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【連載】看護師のための輸液講座

第12回 輸液・高カロリー輸液製剤の組成・投与量についての基本的知識と考え方

  • 公開日: 2010/2/8
  • 更新日: 2020/10/22

輸液を投与する主な目的は、水分補給、電解質補給と、そして、栄養投与です。水分投与速度や電解質の違いによる輸液の分類については既に説明しました。本当は電解質管理は非常に難しい内容なのですが、いわゆる静脈内へ電解質輸液を投与すればいいんだ、と単純に考えれば、それほど難しい内容ではないように思われます。

それは、ある意味、心臓や腎臓が正常に機能していれば、短期間の管理であれば、身体がうまく調節してくれるからです。異常な病態に対して電解質輸液を投与しているのに、それを身体がうまく調節してくれるという、逆説的なことになってしまいますけど。

もちろん心臓や腎臓に問題がある場合には、細かい電解質や水分量の調整が必要であることは言うまでもありません。でも、それは、少しばかりレベルが高すぎて専門的になってしまいますから、ま、専門家にまかせてしまおう、それでもいいと思います。

さて、今回は、栄養管理として、現在みなさんが使用している栄養輸液製剤の組成について勉強しましょう。カロリーやたんぱく質投与量などの計算についても解説させていただこうと思います。簡単な計算であるのですが、習ったことがない方が多いのです。これは、ナースだけの問題ではなく、実は、きちんとした計算を理解して実践できる医師も少ないのです。医師の場合は、知ってても計算しないんだ、と思っているかもしれませんが、本当は・・・。

炭水化物、脂肪、たんぱく質が発生する熱量は?

食事や経腸栄養剤、それから栄養輸液などのカロリー計算をするためには、その成分である、炭水化物(糖)、脂肪、たんぱく質が燃焼した場合(代謝された場合、という表現の方が学問的でしょうか)、何カロリーの熱量を発生するのかを知っておかなければなりません。

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ご存じですか?これらの三大栄養素が1g燃焼すると、それぞれ何カロリーの熱量を発生するのか?実は、中学校の理科で習っているのです。ま、ダイエットをやっている方なら、誰でも知っているはずですよね。

問題

正解は、炭水化物が4kcal/g、脂肪が9kcal/g、たんぱく質が4kcal/gです。ちなみにアルコールは7kcal/gです。当然知ってます・・・ですか?ま、こう聞くと、そう答える方がほとんどだと思うのですが・・・。しかし、現実は、そうではないのですよね。私の持っているデータでは、4、9、4が3つとも正解であった方の割合は、栄養士さんでは91.1%、看護師さんでは25.5%、薬剤師さんでは62.5%、医師では46.6%でした。

三大栄養素の燃焼効率の理解度グラフ

このデータは、栄養士さん:512名、看護師さん:1456名、薬剤師さん:326名、医師:773名に対して調査させていただいた結果ですので、かなり信頼性は高いものだと思います。この程度なんですね、日本の医療関係者のレベルは。かなり寂しいデータだと思いませんか?ま、今、ここで理解して覚えていただけば何も問題はないので、ご心配なく。

高カロリー輸液製剤の組成の解析

最も基本的な高カロリー輸液のキット製剤として、ピーエヌツインRを例として考えてみましょう。

なぜダブルバッグになっているのか?(なぜ、隔壁があるのか?)

高カロリー輸液製剤は、グルコース、アミノ酸、電解質などから構成されています。ダブルバッグになっているのは、グルコースとアミノ酸を混合しておくと、メイラード反応が起こるからです。

隔壁説明図

これを予防するため、かつては、使用直前に混合していたのです。これは、結構手間のかかる作業でしたし、混合する操作中に輸液が汚染することもありました。しかし、ダブルバッグという技術が開発され、グルコースとアミノ酸は別々に収容しておいて、隔壁を開通させることによって一気に混合することができるようになったのです。

この製品が使われるようになって以来、隔壁開通忘れが新たな問題となってきました。しかし、なぜ、隔壁があるのか、なぜ、ダブルバッグになっているのか、それを理解させようとせず、『隔壁開通を忘れないようにしよう』こればっかり言っているのが日本のリスクマネジメントなのですよね。

なぜ、グルコースとアミノ酸の比率がこのようになっているのか?

