第12回 経腸栄養療法の合併症とその管理
- 公開日: 2015/10/4
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まとめ
1.経腸栄養療法に起因する合併症は、消化器系合併症、代謝性合併症、機械的合併症の3つに大別される。
2.消化器系合併症には、胃食道逆流・誤嚥、下痢、便秘などがある。代謝的合併症には、脱水や高血糖、低Na血症などの電解質異常、微量元素欠乏症などがある。また、機械的合併症は経腸栄養デバイスによる合併症で、カテーテルの詰まりや、位置異常、カテーテルによるビラン形成などが挙げられる。
はじめに
経腸栄養療法に起因する合併症には、消化器系合併症、代謝性合併症、機械的合併症の3つに大別されます。それぞれについての合併症の内容とその対処や管理法について述べます。
1、消化器系合併症
(1) 胃食道逆流・誤嚥
誤嚥性肺炎は、経腸栄養療法のもっとも重要な合併症で、致死的な状態に陥る危険性のある合併症です。食道裂孔ヘルニアなどで、下部食道括約筋(LES)機能が障害され、胃内容物が食道に逆流することを胃食道逆流と称しますが、この胃食道逆流が起こり、さらに咽頭、口腔内へと逆流が起こり、そこから気道に流れ込むことで、誤嚥性肺炎が起こります。
また、嚥下障害のために口腔内の汚染物質や経口摂取した食物が軌道内に流れ込むことでも誤嚥性肺炎は引き起こされます。誤嚥性肺炎の原因が、口腔内の汚染物質の誤嚥によるものと判断される場合は、口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有用です。胃食道逆流による誤嚥との鑑別は容易ではありませんが、球麻痺などで嚥下障害が高度であり、唾液をうまく飲み込むことができない状態で、栄養剤の嘔吐や口からの流出がみられない場合などは、それと判断されます1)。
逆流による誤嚥性肺炎と判断された場合は、まずは一般的な注意として、栄養剤注入前の胃内容を吸引し、残っている栄養剤や胃液を確認し、吸引してから栄養剤を注入することが挙げられます。残留が多い場合は、胃の排出能が低下していると考えられ、メトクロプロマイドなどの蠕動亢進薬や胃酸分泌を減少させる目的でH2ブロッカーなどの投与も考慮します。
また、胃排出能を高める作用のあるエリスロマイシンを使用することもあります。栄養剤注入時には、逆流を防ぐために、上体を30-45度程度に拳上し、投与後1時間くらいは拳上を持続させます。さらに、逆流による誤嚥を予防する工夫としては、1)栄養剤の滴下速度を落とす、注入ポンプを用いて栄養剤の少量持続投与とする。2)栄養カテーテル先端を幽門後に進めて、栄養剤が十二指腸、空腸に注入されるようにする。3)液状製剤から半固形化栄養剤に変更する。などが挙げられます2)。