1. トップ
  2. 看護記事
  3. 注目ピックアップ
  4. 第10回 外科手術と経腸栄養 -周術期経腸栄養療法-

【連載】看護師のための経腸栄養講座

第10回 外科手術と経腸栄養 -周術期経腸栄養療法-

  • 公開日: 2015/10/2
  • # 注目ピックアップ
  • # 経腸栄養

▼経腸栄養について まとめて読むならコチラ
経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


まとめ

1.高度な低栄養状態の患者は、手術を遅らせても、10-14日の術前の栄養管理を行うことが推奨される。
2.生体の免疫能や防御能を高めるとされる特定の栄養素(n-3系不飽和脂肪酸、アルギニン、グルタミン、核酸など)が強化された経腸栄養剤(immune-enhancing diet: IED, もしくはimmune modulating enteral diet: IMD)を用いて、臨床的アウトカムの改善を目的とする栄養療法がimmunonutritionである。感染性合併症発生率の減少(約50%程度)、在院日数、抗生物質使用量、人工呼吸管理期間、多臓器不全の減少、などの効果がある。
3.術後、経口摂取が1週間以上にわたり制限されるような侵襲の大きな手術を受けた場合、術前より低栄養状態のある場合、術後合併症が発生した場合に、術後の積極的な栄養管理が必要となる。
4.術後早期経腸栄養は、静脈栄養に比較し、合併症の減少や入院期間野短縮が期待できる。
5.ERASとは、北ヨーロッパを中心に始まった、早期回復のための周術期管理の包括的プロトコールである。手術における安全性向上、術後合併症の軽減、早期回復、術後在院日数の短縮、コスト低減を目指しておこなわれ、特に大腸がん術後で臨床的効果が検証されてきた。


1、術前栄養管理と経腸栄養

1) 術前栄養管理の必要性

 低栄養患者が手術を受ける場合、術後の合併症の発生率や、死亡率が高く、入院日数も増加し、コストもかかります。14日以上の経口摂取の減少は術後の死亡率が高くなります。そのため、高度な低栄養状態の患者は、手術を遅らせても、10-14日の術前の栄養管理を行うことが推奨されています。

 術前栄養療法に必要な時間は、生理的な機能を回復させるためには4-7日間、さらに体内タンパク質の回復を目標とした場合は7-14日の栄養療法が必要と考えられています。 ESPEN(欧州静脈経腸栄養学会)ガイドライン(ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition including organ transplantation, 2006)では、術前の栄養管理をおこなう具体的な適応として、以下の場合となっています1)

 ● 6か月で10-15%以上の体重減少がある場合
 ● BMI<18.5Kg/m2の場合
 ● SGA(主観的包括的評価)がグレードC(高度低栄養)の場合
 ● 血清アルブミン<3.0g/dlの場合(肝臓・腎臓機能異常は除く)

 術前栄養管理の方法としては、原則的には経口を基本とします。しかし、通常の食事摂取が困難な場合には経口補助栄養(ONS:oral nutritional supplements)として経腸栄養剤や濃厚流動食を経口摂取します。それでも、上記の方法が十分にできない場合には、経管栄養、それも難しければ静脈栄養とします。

2) immunonutrition

 生体の免疫能や防御能を高めるとされる特定の栄養素(n-3系不飽和脂肪酸、アルギニン、グルタミン、核酸など)が強化された経腸栄養剤(immune-enhancing diet: IED, もしくはimmune modulating enteral diet: IMD)を用いて、感染を予防、入院期間の短縮、死亡率の低下などの臨床的アウトカムの改善を目的とする栄養療法をimmunonutritionと呼びます。(病態別栄養剤、immunonutritionを参考のこと)。

 ASPEN(米国静脈経腸栄養学会)ガイドラインによると、対象患者は、待機的な消化器手術症例で、

 [1]中等度から高度の栄養障害(血清アルブミン値<3.5g/dl)を伴う上部消化管手術症例
 [2]高度の栄養障害(血清アルブミン値<2.8g/dl)を伴う下部消化管手術症例

 となっています。

 またさらに、それに加えて、栄養障害のない消化器手術症例患者にも、栄養障害患者同様に効果が確認されています1,2)。IEDの投与方法は、待機手術症例に術前5-7日、1日1000mlを経口投与します。これに加えて、術後にも、早期経腸栄養として5-7日用いることも行われます。栄養障害のない患者では、術前投与だけでも効果が期待できるとされています。

 Immunonutritionの期待される効果としては、

 [1]感染性合併症発生率の減少(約50%程度)
 [2]在院日数、抗生物質使用量、人工呼吸管理期間、多臓器不全の減少

 などがあげられます3)

 重症敗血症状態にIEDを投与すると死亡率を増加させる可能性があることが報告され、アルギニンによる過剰な炎症反応が原因ではないかと考えられています4)。敗血症状態でのアルギニン含有IED投与には注意を払う必要があります。

2、術後栄養管理と経腸栄養療法

>> 続きを読む

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

看護師さんにお願いしたいオフェブ服用患者さんのサポート【PR】

看護師さんにお願いしたいオフェブ服用患者さんのサポート <動画監修: 製鉄記念室蘭病院呼吸器内科 主任医長 近藤瞬先生>  抗線維化剤オフェブ®は、呼吸機能の低下を抑制し、肺線維症の進行を遅らせることを目的としたお薬です。  適応症は、「特発性肺線維症(IPF※

2022/12/1

アクセスランキング

1位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
2位

簡単! 楽ちん! 点滴の滴下数計算 2つの方法

皆さんご存知の通り、点滴指示書には様々な書き方があります。 よくあるパターン ●流速が書かれている (例)「○○輸液500ml 60ml/h」 ●1日の総量が書かれている (例)...

251296
3位

転倒転落リスクに対する看護計画|高齢で転倒の恐れがある患

高齢の転倒転落リスクに関する看護計画 加齢に伴い筋力や平衡感覚などの身体機能が低下することに加えて、疾患やそれに対する治療、使用する薬剤の副作用、入院環境などさまざまな要因で転倒や転落しやすくな...

313501
4位

看護問題リスト・看護計画の書き方|看護記録書き方のポイン

ここでは一般的な看護記録を解説しています。また、看護診断名にNANDA-I看護診断を使用しています。実際の記録は院内の記録規定に従いましょう。 【関連記事】 *看護計画の「観察項目...

249544
5位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・...

250751
6位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
7位

心不全の看護|原因、種類、診断、治療

*2020年4月30日改訂 心不全とは  生活習慣病やさまざまな基礎疾患、加齢などが原因となり、心機能、特に多いのは左心室のポンプ機能が低下することで起こります。心臓のポンプ機能の代償...

249812
8位

陰部洗浄の目的・手順・観察項目〜根拠がわかる看護技術

*2020年4月16日改訂 関連記事 * おむつ交換のたびに陰部洗浄は必要? * 膀胱留置カテーテル 陰部洗浄・挿入・固定のコツ * 在宅療養におけるオムツ使用と陰部洗浄について知...

249675
9位

セルフケア不足の看護計画|高齢による認知機能低下がみられ

高齢による認知機能低下に関連したセルフケア不足  認知症と診断されていなくても認知機能の低下を認めることがあり、その度合いによって日常生活に支障をきたすことがあります。なんらかの疾患により入院し...

313002
10位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974