ピーエヌツイン3号は、グルコース250g(水分は800mL)とアミノ酸40g(水分は400mL)から構成されています。総カロリーは計算できますね。簡単ですね。グルコース(250g×4kcal/g)+アミノ酸(40g×4kcal/g)ですから、1160kcalです。

それでは、なぜ、グルコースとアミノ酸の比率がこのようにになっているのでしょうか?知ってます?知らない?そうでしょう。多くの方は知りません。それは、NPC/N比を150前後にしたいからです。

ピーエヌツイン3号の組織

NPC/N比は知らない?でしょうね。知らない方の方が多いと思います。NPC/N比とは・・・。NPCはNon-protein calorie(タンパク質以外の熱量)で、糖と脂肪の熱量を示しています。Nは窒素(nitrogen)のことで、たんぱく質やアミノ酸中に含まれる窒素量を示しています。

これももっと詳しく解析しますと・・・たんぱく質は、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、イオウ(S)など、さまざまな元素から構成されています。そのうちの窒素(N)量を考える、ということなのです。NPC/N比とは、たんぱく質やアミノ酸中に含まれる窒素1gに対する糖と脂肪の熱量の比、という意味です。

生体がたんぱく質を最も有効に利用するため有利なNPC/N比というのがわかっています。その値が、通常の状態では150前後なのです。侵襲が加わるにつれてNPC/N比は低くなります。

ピーエヌツイン3号②

ここでピーエヌツイン3号の組成を計算してみましょう。NPCは、グルコースだけしか含まれていませんので、250g×4kcal/gと計算すると1000kcalとなります。簡単な計算ですね。N(窒素)含有量なのですが、これは少し考える必要があります。

食事や経腸栄養剤に含まれる窒素量は、たんぱく質量を6.25で割って計算する、と理解している方が多いと思います。これは、たんぱく質中に窒素含有量は約16%であるという概算に基づいたものです。しかし、輸液のアミノ酸に含まれる窒素量は、アミノ酸輸液およびアミノ酸組成によって決まっています。ピーエヌツインのアミノ酸輸液はモリプロンFという製剤で、アミノ酸10g中にN(窒素)が1521mg含まれていることがわかっています。一度、カタログをチェックしてみてください。

ということは、ピーエヌツイン3号に含まれている窒素量は、総アミノ酸量が40g(400mLのモリプロンF中のアミノ酸量は、10%なので400×0.1と計算して40gとなる)なので、1521mg×4と計算して6084mg(=6.084g)となります。そこで、NPC/N比は、1000kcal÷6.084gと計算して164となるのです。

脂肪乳剤の熱量はどう計算する?

臨床において、栄養療法の勉強をしていない方々が、聞き覚えで間違った考え方をしているのが脂肪乳剤です。脂肪乳剤を投与すると感染しやすいとか、血管内に詰まってしまうとか、感染症の場合には肺内の細網内皮系にひっかかるから、などの理由で使用しない方がいい、という考え方をしている方が結構おられます。

感染しやすいというのは、使い方の問題で、これは輸液ラインの管理について勉強すればすぐに解決します。血管内につまるとか、肺内の細網内皮系にひっかかるとかについては、投与速度の問題です。20%製剤では『体重÷2』mL/hr以下の速度で投与すれば、加水分解もされるし、血管内につまるとか言う問題も解決できます。

また、プロポフォールという鎮静剤を重症症例にも普通に投与していますが、これも実は、脂肪乳剤なのです。ですから、脂肪乳剤は三大栄養素の一つとして、投与する方が『適正な栄養管理ができる』ということです。これを理解していただきたいと思います。

さて、脂肪は1gが燃焼すると9kcalの熱量を発生します。これは、昔から知っていた?さっき知った?ま、どちらでも結構です。それでは、20%脂肪乳剤100mLの熱量はどう計算するのでしょうか?20%イントラリポスR100mLを例にして考えてみましょう。カタログを見ると、20%イントラリポス100mLの熱量は200kcalと記載されています。なんだ、計算するまでもないじゃないか、と言われる方も多いと思いますが、実際に計算したことがない方がほとんどだと思いますので、実際にやってみましょう。

20%イントラリポス100mL中の脂肪の量は・・・100×0.2と計算すると20gとなります。簡単です。脂肪20gが燃焼すると発生する熱量は・・・20g×9kcal/gと計算すると180kcalです。あれ?カタログでは200kcalとなっているのに、計算すると200kcalにならない・・・おかしい。カタログが間違っている?

