多様性を受け入れてくれる組織だと感じます。だからそこに乗っかって、「らしくない看護師」になりたいですね。
白岡:キャップスクリニックで求める看護師の役割は、おそらく今までお2人が働いてきた場所の看護師のイメージとは、少し違うのだと思います。在宅勤務で医師のシフト調整をしている看護師やIT部隊として患者さんのデータから、満足度と院内滞在時間の相関関係などを分析しているグループもいます。
「こんなことをするの?」と感じることもきっとあるでしょう。でも、それができるようになることで看護の幅も人間的な幅も広がっていきます。多くの経験を積むことで、さまざまな患者さんの気持ちに寄り添えるようになります。スタッフには躊躇することなく、なんでも挑戦していってほしいと思っています。
──キャップスクリニックにはどんな人材が適していますか?
白岡:1つは、新しいことに挑戦したい向上心がある人。2つ目は、自分の利益よりも患者さんや仲間の利益を考えられる「利他の精神」がある人。3つ目は、社会のなかで医療を変えたいという大きな志をもっている人です。3つ目はなかなかもてないかもしれませんが、今の医療に何かしら違和感を感じている人であれば、キャップスクリニックに合っていると思いますよ。
採用の際にも、これまでの経歴よりも、その人が「どうして医療と向き合いたいと思ったのか」を重視しています。また男性看護師も積極的に採用したいと考えています。小児科は母親とのやり取りが多く、女性の看護師が採用されるケースが多いのですが、多様性が大切だと考えていますので、男女問わずどういう思いをもっている人かを重視にしています。
多様性があると、何か問題が起きたとき誰かが解決策をもっている可能性が高くなり、組織にとって強みになるのです。医療機関らしくないクリニックだと思います。
どんな人にも居場所があり活躍できる場で、自分の可能性を広げてほしい
──キャップスクリニックが個性豊かであることが伝わってきました。お2人にとって、職場としての魅力はどこにありますか?
中西:役職や立場に関係なく、意見を受け入れてくれる職場です。すごくありがたいなと思います。「自分はこんなことをやってみたい」という強い思いをもっている人であれば、何かしら活躍できる場があるクリニックだと思います。
岸:働き方のバリエーションが豊富ですね。フルタイム、パート勤務、産休明けの在宅勤務などがあり、働く場所としても複数のクリニックがあるため、ある意味、煮詰まるということがありません。そして、何より人柄を重視してくれます。
また、365日営業というと大変そうに聞こえるかもしれませんが、どの曜日に休んでも同じなので平日の休みが取りやすく、かえって融通を利かせられます。もちろんワークライフバランスも大切にされています。
白岡:どんな人にも居場所があり活躍することができるのが、キャップスクリニックの文化だと考えています。多様性をとても大事に考えているからですね。
今後もクリニックの数をさらに増やしていき、医療の枠組みを超えた教育や取り組みも考えていますので、新しい仕事がどんどん生まれてきます。看護師の枠にとどまらず、自分の能力を活かしたい、可能性を広げたいという方がいれば、ぜひ来てほしいと思っています。
また、看護師の仕事は「感情労働」だと認識していますが、患者さんや家族の不安を優しく受け止めるには、自分自身にゆとりがなくてはなりません。そこで現在、週休3日制を導入しつつあり、人員が整ったクリニックから実施しています。しっかり休んでリフレッシュして、全力で仕事に集中していってほしいからです。
──働きやすさ、活躍のチャンスなどが伝わってきました。そんなキャップスクリニックは社会でどのような役割や存在でありたいとお考えですか。
白岡:10年20年後、医療はより地域にシフトし、クリニックが中心になっていると考えています。そのとき「模範となるクリニック」「次世代のクリニック」として世の中に提案できる存在でありたいと思っています。
最終的には、各クリニックを予防や健康教育を届けられるセルフメディケーションの拠点とし、その結果、生活習慣病などで亡くなる人が少なくなり、日本の医療費の削減につなげることができたらという大きな夢を掲げています。