そうではありません。いわゆる脂肪はそのまま投与することができないので、界面活性剤を使って乳化させる必要があるのですが、そのために用いられる卵黄レシチン、また、浸透圧調整のために加えられているグリセリンのカロリーを計算する必要があるのです。これらを計算すると約200kcalになるのです。ですからカタログが間違っているのではありません。

脂肪乳剤の熱量計算

体重50kgの男性に高カロリー輸液を実施する場合の組成の計算

カロリー投与量はどう計算しますか?ハリスベネディクトの公式で基礎エネルギー消費量を計算して、活動係数とストレス係数をかけて求める・・・これが一番適切なカロリー投与量計算方法であると考えておられるかもしれませんが、そうでもないのです。

その理由は、また、別の機会に説明しますが、私は、体重当たりで計算する方法を長年やってきております。体重あたり25~35kcalと計算します。普通は、基本的カロリー投与量は30kcal/kg/日と計算します。

カロリー投与量の決定方法

体重50kgの男性の場合、カロリー投与量は50kg×30kcal/kg/日=1500kcal/日となります。私はずっとピーエヌツインを使ってきており、ビタミン入りや微量元素入りは使わないという方針にしておりますので、ピーエヌツインにビタジェクトとエレメンミックのプレフィルドシリンジ製剤を加えることにします。

ピーエヌツイン3号は1バッグが1200mLです。カロリー量は、ブドウ糖が250g、アミノ酸が40gですので、(250g×4kcal/g)+(40g×4kcal/g)と計算すると1160kcalになります。これに脂肪乳剤として20%イントラリポス100mLを側注するとしますと、総カロリーは1360kcalとなります。おわかりですね。

投与量の計算例

ここで少し考えていただきたいのは、脂肪乳剤を投与すると、NPCが上がります。すでに計算を示しましたが、ピーエヌツイン3号1200mLと20%イントラリポス100mLを投与しますと、NPCが1200kcalと増えますので、NPC/N比は1200÷6.084と計算することになるので、197となります。

私は、もう少しNPC/N比を低くして、たんぱく質合成に有利な輸液を投与したいな、と思うことがしばしばあります。そんな場合にどうするか?アミノ酸液を加えるといいのです。10%アミノ酸輸液のモリプロンFを200mL(窒素量は3.042g)加えるのです。そうすると、窒素量が全体で9.126gとなります。その結果、NPC(1200kcal)÷N(9.126g)と計算して131.5となります。腎機能に問題がなければ、このような組成の方が有利かと思います。

投与量の計算例②

従って、この患者さんに対する処方は、ピーエヌツイン3号1200mLにモリプロンF200mLを混注し、ビタジェクトとエレメンミックを加えた基本処方として24時間で投与する、脂肪は20%イントラリポスを100mL、側注する、ということになります。ピーエヌツインは60mL/時で投与し、脂肪乳剤は20mL/時の速度で5時間かけて投与する(計算上は25mL/時以下の投与で、ということになりますが、滴下速度を調整しやすいように、ということで20mL/時という速度を選択したのです)、という輸液管理が適切であろうと考えています。

ただし、電解質投与量のチェックは必要で、10%NaClを20mL(NaとClがそれぞれ34mEq)加えておいた方がいいかとも思います。NaとClの一日投与量はそれぞれ84mEqとなります。

こんなややこしいことを考える必要ないんじゃない?

こんな処方、めんどくさい、やってられない、と思う方が多いでしょうね。だから、いわゆる『バカチョン』の高カロリー輸液のキット製剤が広く使われているのです。しかし、キット製品ばかり使っていることによって、栄養輸液に関する知識レベルが下がる、輸液量、カロリー量、たんぱく質投与量が不足したり、過剰になったりすることになるなどの新たなリスクが出現することも考えておいて欲しいと思うのです。

日本のTPNを受けている方々が、みんな、同じキット製品を同じ量、投与されているって、おかしいでしょう?日本人の性格を考えると、こういう事態は起こりえますが・・・。さらに、これに、ビタミンや微量元素の適正投与量を考えると、もう頭の中グジャグジャになってしまうと思います。

私は、古い!遅れている!と言われるかもしれませんが、一人ひとりに対して考えた輸液・栄養管理をしたいと考えておりますので、ついつい、こんなことを言ってしまうのです。すみません。

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